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きんのまなざし ぎんのささやき

籠る姫(5)

いいもの書いたぞ! と満足(自己満足ですがwww)のいくものを書きたい
ばっかりに、一日お時間をいただきました。
それでちょっとはよくなったのか? と言うと、う~ん…

がんばってはいるのですよ、がんばっては…  ははは (←乾いた笑い)

まぁ、じっくり行きますか?
のらりくらり「気まま」な selfish をお許しくださいませ!




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「俺は…  お前に出ていってほしくはないんだ」

王子の意外な言葉に、カオルンは一瞬頭の中が真っ白になりました。

「えっ、あの…
 あたしなんかにはてっきり無関心なんだと…」

カオルンは、それだけ言うのがやっとでした。

「それは…」

王子のほうもそう言ったきり、赤くなって黙り込んでしまいました。
そんなふたりを見かねて、バルザが口を出してきました。

『カオルン、こいつは幼いときから父王に厳しく鍛えられてきたんだ。
 この国を隣国から守ること、そして民が安心して暮らすことばかりを
 考えてきたヤツだ。

 それに、早くに母親を亡くしているから、ちょっとばかり不愛想で、
 自分の気持ちをうまく伝えられない不器用なやつに育っちまった。
 だから、勘違いされやすいかもしれないが…

 決してお前のことに関心がないわけではないし、冷たいやつでも
 ないんだぜ』

「…」

バルザに本当のことを言われ、王子は赤くなったまま難しい顔を作るしか
ありませんでした。
バルザの言葉を聞いていたカオルンは、それでも納得しかねるような
ひどく曖昧な表情を浮かべていました。

『俺が言うことは信じられないか?

 そうだな…』

バルザは少し考えてから、言いました。

『うん、じゃあ、これならどうだ?

 さっきのこいつの言葉を覚えているか?
 お前のことを心配をしたのは ’俺たち’ と言ってたんだぜ?
 ’俺たち’ とな。

 間違いなく、こいつはおまえさんのことを心配していたよ』

そう言いながら、バルザはここ何日かの王子の様子を思い出していました。

ゴーザンやレイが心配そうにカオルンのことを話しているとき、王子は
何食わぬ顔で剣の稽古をしながらも、太刀筋はブレ、踏み込みもてんで
なっていなかったことを。
そして、素知らぬ振りで書物を読むフリをしながら、同じ行ばかりを目で追い、
同じページをたっぷり30分以上かけて読んでいたことを。

そうしたことを、今ここでカオルンに教えてやってもよかったのだが、
さすがにバルザもそこまではお人よしにはなれなかった。
第一、これ以上喋ると王子も許さないだろうことも容易に想像できたし…

「未だに信じられない気持ちはあるんだけど…

 結局、あたし、ここにいていいってこと…    ん、んぐっ…!」

カオルンの言葉が途切れたかと思うと、カオルンは自分の胸をぎゅっと
鷲掴みして、苦しげな表情を浮かべながらずるずるとしゃがみ込んで
しまいました。

「どうした!」

王子は、カオルンの尋常でない様子に驚き、慌てて駆け寄りましたが、
カオルンの顔は青ざめ、苦しそうな息をしているばかりで、王子に答えを
返す余裕はないようでした。

『いかん、コーガ!
 カオルンのエネルギーが急速に失われていっている!

 ヤツだっ!
 きっと、力を失いつつあるヤツが最後の力で、カオルンからエネルギーを
 吸い取っているに違いないっ!』

バルザも慌ただしく叫びます。
バルザの言葉に、王子はがばっとバスタブを振り向きました。

バスタブの中にはすっかり大人しくなったイーゼルが横たわっていましたが、
よく見ると、小刻みに震えているのが判ります。
その震えは怯えからくるものでないことを、王子は瞬時にして悟りました。

「くそっ」

王子はバスタブに駆け寄ると、躊躇なく蛇口を盛大に捻りました。
激しい水音の中、イーゼルがのたうつように暴れます。
王子はそんなイーゼルには見向きもせずに、すぐさまカオルンの元に戻ったかと思うと、
カオルンを抱え上げて、バスルームを出ました。

広い部屋の中央まで来ると、腕の中のカオルンを覗きこみました。

先ほどより苦悶の表情は和らいでいますが、それでも、苦しそうな息遣いをしています。

『もっとバスルームから離れろっ!』

バルザが鋭く声をかけます。

「判っているっ!」

王子もイライラとした声を発すると、部屋の向こう側、バスルームの反対側へとさらに
足早に移動しました。

部屋の隅には、天蓋付きのベッドがありました。
王子は再びカオルンの様子を窺うと、大きく深呼吸を繰り返していましたが、
苦しみから解放されたのか、頬には赤みが差していました。
その様子に、王子は安堵の表情を浮かべます。

『やれやれ、これで大丈夫みたいだな…』

「あぁ」

バルザの言葉に王子も落ち着きを取り戻した声で答えました。

ぐったりとして、まだ目を閉じたままのカオルンを、王子はベッドに静かに
下ろしました。
そして、バスルームに戻ると、水底に沈んでいるイーゼルが動かなくなったのを
確認して、静かに蛇口を閉めました。

『ヤツの気配はもう感じられない。
 もともと魔力の弱いヤツだったから、もう心配する必要もないだろう』

「そうか…」

王子はそう返事をすると、最後にちらりとイーゼルに目をやってから、くるりと
踵(きびす)を返してバスルームを後にしました。


部屋に戻ると、カオルンはゆるゆると上体を起こそうとしていました。

「起きて大丈夫なのか?」

王子は、努めて穏やかな声でカオルンに話しかけながら、ベッドのそばまで
行きました。
カオルンは、こくんとうなづきます。

「もう何の心配もない。

 だが、用心のためだ。
 バスルームには入るな」

「うん」

カオルンは返事をすると、先ほどのことを思い出してしまったのか、膝を引き寄せ、
自分の身体を両腕で抱き締めるようにして震えだしました。

その様子を見て、王子は

「…わかった。
 今すぐ誰かに言ってバスルームを片づけさせよう。
 そうでないと、お前も落ち着かないだろう?」

と、そう言うと、人を呼ぶためにベッド脇から離れようとしました。
すると、

「…!」

歩きだそうとした王子の足が止まりました。
王子の腕にカオルンがすがりついたからです。
振り返った王子の目に、目尻に涙を浮かべたカオルンの顔が映りました。

「お… お願い…
 ひとりにしないで…」

震える声と不安に怯えるまなざしが、王子をとらえます。
王子は心がざわめいたのを表に出さないようにしながら、

「あぁ、わかった…」

と、返事をしました。
すると、カオルンは心底ほっとした様子で、小さく笑顔を覗かせました。
それも束の間、ぽろりぽろりと涙がひとりでにこぼれていきます。

「あっ、やだ、どうしよう…
 安心したら…   ぐすっ」

カオルンは照れ隠しで下を向きながら、両手で頬やまなじりを一生懸命
こすりました。
そんなカオルンに向かい合うように、王子はベッドに腰掛けました。
そのはずみで大きくベッドがバウンドしたのでカオルンは驚いて腕でバランスをとります。
王子はその腕を両脇から捕えると、

「えっ…」

と驚くカオルンをよそに、その唇に、自分の唇を重ねました。


to be continued(6[大人限定]へ)
to be continued(7へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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