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きんのまなざし ぎんのささやき

just for me(1)

ぼんやりしてたら10月も終わりです!
「秋」にちなんだような妄想を、何かやり残していないかしら?
…な~んて考えてみたところ、ふいに1個、思い浮かびました!

サクッと思いついたから、サクッと書けると思ったのに、やはり1回では終わりそうにありません。 (;^ω^)

見切り発車で出発進行!
お乗りの方はお早めにご乗車くださ~い!


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数日前からカオルはポート・シティに出掛けていた。
なんでも、友人の結婚が決まったとかで、その準備を手伝うという名目で友人に会いに行ったのだ。

たかだか数日の留守だというのに、 昼の仕事を終えて屋敷に帰るときの鋼牙の足取りは、なんとなく重く感じられた。
帰宅してもカオルがいない… ただそれだけのことなのに、屋敷の玄関をくぐるときなどは、下手をすると溜め息まで出かねなかった。

『どうした、鋼牙。
 カオルがいないと、そんなにも張り合いがなくなるものなのか?』

ザルバが冗談めかして言ってくるのにも、鋼牙には軽くいなす余裕などない。

「…黙っていろ」

酷く不機嫌な声でザルバを黙らせるだけで、クックックッと忍び笑いを漏らすザルバにも無視を決め込んでいた。

問題はそれだけではなかった。
折しも秋が深まるにつれ、日に日に夜が長くなるこの時期。
こんなときに限って、元老院からはホラー退治の指令がひとつも来なかったのだ。
広い屋敷に執事のゴンザとふたり。
なんとなく手持ち無沙汰なまま、大して必要もないのに書斎で古びた魔戒書などを開いたりして、いたずらに時間を費やしたりした。

正直なところ、自分でも少し驚いているのだ。
これまでも、仕事の締切などでアトリエとして使っているアパートにカオルが籠り切りになったこともあった。
そんなときでもこんな気持ちになった覚えなどない。
それに、数年前までは、屋敷の住人は自分とゴンザのふたりだけだったのだから、考えようによっては、その当時の環境に戻っただけに過ぎないはずだ。
だが、実際のところは、カオルひとりいないだけで屋敷の中の雰囲気がものの見事に変わっていた。

(俺は、こんな殺風景な毎日を過ごしていたのか…)

カオルはかけがいのない存在だとは自覚しているつもりだったが、これほどまでに自分の中で大きくなっていたのかと改めて思い知らされた気がしていた。



その日も同じように、オブジェの封印に出掛けた。
ところが、鋼牙の様子が
昨日までとは少し違っていた。
いや、何がどう違うというわけではない。
いつもと同じように無駄口を叩かず、笑顔を見せるわけでもなく、ザルバに導かれるままに淡々とオブジェの放つ邪気を浄化しているに過ぎなかった。
だが、明らかに違うのだ。
黒い影を薙ぎ払う太刀筋は鋭敏さを極め、移動のときの歩みにもどこか覇気が感じられる。

この日、穏やかに晴れていた空から太陽がだいぶん傾いた頃、最後の封印を終えたことをザルバが告げた。

『鋼牙、今ので最後だ。
 今日は少し多かったな』

「そうだな。
 …では、帰るぞ」

剣を鞘に収めると、鋼牙は屋敷を目指して歩き出した。

冷たくなった風と競うようにして歩を進める道すがら、ずっとザルバはニヤニヤしていた。
鋼牙は素知らぬ振りを決め込んで、前だけを見て歩き続けた。
だが、夕空に屋敷のシルエットが確認できる場所まで帰ってきたところで、どうにも我慢ができなくなったのか、鋼牙はぶっきらぼうに聞いた。

「なんだ? 言いたいことでもあるのか?」

それを聞いて、堪らずザルバが大きく笑った。

『あ~はっはっは~
 鋼牙、おまえってヤツは、案外単純だったんだなぁ?
 昨日までのおまえとは全然違うじゃないか!

 今日はカオルが帰ってくる日なんだろう? えっ?
 カオルは、今頃、おまえの帰りを待ちかねてるんじゃないのか?』

冷やかされた鋼牙は、

「好きに言ってろ…」

と、つれない返事をしたものだったが、明らかに機嫌は悪くなかった。
心なしか、屋敷からこぼれる光に温かみを感じる。
玄関のドアを開くとき、つい、顔が緩みそうになるのを覚えて、鋼牙は意識して眉間に力を込めた。

   ガチャ…

ゴンザの出迎えがなかったが、カオルとお喋りでもしているのだろうと、大して気にもならない。
リビングのドアの前まで来ると、案の定、中からカオルとゴンザが話している声が聞こえてきた。



「ねぇねぇ、ゴンザさん。
 これ、見て、見て!」

「なんでございますかな…  ほほう、これはこれは!」

「亜佐美がね、あたしにもどうか、って…」

「素敵でございますな、カオル様」

「ほんとぉ?」

「はい、それはもうお美しい」



実に楽しそうだ。

   カチャ

鋼牙は、リビングのドアを開けて中に入った。

「これは鋼牙様。 気付きませんで…」

そう言うが早いかゴンザはソファから立ち上がると、鋼牙の元に歩み寄った。
そして、鋼牙がコートを脱ぐのに手を添えて、流れるような動作でコート掛けに掛けていく。
鋼牙が、ふと、カオルに視線を戻すと、カオルはソファから立ち上がり、

「おかえり」

と笑顔を見せた。

「ああ。ただいま」

そう穏やかに答えた鋼牙は、今度は反対に

「おかえり」

とポート・シティから帰ってきたばかりのカオルに返した。
カオルはにっこり笑い、

「うん、ただいま」

と言うと、ふたりは視線だけで心を通わせるかのように見つめ合った。
ふたりに負けないくらいニコニコしたゴンザが、小さく一礼して、夕食の支度のためにその場をそっと離れていった。
すると、ザルバがカオルに声を掛けた。

『カオル。
 ゴンザとずいぶん会話が弾んでいたようだが、向こうでは存分に楽しんできたのか?』

カオルは鋼牙からザルバに視線を移し、

「うん、とっても楽しかったよ。
 毎日、毎日、亜佐美のお供であちこち行って…
 夜は夜で、寝る間を惜しんで語り続けちゃった!

 ほんとはね、あと2~3日いられたらよかったかなぁ~、なんて思うくらいだったんだよねぇ」

少し残念そうにそう言った。
すると、微かに鋼牙の表情が変わったのだが、そんな鋼牙に気付かないカオルは輝くような笑顔を見せて言った。

「あ、そうだ、鋼牙。
 亜佐美が選んだドレスなんだけどね、す~ごく綺麗なんだよ!

 それでね、亜佐美があたしにも着てみろって言うから、お言葉に甘えて着てみちゃった。
 写真撮ってきたから、見てみない?」

そう言うと、テーブルの上に置かれていたポケットアルバムへと手を伸ばした。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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