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林檎騒動(3)
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鋼牙とカオルの間に、一切れの林檎。
これほどの存在感を主張する林檎に、鋼牙はこれまで会ったことがない。
ごくりと小さく喉を鳴らすと、覚悟を決めた鋼牙は、カオルから差し出された林檎を受け取ろうとして手を伸ばす。
あと10cm… 5cm… 3… 2…
もう届くというところで、カオルはこんなことを言った。
「林檎ってね、変色を防ぐのに塩水につけるの。鋼牙、知ってる?
でも、あれ、おいしくないと思わない?
だからさ、これね…」
そう言いながら、カオルはフフフと笑う。
その瞬間、ここは闘いの場ではないというのに、鋼牙の身体の中の戦闘モードに入るスイッチが押されたような感覚を覚えた。
カオルのこういう笑顔のときは用心せねばならない。長年付き合っているうちに身に付いた経験則だった。
だが、そんな内心の変化を相手に気取らせるようでは黄金騎士などやってられない。
その証拠に、目の前のカオルは何も気づかず、少しドヤ顔でこう言い放っていた。
「(じゃじゃ~ん)砂糖水につけてみたんだよ~ン!」
鋼牙の思考が止まった。
「砂糖… 水… だと?」
「うん。きっと、甘くておいしいよ?」
ニコニコ笑うカオル。
『マジか…』
そう呟いたザルバの声に応じる気力もなく、砂糖水につけたという林檎を受け取った鋼牙は、しばらくそれをじっと見つめた。
見た目は何も変わらない。
そう、塩水につけたものと変わらず、変色はしていない。
(だが、砂糖… だぞ?)
想像できない味を、あれこれ今更思ってみても仕方がない。
とうとう覚悟を決めた鋼牙は、スローモーションで林檎を口に入れた。
シャリ…
黄金騎士ともあろうものが、おっかなびっくりの一口。
シャリ、シャリ
味を確かめつつゆっくりと噛みしめたが、やがて驚いたような顔でフォークの先に残っている林檎を見た。
そして、一言。
「…うまい」
カオルの顔がパッと輝く。
「でしょ~ よかったぁ~」
『おいおい、ほんとなのか?(砂糖水だぜ?)』
てっきり鋼牙が苦渋の表情を見せると思っていたザルバは、慌てて訊き返した。
「ちょっとぉ~ 今、すっごく失礼なこと言ったでしょ!」
カオルの抗議の声も聞こえていないように、鋼牙は大真面目に言い切った。
「ああ、本当だ。
信じられないが、うまい」
「んもう! 鋼牙までぇ」
ぷんすこ怒るカオルだったが、鋼牙に褒められて悪い気はしない。
鋼牙が林檎を食べきるのを見届けてから、期待に溢れる顔で尋ねた。
「ねえ、あたしのこと、ちょっとは見直した?」
そう言って鋼牙の答えを待つカオルは… ほんとにかわいい。
戦闘モードを解いた鋼牙は、穏やかな顔でカオルを見つめる。
「まあな…」
鋼牙の答えに、カオルの目に喜色が浮かぶ。
「…と言いたいところだが、下手に褒めるとエスカレートするからな」
「ええーっ」
『そうだそうだ。
今回の成功に味をしめて、次は、蜂蜜か? チョコレート? んー、餡子(あんこ)って手もあるか?』
「んぐっ」
ザルバの奇抜な発言に言葉に詰まったカオルを見て、ザルバは呆れたように言った。
『おいおい、まんざら遠くないことを考えてたのか?
おい、鋼牙。やはり、カオルの出すものは気を付けたほうがいいぞ』
と、鋼牙の方に注進した。
胃袋の方も鋼鉄並みの鋼牙だから、カオルの手料理で腹痛などを起こすようなことはなかったが、それでも、ホラーとの闘いには万全の体制で臨んでもらわなくては困るのだ。
『カオル。
鋼牙に甘いものを、ってんなら、おまえさんがピンクのベビードールでも着て、鋼牙のベッドに潜り込んでやりゃいいじゃないかぁ』
「ちょっ…!」
「ザルバ!」
慌てふためくふたりを尻目に、ザルバは余裕しゃくしゃくで付け加えた。
『はっはっは、どっちがお好みかは、俺様のいないところでゆっくり話し合いな!』
「…」
「…」
気恥ずかしさから複雑な表情のふたりは、黙っていることしかできなかった。
その後、ザルバのいないところで。
「鋼牙… あのね?」
「なんだ?」
「あたしの、その… ピンクの… ね。…想像した?」
「…」
答えに詰まる鋼牙。
「あーっ、想像したんだ!」
ちょっぴり嬉しいような、ちょっぴり恥ずかしいような気持ちで、カオルはいたずらっぽく鋼牙を茶化した。
すると、鋼牙は気まずそうな顔をして
「すまない、カオル… その、ベビーなんとかってやつはどういうものなんだ?」
ベビードールを知らない鋼牙は、おずおずと尋ねたのだ。
「ええーっ」
カオルは、がっくりと頭(こうべ)を垂れるのだった。
fin(おまけへ)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
鋼牙は、カオルの切った林檎を、昔も食べない、そして今も(少し理由が変わって)食べない…
そんなお話にしようと思って書き始めた「林檎騒動」。
スーパーに並びだした林檎を見て、美佳ちゃんが林檎の飾り切りをしたとブログに書いていたことを思い出した(2007/03/06の記事)ところから、この妄想が始まったのでした。
ところが、2話目を書いているときに、飾り切りをググっていると「砂糖水」の話に辿りつきまして、「10年後も食べない」という流れが変わってしまいました。
(うんうん、あるね。こういうこと! selfish の場合、気ままだからさ!)
ラストのベビードールは、ほんとに突発的な思いつきです。
ザルバがからかってる流れの中で、なんだか自然に出てきました。
(うんうん、あるね。こういうこと! selfish の場合、気ままだからさ! その2)
その後、鋼牙さんはカオルちゃんのベビードール姿を見ることができたのでしょうか?
気になりますねぇ~?
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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