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きんのまなざし ぎんのささやき

片恋~カタコイ~(2)

カオルちゃんはあれだけ可愛いんだから、カオルちゃんに片思いする男の
ひとりやふたりいても不思議じゃないと思うんですが、どうでしょう?

見た目もそうですが、気取らないところに親近感を覚えてまた惹かれる…
みたいな?

ここまで積極的な男子がイマドキいるのか? と問われれば、ちょっと
苦しいのかもしれませんが、そこはほれ、気ままな妄想ってことでお許しを。
(苦笑)




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(今日が最後のチャンス…)

僕は、目の前を歩く女性の背中をぐっと睨むように見つめて、さっきから
ずっと繰り返している呪文のような言葉をまた唱えた。

前を歩いているのは、半年くらい前から度々見かけていたお姉さん。
僕より5歳くらいは年上の、そのお姉さんのことを初めて見たとき、

(きれいだなぁ)

なんて思ったけど、それ以上でも以下でもなくて、すれ違ってしまえば
顔すらも覚えていなかった。
それが、ふと気づいてみると、週に1~2度くらいは姿を見かけるように
なっていた。
そんなわけで、お姉さんのことは「会えたらなんだかラッキー」と思う、
そのくらいの存在になっていた。
だからと言って、僕に特別な感情が何か芽生えた、というわけではなく、
僕の中でのカテゴリーでは、’その他大勢’ の中のひとりだった。

だけど、1ヶ月くらい前、その関係がちょっとだけ変わったのだ。

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その日も、住宅街の中を、自宅に向かって歩いていた僕の進行方向から
歩いてくるお姉さんを見つけた、

(あっ、今日も会った…)

なんて思いながらぼんやり歩いていると、ポケットの中のケータイに
着信が入った。
ポケットを探りながら、それでも足は勝手に前に向かって進み、
住宅の石塀が途切れ、曲り角に差し掛かったとき…

 キキーッ

耳障りなブレーキ音を聞いたと思ったら、ブワッと強めな風を感じて、
僕は思わず目を閉じて身を強張らせた。
それ以上何も起こらなかったので、ゆっくり目を開けてきょろきょろと
辺りを見回すと、左手のほうを自転車が1台、膨らんだ軌跡を元に戻し
ながら走り去っていった。

どうやら、彼の進行方向に突然、ぼ~っと歩いていた僕が現れてしまった
らしい。

事の次第が分かり、一歩間違えれば被害者になっていたかもしれない
現実に、ブルッと身を震わせてから、僕は安堵の息をついた。

そして、その頃になってようやく気付いた。
手に持っていた本屋の袋を、驚きのあまり放り出してしまったことを。

道路上には、漫画雑誌やコミックスがぶちまけられていた。

「あ~ぁ」

今度は、別の意味の溜め息をつき、それらを拾おうと身をかがめた。
すると、僕の目の前に影が出来た。

「はい、これ」

見上げた僕の目に、あのお姉さんの笑顔が見えた。
驚きで動きの止まってしまった僕に、

「気をつけないとダメだよぉ」

と、さらに言葉をかけて、コミックスを突き出した。
咄嗟のことで言葉が出ず、ぎこちなく頭を下げた僕に、もう一度笑みを
くれてから、お姉さんは去っていった。

その後ろ姿を見送りながら、

(声もかわいいな…)

などと思った。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

(今日が最後のチャンス…)

今日最後の呪文を唱えてから、歩調を一気に加速した。

「あの…」

勇気を振り絞って、ようやく声をかけると、

「?」

振り返ったお姉さんの顔からは少し戸惑いが見えて取れた。
が、次の瞬間、

「あれっ? あなた…」

呼び止めた僕のことを覚えていたみたいで、少しだけ緊張を解いてくれた。
そんな小さなことが、僕の勇気になる。

「あっ、こ、こないだは、本を拾ってくれてありがとうございました!」

何度もシミュレーションしていた言葉を夢中で言った。
上ずった声が、少し恥ずかしい…

「いいえ、どういたしまして…」

そう笑顔で応えてくれたお姉さんは、「で、今日はどうしたの?」という
至極当然な疑問を顔に張り付けていた。

「えっと、僕、実は、親の仕事の都合でカナダに行くんです!
 それで、き、今日が、学校に行ける最後の日でした!」

いきなりの告白に、お姉さんの表情が少し怪訝なものになる。

(マ、マズイ…
 なんか不審に思われてる?)

「そ、それで、あの…」

慌てた僕は、酸欠の金魚のようにパクパクと酸素を求めながらも、一番
言いたいことを早く告げなくてはと夢中で話し続けた。

「前からよく会うお姉さんのこと、きれいだなって思ってて…
 それで、このあいだ、優しくしてもらって、えっと…

 す、好きになりました!」

お姉さんの目が丸くなる。

「カナダに行く前に、お姉さんに自分の気持ちを伝えたくて!」

「はぁ…   あ、ありがとう」

どう答えれば解らない感じではあったが、お姉さんは嫌がってはいないよう
だった。
それで、またまた勇気をもらって、僕は考えるより先に気持ちを言葉に
していた。

「あの、それで、記念に僕の制服のボタンをもらってください!」

「えっ?」

お姉さんは思いっきり戸惑った顔をしていた。
でも、もう後戻りできない僕は、制服のボタンをむしり取るようにして、
とにかく必死にお願いした。

「えっと、いきなりですいません!
 お姉さんがこんなボタンもらっても嬉しくないのは解ってるんですけど…

 学校の帰り道にたまにお姉さんに会うのがとっても楽しみで…
 面白くもない学校に行ったご褒美みたいに思ったりして…
 僕もうこの制服着ることもないし…

 えっと、だから… だからお願いします!」

恥ずかしさも絶頂だった。

「いいよ」

「!」

「もらってあげてもいいですよ」

びっくりしてお姉さんを見る。
にこにこ笑っているのを見て、僕は慌てて2~3歩駆け寄った。
そして、お姉さんが差し出した手にボタンを置いた。

近くで見るお姉さんはとってもきれいで、そして、いい匂いがした。

このときの僕が取った行動は、自分でも説明ができないのだが…

気づけば、僕は目をつぶってお姉さんの顔に自分の顔を重ねていた。
何かが唇に触れた。

すぐに、離れて逃げ出すようにその場を走り去る。
浮揚感のせいか、いつもより何倍も身体が軽い。

(うわぁ~!)

ニヤける顔のまま、どこをどう走ったかは覚えていないが、息が切れるまで
走り続けた。



to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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