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きんのまなざし ぎんのささやき

終わらない日(3)

ようやく主の帰還です!




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「おかえりなさいませ、鋼牙様。
 お帰りは明日になるかと…」

カオルの後ろからゴンザが声を掛けると、鋼牙の代わりにザルバが答えた。

『俺はそのつもりだったんだがな。
 誰かさんが妙に帰りを急かすもんだから、この時間に帰り着いたというわけさ』

ああ、なるほど… とでも言いたげにしたり顔で頷くゴンザ。
鋼牙は少し苦々し気に眉をひそめたが、反論することはなかった。

「留守中、変わりはなかったようだな」

そう言いながらリビングに向かう鋼牙に従い、カオル、ゴンザと後ろに続いて歩き出す。
すると、すぐにゴンザの

「カオル様っ」

という少し緊迫した声に鋼牙は足を止めた。

「!」

鋼牙が慌てて振り返ると、そこには、カオルを気遣い、駆け寄るゴンザの姿が見えた。

「どうしたっ!」

鋼牙はカオルの肩に手を掛けて、カオルを心配そうに覗き込む。
すると、情けないような顔をしたカオルが上目遣いにぼそりと言った。

「ごめん。なんでもないの。
 ちょっとね… その… 足を捻ったみたいで…」

「先程、鋼牙様を出迎えに行かれたときのあれですね?
 わたくしとぶつかりそうになって慌ててよけた…」

ゴンザは先程の光景を思い出しながら、そう訊き返した。
こくん、と頷くカオル。

鋼牙はホッとしたのと、やれやれといった感じで小さくため息をつくと、カオルの背に手を回して、彼女を横抱きに抱え上げようとした。
えっと驚く顔のカオル。
次の瞬間、ふわりとカオルの身体が宙に舞う… はずだったのだが、

「うっ」

と小さく呻(うめ)いて鋼牙の手が止まった。

「鋼牙?」

気遣わし気なカオルに、鋼牙は目で大丈夫だと告げて、もう一度トライする。
今度は無事、カオルは鋼牙の腕に抱きかかえられた。

『おいおい、無茶しなさんな。
 おまえさんだって左腕を痛めてるだろ?』

ザルバの言葉に、カオルとゴンザは鋼牙を見た。
ザルバの暴露に少々バツが悪そうな鋼牙はぶっきらぼうに言う。

「折れてはいないから問題ない」

それを聞いてカオルは慌てる。

「ね、鋼牙、降ろして!
 あたし、自分で歩けるから…」

そういうカオルに、鋼牙は

「大人しくしていろ。
 あんまり動くと落とすぞ」

と少し睨んで言った。

「でも…」

と、さらに食い下がろうとするカオルに

「いいから、黙って運ばれていろ」

とやや強い口調でそう言われて、カオルは黙って大人しくした。
できるだけ動かずにじっとしていることが、鋼牙に負担をかけずに済む一番の方法だと思って…

リビングに着き、ソファにカオルをそっと座らせると同時に、ゴンザが薬の入った箱を持ってきた。
その箱をローテーブルに置くと、ゴンザは鋼牙の顔を見た。

「カオルを先に見てやってくれ」

鋼牙がそう言うと、食い気味にカオルも言った。

「ゴンザさん、鋼牙を先にっ!」

ゴンザは、どうしたものかとふたりの顔をキョロキョロと見る。

「カオルからでいい」

「ううん、鋼牙からだよっ」

ゴンザは、うううっと悩ましそうに唸っていた。
が、ハタと何かを思いつくとニッコリ笑った。

「わかりました。
 それでは、鋼牙様とカオル様、おふたりで手当てをし合ってくださいませ。
 それが一番よろしいでしょう…」

「なっ」
「えっ」

鋼牙とカオルがゴンザの言葉に戸惑っていると、ザルバの高笑いが響いた。

『はっはっは!
 なるほど、うまいこと考えたな、ゴンザ。
 鋼牙の腕も、いつもならもっとスマートに闘えるものを、早く倒して帰りたい一心で無茶しやがった結果だしな。
 そんな無茶してでも会いたかった誰かさんに手当してもらえば、治りも早いだろうよ』

怪我の真相をバラされた鋼牙がザルバに何かを言おうとしたが、すかさず、ゴンザも機嫌よく言った。

「ほっほっほ、そういうことでしたか…
 いえね、カオル様も、どなたかのお帰りをそれはもう待ち望んでいたのしょう。
 それはもうすごい勢いで走っておいでで、足を捻られても、こうびっこを引きながらも玄関ドアに飛びついていったのでございますよ」

「ちょっと、ゴンザさん!」

顔を赤くしてカオルも焦っているが、ザルバは無視してゴンザに語り掛ける。

『どうやらこれ以上は野暮ってもんだぜ?』

「はいはい、わたくしどもはそろそろ退散といたしましょうか?」

『鋼牙、そういうわけで俺様は先に休ませてもらうぜ。じゃあな…』

「わたくしもこれで…」

ふたりは、鋼牙やカオルに口を挟ませずに会話を進め、ザルバはそれっきりダンマリとなり、ゴンザはピシッと姿勢を正して礼をしてリビングを出ていった。



後に残されたふたりは呆けた様子で顔を見合わせる。
そして、妙に意識してドギマギしだした。

「ねぇ、鋼牙。無茶したのって早く帰りたいってほんとなの?」

「いや、それは別に…」

言い淀む鋼牙に、カオルは嬉しそうに笑った。
そして、ゴンザの置いて言った薬箱に手を伸ばす。

「ね、腕見せて。
 早く手当しないと…」

「…」

鋼牙は黙って白いコートを脱ぐと、素直に怪我をした方の腕をカオルに見せた。
肘と手首の間の腕の外側が青く、ところによっては赤紫色に変色している。

「…無茶しないでね」

そう言いながら、カオルは鋼牙の腕を冷やし始めた。
甲斐甲斐しく手当を進めるカオルの姿を見ていると、鋼牙の中の彼女への愛おしさが大きくなってくる。

ふと、鋼牙は自由なほうの手をカオルに伸ばし、抱き寄せた。
そして、まなじりの辺りに軽くキスする。

「ただいま…」

少し顔を離し、カオルの顔をまじまじと見る。
カオルはちょっと泣きそうな顔になったが、すぐに笑顔を見せて、鋼牙の首にしがみついた。

「おかえりさない!」

それは、ふたりにとって、永遠を超えた… いや、時間といった概念さえ消し飛ぶようなひとときなのだった。


fin
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文字通り「終わらない」というところに持ってこれたのだろうか? 大丈夫?
…と一抹の不安はありつつも「終わらない日」は終了で~す!

「長い長い一日の終わり」では、「終わり」と言いつつ、会いたくても会えなかったすっきりしない夜を。
そして、この「終わらない日」では、その未消化部分をなんとかすっきりさせられたら… という思いで書いてみました。

多分、このお話はここで終わらずに、ふたりの夜の時間が始まるのでしょう。
ええ、ほぼ間違いなく…
ここから先は、みなさまの妄想の時間ですよ~♡

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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