きんのまなざし　ぎんのささやき

牙狼（冴島鋼牙 Ver.）の世界を、気ままに妄想した二次創作サイトです

just for me（3）

ほんとごめんなさい。
今夜はすごく短いのです。

各駅停車のノロノロ運転でご迷惑をお掛けしますが、お乗りになられる方はお急ぎくださ～い！

では…　ドア、閉まりま～すっ
しゅっぱ～つ！

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リビングのドアを開け、中に入ってみると、そこにカオルの姿はなかった。

（部屋に戻ったのか…）

と、少しホッとしつつも拍子抜けしているところに、気配を感じたのかゴンザが姿を見せた。

『おや、鋼牙様。
　何かご用など？』

「いや…」

即座に否定した後、すぐに何気ないふうを装いながら、

「カオルは？」

と尋ねた。
その問いにゴンザは嬉しさを感じたが、そんなことはおくびにも出さずに平然と答えた。

「カオル様でしたら、今日は少し疲れたから早めに休むと言って、お風呂に入られましたが…」

「そうか…　なら、いい」

そう言う鋼牙に、ゴンザは少しお節介だとは思ったが、

「何かあったのですか？
　カオル様が鋼牙様の様子を気にされていましたが…」

と少し突っ込んで聞いてみた。

「ああ…」

一瞬、鋼牙は微妙な顔を見せたが、すぐにそれを引っ込めた。

「写真を…
　カオルを撮った写真を　’あとで見る’　と言っていたんだ。

　…だが、もういいんだ。明日にしよう」

あっけなく諦めてしまった鋼牙に、「そう仰らず…」と追いすがろうとしたゴンザだったが、鋼牙はすでに踵（きびす）を返して書斎に引き返そうとしていた。
まるで、ゴンザに何か言われるのを拒むようなその背中を見て、ゴンザもそれ以上何も言えずに見送るしかなかったが、しばらく足を進めたところで、ふいに鋼牙が振り返った。

「ゴンザ、俺も今日は早く休もうと思う。
　風呂が空いたら知らせてくれ」

そう言うと、再び歩き出した。
すでに鋼牙は書斎のドアに手を掛け、中へと消えるところであったが、ゴンザは、

「かしこまりました」

と言うと、見えなくなった鋼牙に向かって礼をした。
そして、頭を下げながら、「はてどうしたものか…」と思案していた。

書斎に戻った鋼牙は、少しだけすっきりした気分で手近な書物を手に取った。
今度は、最前よりもずっと頭の中に内容が入ってくる。
鋼牙の苦手な女喰いのホラーについて、餌食となりやすい女の特徴や、その捕食の方法、それに弱点などの記載に一通り目を通し終えた頃、書斎のドアがコツコツとノックされた。
開かれたページから目を上げる鋼牙。

（ゴンザではないな…）

と思いながら鋼牙は立ち上がり、急ぐでもなくドアに近づくと、静かにドアを開けた。
すると、そこには風呂上がりのカオルの姿があった。

「あ、お風呂空いたから…
　先にもらってごめんね」

ゴンザから鋼牙への言伝を頼まれたカオルは、風呂上がりだからか頬がほんのり赤く、少し恥じらっているふうであった。
だが、瞳は真っ直ぐに鋼牙を見つめていた。

「そんなことは気にするな。
　わざわざすまなかったな。

　…もう休むんだろう？」

鋼牙もカオルの視線を受け止めて優しく言った。

「うん…

　でも、鋼牙が写真を見たいって…　そうゴンザさんから聞いたんだけど」

（ほんとに見たいの？）

とでも言いたげに、カオルは鋼牙の顔を下から覗き込むように見た。

「それは…
　いいんだ、明日でも。

　今夜はゆっくり休むといい…」

そう言う鋼牙の態度は落ち着いていた。
カオルがさっきまで感じていたような妙なぎこちなさは、感じられなかった。

（よかった…
　いつもの鋼牙に鋼牙に戻ってくれた）

ホッとしたカオルは、思わず笑顔になる。

「大丈夫、アルバム持ってくるだけだもん！
　すぐに持ってくるから待ってて！」

言うが早いか、アルバムを取りに自分の部屋に駆け戻ろうとした。
だが、次の瞬間、カオルの足は止まった。
鋼牙がカオルの腕を掴んで、引き止めていたのだった。

to be continued（4へ）
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[27回]