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きんのまなざし ぎんのささやき

聖夜の果て(3)

零くんも、(シルヴァじゃない)人間の女性とクリスマスを過ごせるように
なるといいのにね…

でも、やっぱり、魔戒騎士はクリスマスを楽しむことは難しそうだな~
因果な商売だねぇ~ 零くん?


ちっとも楽しくない、そしてちっともロマンティックじゃない、そんな魔戒騎士の
クリスマス・イブの夜の続きを、覗いてみますか?



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西の魔戒騎士たちを悩ませたホラーは、戦闘能力としては、さほど
大したことはなかった。
だが、逃走能力とでも表現するのか、そういったものが抜群に優れて
いたのだ。
少し闘っては魔戒騎士の隙をついて、身を潜ませる、姿をくらませる、
何かに紛れる、というふうに、すぐさま姿を消してしまうのだ。
そんな具合なので、鋼牙と零という稀代の魔戒騎士をもってしても、
なかなかすんなりと倒すことができなかった。

ホラーが姿を消すたびに、鋼牙と零は、ザルバとシルヴァという優秀な
魔導輪の助けを借りて、地道にホラーの行方を追っていった。

たった今も、数回魔戒騎士の攻撃を受けただけで、ホラーの姿が
いずこへともなくかき消えた。

「またかよぉ~
 ったく、イライラさせやがるぜ」

零は吐き捨てるように言ったが、すぐさま冷静さを取り戻し、シルヴァに
探索を依頼する。
東の管轄を任されたことで実力と自信をつけた頼もしい友の姿に、
鋼牙も負けていられないとばかりに、自然と戦意が高まっていく。

そうやって互いに刺激し合いながら、共通の敵を追い詰めようとしている
のだから、いかに深い陰我から生まれたホラーと言えども、徐々に
その逃げ場を失い、じりじりと追い詰められていった。

そして、とうとう、黄金騎士と銀河騎士の2人の騎士の手にかかり、
霧散する運命をたどった。

終わった…
そう思ったのもつかの間…
さすがにクリスマス。

イブのこの夜、西の管轄のあちこちで、それまで影も形もなかったはずの
ホラーの気配が次々と出現していったのだ。
事の成り行き上そのまま帰るわけにもいかず、鋼牙と零の2人の騎士は
それぞれに手分けをしてそれらのすべての陰我を断ち切るために奔走する
こととなった。

それらすべてを殲滅し終わったとき、今回の指令に関わった魔戒騎士たちが
疲労の色を滲ませながら、三々五々集まってきた。

その頃には、すでに日付が変わってしまっていた。

「さすがにちょっと疲れたなぁ。
 今日は一体、何体切ったんだ?」

真冬だというのに、零は、シャツの胸元を手でばたばたさせて、闘いで
火照った身体を冷やそうとした。

『零、休んでていいのか?
 この分じゃ、東の管轄にもホラーが待ってるんじゃないのか?』

ザルバが冗談めかして言った。

「え~っ、それは勘弁してほしいなぁ~

 ・・・でも、ありえない話じゃない、か…

 仕方がない… シルヴァ、急いで帰るとするか?」

『えぇ、そうね』

零は、休む間もなく東の管轄に戻ることにした。

「じゃあな、鋼牙」

「あぁ…
 気を付けろよ」

零と鋼牙は手短に別れを告げ合うが、その短い言葉の中に込められた
想いは十分過ぎるくらいに伝わっていた。

『さて、鋼牙。
 俺たちも戻ろうぜ』

「そうだな」

ザルバの言葉に鋼牙はうなずき、来た時と同様に魔戒道を使って、
北の屋敷へと戻ることにした。

(クリスマス・イブには間に合わなかったか…)

そんな想いが鋼牙の頭によぎったが、過ぎ去ってしまった時間は、
もう、どうしようもなかった。

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イブの夜、日付は変わったものの、街のほうにはまだ人々のうごめく気配が
あった。
だが、町の外れにある冴島邸の周辺はすでに夜の眠りの中に沈んでいる
ようだった。
主人の帰りを待つように煌々と明かりのついた冴島邸の玄関前までたどり
着くと、鋼牙はほっとした。
ドアをくぐり抜けて暖かい邸内に入り、

「おかえりなさいませ」

いつものようにゴンザに迎えられると、身体のあちこちが弛緩していくのを
感じた。

「カオルは?」

帰途に就(つ)く途中、ずっと思っていたことをゴンザに尋ねる。
その瞬間、ゴンザは微妙な表情となり、歯切れ悪く答えた。

「それが…

 ずいぶん遅くまでお待ちになっていたのですが、その…

 お帰りになられました」

ゴンザの返事を聞くと、鋼牙はごくわずかに目を伏せ、

「そうか…」

と低く答えた。
だが、すぐに気持ちを切り替えたように

「ゴンザ、遅くまですまなかった。
 もう休んでくれ」

そう言うと、書斎へと向かった。
机の上の小さな木箱を開けて中から台座を出すと、ザルバをカチャリと
戻した。

『鋼牙、今日は疲れたな』

ザルバは意識を閉ざす前に、声を掛けた。

「そうだな、ご苦労だった。
 ゆっくり休め…」

鋼牙は優しい眼をしてザルバを労(ねぎら)う。

『お前もな…
 メリー… クリ… ス… マス…』

ザルバの意識がなくなっていった。

一人残された鋼牙は、深く長い溜め息をついた。
そして、デスク脇に飾られた写真立てに目をやり、寂しいイブの夜を
過ごしたであろうカオルに心の中で詫びた。

やがて、疲労で重くなった身体を引きずるように、鋼牙はゆっくりと書斎を
出ていった。



to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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