きんのまなざし　ぎんのささやき

おいしいご馳走がなくったって、
きれいにドレスアップしなくったって、
素敵なプレゼントがなくったって、
好きな人と2人で過ごせれば、それだけでサイコ～な日になるはずなのに。

カオルちゃん帰っちゃって、ゴンザも部屋に下がり、ザルバも台座に戻って…
あ～あ、鋼牙は寂しいクリスマスだよぉ～
寂しいなら、カオルちゃんに、「待ってろ」　って言えばいいのにさ。

日付も変わり、イブが終わってしまったその先にある鋼牙のクリスマスは
果たして？！

またまた、ちょっとだけ覗いてみましょうか？

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書斎を出ると、もう休んだものと思っていたゴンザが待ち構えていた。

「どうした？」

鋼牙はゴンザに声を掛けた。

「申し訳ございません、言い忘れたことがございました。
　お食事を摂られるようでしたら、テーブルの上に用意しておきました。

　それと…」

ゴンザはここで意味ありげに少し間を持たせた。

「リビングに先程からお客様がお待ちですので、よろしくお願いします。

　…それでは、わたくしはこれで…」

そう言うと、ゴンザは鋼牙の返事を待たずに一礼してその場を後にした。

「おい…」

客がいるというのに部屋に下がろうとするゴンザを怪訝（けげん）に思い、
鋼牙はゴンザを呼び止めた。
足を止めたゴンザがくるりと振り返ると、にっこり笑って、

「鋼牙様
　メリークリスマス！」

それだけを言うと、そそくさと立ち去ってしまった。
どうにも腑に落ちない気がしたが、客を待たせては悪いと思い、鋼牙は
リビングへと急いだ。

室内に入ると、何故かリビングの照明は落とされていた。
ただし、サイドボードの上のスタンドが灯されていて、ぼんやりとした
柔らかい影を作っていた。

鋼牙は、一層、怪訝に思いながら、薄暗いリビングを透かして見る。

ひとり掛けソファーに人影があった。
だが、その人物は、眠っているようだった。
毛布が顔付近まで掛けられ、白いふわふわなのフチどりのある赤いフードを
目深にかぶっているため、顔はよく見えない。

だが、鋼牙にはそれが誰なのか、すぐに判った。

そっと近づき、顔を覗き込む。
自然と、鋼牙の顔に笑みが浮かぶ。
しばらく眺めていたい気もしたが、肩に手をかけて優しく揺り動かした。

「カオル…
　風邪を引くぞ…　おい…」

カオルの瞼がゆっくり開き、意識がはっきりするのと同時に瞳に光が
宿っていった。

「…ん？…　鋼牙？

　お帰りなさい…」

そう言って、カオルはにっこりほほ笑んだ。

「先に休んでいればいいものを…」

そんなふうに言いながらも、鋼牙は嬉しそうだった。
そして、先程から不思議に思っていた疑問を口にした。

「ゴンザが、　’カオルは帰った’　と、言っていたんだが…」

それを聞いて、カオルは　「あっ」　と何かを思い出したような顔をした。

「そうよ！
　あたしは、カオルじゃないの！」

そう言いながら、ごそごそと毛布から這い出て、立ち上がった。


「じゃ～ん！」

そう言いながら、カオルはポーズを取る。

白い縁どりのある赤いフード付きのケープの胸元で、白の大きなポンポンが
揺れた。
真っ赤なミニ丈のワンピースは、胸のすぐ下から柔らかいシフォン素材の
スカートがふわりと広がり、カオルが動くたびに風をはらんでふわふわと
揺れていた。


「あたしは、サンタクロースなの！
　カオルじゃないからねっ」



to be continued（5へ）
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[21回]