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きんのまなざし ぎんのささやき

just for me(2)

お寛ぎのところ失礼いたします。
切符を拝見させていただきます。

途中下車の方はいらっしゃいませんか?
お降りの方はお忘れ物などございませんようご注意願います。

見切り発車の当列車の目的地は、いまだ定かではございませんが、目的地までの短い(かどうかもわからない)間、よろしくお付き合いくださいませ~



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カオルの手がアルバムを掴み、鋼牙を振り返ったとき、鋼牙はほんのわずかだが視線をそらして言った。

「すなまい、カオル。
 少し調べ物があるんだ… あとでもいいか?」

それを聞いたカオルはアルバムを差し出そうとした手を止めた。

「あ、うん。 わかった…」

すぐに笑顔をつくって、そう答えたカオルに、鋼牙はもう少し何か言おうかと思ったのだが、結局、そのままリビングをあとにした。

(どうしたんだろう、鋼牙…)

リビングにひとり残されたカオルは、しばらくの間、鋼牙の消えたドアを見つめるしかなかった。




一方、鋼牙の方は、書斎に入ると革張りの椅子にドサリと腰を降ろし、溜め息をついた。
そこに遠慮がちに声を潜めて、ザルバが話し掛ける。

『お~い、鋼牙。
 なんだってあんなこと言ったんだ?」

「…」

『やっと会えたカオルを放っておいてまで調べなきゃならんことなど、ありはしないだろ?』

「そうだな…」

なぜ、あんなふうに言ってしまったのか、これだ、という答えをすぐには見つけられなかった。

(…なんでだろうな)

ぼんやりとそう思うだけだ。
そんな鋼牙に、ザルバは片方の眉を大きく引き上げた。
まったく人というのはよくわからん… と、でも呟きたそうなザルバだったが、そのまま黙って鋼牙を放っておくことにした。




その日のディナーは、文字通り ’ご馳走’ だった。
カオルが帰ってきたことがよほど嬉しかったのか、ゴンザも腕によりをかけたようだ。
カオルのほうも好物が並ぶ食卓に

「ゴンザさん、ありがとう!」
「これ、すっごくおいしいね」

などと素直に気持ちを口にするので、ゴンザとしても作った甲斐があった、と喜んだ。
そして、カオルとゴンザの間では、必然的に、ポート・シティでの出来事が会話にのぼりがちで、短い滞在中にあったいろいろなことがとても楽しかったということがよく伝わってきた。
そんなふたりの会話に耳を傾けている鋼牙も、もちろん楽しそうに見えた。
普段から鋼牙の口数は多いほうではないが、穏やかな表情で食事をしながら、時折、一言二言、話に加わったりして、今夜もいつもと変わらないように見えた。

だが、食後のデザートを出そうと、いったんリビングを離れたゴンザが、再びリビングに戻って来てみると鋼牙の姿はなくなっていた。

「おや、鋼牙様は?」

当然のゴンザの問いに、カオルが無理に作った微笑みを見せて答える。

「調べ物がまだ終わってないからって… 書斎に行ったわ」

カオルの答えそのものよりも、答えたときのカオルの様子が気になったゴンザは、カオル同様、顔を曇らせた。

「鋼牙、どうしちゃったんだろう…
 何か気に障ること、あたし、言っちゃたんだろうか…」

ゴンザに向かって言うというより、呟きに近い言葉がカオルの口から漏れる。
いつもと変わりなく見えた鋼牙も、カオルの目からすれば違いがあったのだろう。

「そのようなことは…

 鋼牙様は、カオル様がお帰りになるのをずいぶん楽しみにされていたのですよ。
 きっと、久し振りにお会いになられて照れてらっしゃるんでしょう」

カオルの感じた違いをゴンザもまた感じたのか、それでも、目の前のしょげたカオルを少しでも励まそうとゴンザは優しく声をかけた。

「そうなのかな…」

カオルは弱々しく笑うしかなかった。




再び、書斎に戻った鋼牙は、その辺にあった書物を適当に開いて眺めてみたりした。
が、もちろん、目的があって開いているわけではないため、目に入った活字は頭の中に入ってくることはなかった。
そうやって無意味な調べ物をしばらく続けてみたものの、

『有効な時間の使い方ではないな』

というザルバの至極もっともな指摘が癇に障り、少し手荒にザルバを台座に戻す。

『さっさとカオルと仲直りするんだな!』

ザルバの意識が無くなる前に吐いた言葉を、鋼牙は苦々しく聞いた。
相棒が静かになったものの、もはや調べ物を継続する気分にはなれない。
開いていた書物を、パタンと閉じる。
そして、鋼牙は椅子に座ったまま目を閉じた。

目を閉じることで、瞬時にして身体をリラックスさせ、意識を解放し、精神を安定させることが鋼牙にはできた。
深夜に外出することもあるこの仕事では、睡眠も不規則になりかねない。
だから、睡眠不足により集中力や冷静な判断力を損なわないために、誰に教わったわけでもなくいつの頃からか鋼牙が自然に身についたものだった。
だから、疲労やストレスを感じたときほど、こういう短い小休止を意識してとるようになったのも、半ばクセに近いかもしれない。

心を無にする…
意識を空っぽにする…

時間にして、数十分程度の短い間だったが、やがて、鋼牙は静かに目を開いた。

(俺はいったい何をやってるんだ…)

半ば呆れたように、そう思った。

(ようやくカオルが帰ってきたんじゃないか。
 訳の判らない感情に縛られて、カオルを避けるなど…
 …馬鹿げてるとしか言いようがないな)

思わず、フッと笑みがこぼれ、スッキリと落ち着きを取り戻した頭で、そう思った。

(よし…)

覚悟を決めた鋼牙は、カオルに会うべくリビングに向かうために椅子から勢いよく立ち上がった。



to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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