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きんのまなざし ぎんのささやき

籠る姫(7)

パスワードをクリアした方(「籠る姫(6)」からお越しの方)へ…
   「to be continued」と書きましたが、続くようで続きません。
    何を意味するかお解りですね… ごめんなさい。 (笑)

パスワード付きメルヘンを迂回し方(「籠る姫(5)」からお越しの方)へ…
    大変お待たせしました。
    ちょっぴり、ふたりが仲良くなったと思ってください。
    ほんのちょっぴりです。 (笑)


さて…
毎度毎度の「五月雨(さみだれ)公開」にお付き合いいただき、ありがとう
ございます!
毎度毎度の「見切り発車」にも、ようやくゴールが見えてきました。 (ほっ)


どなた様もお忘れ物のないように…
(何か忘れてるかな? う~ん)




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

生まれたばかりの太陽が顔を覗かせ、静謐な空気を切り裂くようにして、
幾筋もの光がサエジーマ国を照らし始めました。

カオルンの部屋にも最初の光が届く頃、カオルンはゆっくりと目を開けました。
そして、自分を包む王子の体温の温もりと匂いに、ピクンと緊張を走らせました。

(やだ… あたし、どうしよう…)

昨夜、この部屋で起こったことが、瞬時のうちに、フラッシュバックで
カオルンの脳裏に甦ります。

蒼くなったり赤くなったりしていたカオルンが、そぉっと王子の顔を覗き
みようとしました。

「…!」

王子もまた、静かに目を開け、朝のまどろみにたゆたうように、柔らかい
まなざしでカオルンを見つめていました。

「…お、おはようございます…」

カオルンはシーツをぎゅっと握りしめて、か細い声で朝の挨拶をしました。

「…あぁ、おはよう」

少しかすれた声で王子も返します。
その声を聞いた途端、軽い電気のようなものがカオルンの身体を駆け抜け、

(あれは夢なんかじゃなくて、現実だったんだ…)

と、強烈に思い知ることになりました。
真っ赤になったカオルンに、王子は少し意地悪そうな笑みを浮かべて、

「真っ赤だぞ」

と追い打ちをかけます。

「!」

カオルンは慌てて頬を両手で隠します。
その様子に王子はくすっと笑いをこぼすと、がばっとベッドから跳ね
起きました。

まだ明けきらない仄暗い部屋の中で、王子の美しい身体のラインが
シルエットとなって浮かび上がります。
王子は床に落ちていたシャツを拾い上げると、スルッと腕を通しました。

そして、カオルンを振り返ると、

「もう、ひとりでも大丈夫だな?」

と言い、そのままカオルンの部屋から出ていこうとしました。
あまりにもあっさりとした王子の態度に、諦めにも似た感情をカオルンは
覚えました。

(あぁ、あれは夢だと思った方がいいのかも…)

鼻の奥がツンとするのを我慢して、ドアノブに手をかけた王子の背中に、
カオルンは声をかけました。

「あの…
 あたし、大丈夫ですから…

 昨日のことは、その…   なかったことにしてもいいです!」

声をかけられた王子が振り返ってカオルンを見ると、カオルンは、
なんとか笑顔を作りました。
その笑顔はあまりにぎこちなく、王子には泣き顔のようにも見えました。

王子は眉間に皺を刻みながら、つかつかとベッドのそばまで来ると、
カオルにぐいっと顔を近づけました。
カオルンは思わず、首をすくませ、身体を縮こませました。
不機嫌そうな王子の声がカオルンの耳に届きます。

「…いいか?
 俺は、絶対に、’なかったこと’ などにはしない。

 もし、おまえがそうしたいと言うなら、別だが…



 …いや、だめだ! お前が望んでも、俺は許さない!」

カオルンは驚いて、王子を見つめました。
王子は、ふっと表情を弛めると、優しい声音でいいました。

「今のうちに俺は部屋に戻ったほうがいいんじゃないか、と思った。
 明るくなってからだと、おまえが恥ずかしいから、と…
 ただ、それだけだ。

 お前は何の心配もしなくていい。 何かあれば、俺に言え。
 おまえひとりで抱え込もうとするな。
 いいな?」

カオルンの瞳が潤みます。
そんなカオルンに、王子は優しく口づけを落とし、髪を撫でました。
そして、王子は静かに部屋を出ていきました。
後に残されたカオルンは、夢見心地のまま、王子の消えたドアをぼんやりと
見つめていました。


 カタカタ
   カタカタ

ふと聞こえた物音に、カオルンの意識が現実へと戻されました。
何の音かと最初を恐れていましたが、やがて、カオルンは大事なことに
気付きました。

慌ててベッドを抜け出すと、絵の具箱に飛びつき、蓋を勢いよく開けました。


『ふ~っ やれやれ、やっと開いたか!
 この中の匂いといったら、ひどいのひどくないの… ブツブツ』

絵の具の間から不満をぶちまける声が聞こえました。

「バルザ!」

カオルンは、そぉっと手を差し入れ、王子の指環を取り出しました。

「ごめんなさい、すっかり忘れちゃってて…」

申し訳なさそうにカオルンは謝ります。

『おまえが謝る必要はないだろ?
 俺に謝らなきゃならないのは、コーガの野郎だぜ?

