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きんのまなざし ぎんのささやき

闇夜の狼(4)

着流しの狼さん…
早く出てきてくれないかな。
そのためには書かないと! 書け! 書くんだ!
…はぁい (;^ω^)



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「俺と草太… ああ、音弥のほんとの名は草太って言うんですけどね…
 草太のうちは俺の隣でね、年も同じだったから俺たちは兄弟のようにして育ったんでさ。
 あいつん家はおとっつぁんが早くに病気で亡くなっておっかさんと二人暮らしだったから、うちのおっとうもおっかあも ’草太ん家の面倒はよく見てやれよ’ とよく言っていた…」

鳥居をくぐり社の裏にたどりつくまでの間、娘が怖がらせちゃいけないと思った庄吉は昔話を始めた。
随分前のことだと思っていたが、いまだ色褪せない昔の話…




草太の家も庄吉の家も貧しくはあったが互いに助け合い、平凡ではあったがそれなりに幸せな日々を送っていた。
ところが、ある日。
村の中を流れる川を鉄砲水が襲い、川の左岸にあった家や田畑のうち半分を押し流してしまった。
庄吉と草太はたまたま山に薪を拾いに行っていて無事だったが、庄吉の両親や兄弟姉妹も草太のおっかさんもみんなあっという間に濁流に掻っ攫(かっさら)われていったという。

「まあ…」

お美津はそう言ったきり言葉を失ったが、庄吉は寂しげな微笑みを浮かべただけで話を続けた。

親を亡くしたのは庄吉たちだけではなかった。
他にも何人かそういう子どもたちがいたが、皆、村の者や親戚の家にもらわれていくことになっていた。
もちろん、庄吉も草太もそれぞれに引き取り手は決まっていたが、庄吉は前から考えていたことを実行しようと心に決めていた。
庄吉はこっそりと草太を呼びつけ、村の外れのお地蔵さんの前で草太に言った。

「草太、俺は村を出る! この村を出て、江戸に行く!」

庄吉は声を潜めて、だがきっぱりと自分の考えを打ち明けた。

「ええっ! 江戸だって!?」

心底驚いたように草太は言った。

「しっ! そんなでけぇ声を出すな! 誰かに聞かれちまったら止められるに決まってんだからなっ」

「ご、ごめんよ、庄ちゃん。
 でも、それほんとかい? 江戸になんて行けんのかい?」

「ああ。俺は決めたんだ。
 おっとうもおっかあもいねぇこの村には、もうなんの未練もねぇ。
 だから、俺は江戸に行って、一旗あげてやるんだ!」

目を輝かせて語る庄吉の横顔をじっと見ていた草太は、最初のうちは不安げだったのだが、段々と目に力が宿ってきた。

「庄ちゃん! おいらも一緒に連れてってくんねぇか!」

「草太?」

「おいらも庄ちゃんと同じだ。もう誰もいねぇ。おいらにはもう庄ちゃんしかいねぇもん… だから、な? おいらも、いいだろ?」

「…」

庄吉と草太は無言で見つめ合った。

「うん! 草太がいてくれたら、俺はもっともっと頑張れる! よし、ふたりで行こう!」

「ありがとう、庄ちゃん! おいら、絶対足手まといにならないよう頑張るから!」

こうして、ある日を境に庄吉と草太の姿が村から消えたのだった。



「俺たちは運がよかったんだ。
 草太とふたり、たまたま今の一座に拾われて、こうして江戸の地に立ってられるんだからな。
 もちろん、ここまで来るには一言で言えねえくらいの苦労はあったがよ。石の礫(つぶて)も言葉の礫もどのくらい喰らった数えきれねぇや…
 だがよ、歯ぁ食いしばって耐えられたのも、あいつと… 草太と一緒だったから…」

そう言う庄吉は、遠い目をしていた。
その目は少し潤んでいるようにもお美津には見えたが、お美津の視線を感じた庄吉は、

「すまねぇな、湿っぽくなっちまってよぉ」

と照れ隠しにあははと笑った。
そのとき、ちょうど稲荷社の裏手に着いた。





おカオの足は、浅草に向かっていた。
近頃人気の音弥とかにはとんと興味はなかったが、彼を贔屓にしていた娘ばかりが勾引(かどわか)されるという話を聞いたからにはじっとしちゃいられない。

(あたしだって、御用聞きの娘ですからね。
 じっとしてろと言われて、はいそうですかと大人しく引き下がってなんていられないわよ。
 それに、女子(おなご)には女子の探索の仕方ってもんがあるのよ)

ああして、こうして、とおカオはこれからの行動を頭の中で思い描きながら、うふふと笑った。
そうして足取りも軽く歩いていたのだが、とあるところで不審な二人組を見かけた。若い男と女の二人連れだ。
稲荷社を前にして男が社のほうを指さして何か言っているが、女のほうは気乗りしないのか心なしか腰が引けている。

(変ねぇ、夫婦というわけでも恋仲というわけでもなさそうだけど…)

さすがに ’福耳の親分’ の娘だけある。
ふたりの様子を見て、親しい間柄というわけではないらしいことを見て取っていた。そして、すぐさま次の行動へと移す。
おカオは辺りを見渡すと、井戸端会議しているおかみさん連中に気が付いた。
それとなく近寄り、そっと声をかける。

「ちょいとお聞きしますけど…」

「おや、なんだい? まあ、おカオちゃん」

好都合なことに自分を知っているおかみさんがいて、おカオは手短に挨拶する。

「あら、お登喜さん。
 なら、話は早いわね。ちょいと教えてほしいことがあるの。

 この先のお稲荷さんの前に… あっ駄目、そっちは見ないで! そう、誰も見ちゃ駄目よ? そうそう、それでいいわ。
 そのお稲荷さんのとこにね、若い男女の二人連れがいるんだけど、お登喜さんだけそっと見てね?

 ねぇ、あのふたり、どっちかだけでもいいんだけど、顔に見覚えないかしら?」

お登喜と呼ばれたおかみさんは、ちょうど稲荷社のほうを向いている位置だったので、何気なく視線を転じてふたりの姿を難なく捕えた。

「ああ、あれはお美津さんだわ、そっちのほうの通りにある「一文字屋」というお菓子屋さんとこの娘さんの…」

お登喜は自分の右手のほうを指さして言う。
黙ってうなづいたおカオは、

「じゃ、男の方はどう?」

と返した。

「さあねぇ…
 相手の男は見たことない顔だけど… でも、わりとイイ男だねぇ~」

少しうっとりと言うお登喜。
どうやら、これ以上は何も成果が得られ無さそうだなとおカオが思うのと、お美津という娘と男が歩き出したのがほぼ同時だった。
慌てたおカオは、

「ありがと、お登喜さんっ」

と言うなり、足早に稲荷社のほうへと向かった。


to be continued
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