 …っと、コーガはどこ行った?』

バルザは目だけを動かし、王子の姿を探します。

「あっ… 王子なら自分の部屋に戻られたわ…」

そう言うカオルンの目が少しだけ泳ぎます。
その様子をしっかり見ていたバルザが、

『ほぉ~』

と、何かを含んだように返事をしました。

「ほ、ほんとよ! もう王子はここにはいないわ!」

カオルンが少しムキになって訴えかけます。

『わかった、わかった…』

バルザの返事に、カオルンがほっと安心しました。

…と、そのときです。
バルザがさりげなく尋ねました。

『ところで、カオルン…

 コーガとはうまく ’話’ は、ついたのか?
 まぁ、’話’ の内容までは聞かないでおいてやるけど… な!』

バルザの目がひどく悪戯っぽく輝き、パチンと器用にウィンクまでしました。
その途端、カオルンは顔を真っ赤に火照らせて叫びました!

「バルザ!」

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

その日、王子の口からカオルンが部屋に閉じこもっていた原因が語られると、
事の次第がわかったレイとゴーザンを一様にほっと安心しました。

例のイーゼルは、その日のうちにゴーザンの手により城の庭の片隅で燃やされ、
灰となって空に帰っていきました。

そして、あのカオルンの描いた王子の絵は、きれいな額に収められて、今も
王子の(正しくは、’王子たち’ の)部屋に飾られています。
王子の妃となったカオルンは、その後、孤独を感じるようなことがあると、
この絵を見てあの日の王子の言葉を思い出しました。

「おまえひとりで抱え込もうとするな」

それ以来、カオルンが、ひとりで部屋に閉じこもるようなことはありません
でした。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


めでたし、めでたし… になりましたか、ねぇ?

早いもので、メルヘンを書き始めてから1ヶ月が経ちました。
よもや、こんな長く妄想するようになるとは思いもよらず…

しかも、パス付きメルヘンまで飛び出るなんて!
(まぁ、あっさ~りでしたけど。 ははは)

恐るべし! メルヘン!


なんだかメルヘンの世界なら、なんでもOKな気がしてきました。
レイくんにもお嫁さん、とか…
いやいや、その前に、ゴーザンさんにも出会いが?! な~んちゃって!


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コメント
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きゅん死にです!
鋼牙王子のツンデレにきゅんきゅんでした。
よかったねカオル姫!メルヘン最高です~!

話はかわって私も宴はテレビ鑑賞でした!
くわい 2013/03/30(Sat)15:42:22 編集
Re:きゅん死にです!
くわい様、コメントありがとうございます!
読みに来ていただけるだけで嬉しいのですが、こうしてコメントまで書いていただけて感激です。(くわい様も書くのにお忙しいでしょうに…)

王子はかなり上手に無関心を装っていましたが、いったん火がつくともう… (きゃ~)
そんな鋼牙も「メルヘン」だからこそ書けたように思いますよ!
メルヘン、最高~!

宴の生中継のときは、少しTVから遠い位置から見ていたのですが、翌日ひとりになってから、TVの前に陣取ってきっちり見返しましたよ~~~
白いコートの魔戒騎士の姿をしっかり刻み込むようにね!
【2013/03/30 19:38】
無題
こんばんは、籠る姫、ありがとうございました、メルヘン、おとぎ話に大人バーアジョン想定外いえいえ嬉しい誤算、コーガ、とカオル姫にイエイエ。
魔界の宴以来、心ここに非ず状態を二次小説、を読める喜びで癒していただきほんとに感謝。
午前宴は、メグリアイ様のブログで読ましていただき益々見たくなりました、みたいビデオ、出たらかうぞ。
かなまま 2013/03/30(Sat)20:49:53 編集
Re:無題
かなまま様、コメントいつもありがとうございます!
まさかの「お伽話」が「夜伽話」にパワーアップ(?)でございます… (苦笑)
「王子に逢いに」を書き終えそうな頃に、ひょっとしたら書けるかも? という頼りない野生の勘を頼りに書いてみました。
なんというか、もう、「メルヘン作家」が聞いて呆れる… という感じです。 (苦笑)

ファンというのは、作品を提供されるのを「待つ」しかないもどかしさというか哀しさがありますよね?
それを慰めるようなものはとてもとても書けませんが、少しでも気が紛れるようでしたら、これからも selfish のひとり遊び(=妄想)にお付き合いくださいませ。
また、いつでも遊びにいらっしゃってくださ~い!
【2013/03/30 22:32】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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