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きんのまなざし ぎんのささやき

L'Oiseau bleu(1)

一度メルヘンを書いちゃうと、あれも書きたい、これも書きたい、と
続いてしまうんですよねぇ~
なんでかな?


…というわけで。

さぁ、よいこのみんなはもう寝てしまったかな?
まだ、眠れない子にはこんなお話はどうだろう?

メルヘンが苦手! という方は、お布団かぶって羊さんを数えてね!

それから、レイは「ひとりがお似合いさ」と思っているお友達にも、
回れ右を推奨します。
(うふふ、そういう妄想です!)







::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

舞踏会のお話を覚えているかな?
カオルンと王子が踊っていたときに、実は、レイにも心ときめく物語が
生まれていたんだよ。

今夜はそのお話でもしようかな?

そう、あれは、ミツッキー国の王女であることを、カオルンに告げるために、
王子が部屋を出ていったとき… そこからこの物語は始まるよ。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

後に残されたレイとゴーザンが、安心したように大きく息を吐くと、互いに
笑顔を交わしました。

「それじゃ、俺たちも戻るとしよっか?」


肩を並べて大広間へと向かうふたりの耳に、ワルツの旋律が切れ切れに
届いてきました。
大広間の手前まで来たところで、レイは溜め息をつきました。

「あ~、なんだか俺、だんだん気が重くなってきた」

「それはまた、どうして?」

ゴーザンは憂い顔のレイに尋ねます。

「女の子たちが俺と踊る順番を決めて待っているかと思うとね…」

モテる男は、’フリ’ というわけでもなく、本当に困っているようでした。

「では、それを正直に言って断ればいいのでは?」

ゴーザンが至極真っ当なアドザイスをします。

「それができればいいんだけどね。
 やっぱさ、憧れているものに近づけるってのは嬉しいもんじゃない?」

誰よりも強い剣の使い手を探し求めて長い旅をしてきたレイは、憧れる側の
気持ちも十分に知っていたのでした。
困りながらもニコニコして言うレイに、ゴーザンは

「レイは少し優しすぎますな」

と首を横に振りながら、少し呆れたように言いました。



「おや?」

そのとき、レイが何かに気づいた様子で声をあげました。

「どうしましたな?」

ゴーザンがレイの視線の先を辿ります。
視線の先には大広間のドアが見え、その手前の少し広くなっている空間には
何人の紳士、淑女が、休憩していたり、話をしていたりしていました。

「いや、あの子、何か困っているみたいでさ…」

レイが示す先には、確かに少女がひとり、オロオロとした素振りで立って
いました。

レイは、その少女に、にこやかにさりげなく声を掛けました。

「どうかしたの?」

突然、現れたレイに、少女は弾かれたようにひどく驚き、その顔をレイたちの
ほうに向けました。
レイよりいくつか年下に見えるその少女の、少し怯えているように見える瞳は、
どこまでも澄んで森の中の泉のように豊かで清らかに見えました。
レイは、その瞳に吸い込まれそうな気がして、ハッとしました。
一方、少女のほうは、レイの優しげな様子に少し安心したようでした。

次の瞬間、レイはさらに驚きました。

少女は、言葉を喋る代わりに、おずおずと手で何かの仕草をしたからです。

「えっ?」

レイがどうしたものか戸惑っていると、後ろに控えていたゴーザンが

「任せてください」

と言って、レイの横に並ぶように一歩前に出ました。
そして、少女と同じように、手で次々と何かを形作っていきます。

それを見た少女は、あからさまにほっとした表情を見せ、手で何かを
表現し(レイにはお礼を言ってるように感じました)、ちょこんと
お辞儀をして、その場を立ち去っていきました。



少女がその場を離れてから、レイはゴーザンに尋ねました。

「ね、今のは何?」

「お手洗いの場所を聞かれたんですよ」

さらっと答えて歩きだしたゴーザンを、レイは追いかける格好で走り
寄りながら聞きます。

「えっと、そうじゃなくって…
 手でなんか、こう、してたじゃん?」

レイは手で何か適当な仕草をしてみせながら言います。

「あぁ、’手話’ ですか?
 耳や口の不自由な人は、言葉の代わりにこれで意思を伝えるんですよ」

ゴーザンはそう言って、手である仕草をすると、

「これが、 ’トイレ’ を意味する手話です」

と言って、レイに見せました。

「ふぅ~ん、そうなんだぁ…」

納得したようにうなずいて見せたレイは、急ぎ足で去っていく少女の背中を
振り返り、

「あの子、どっかで見たことあるんだよね…」

そう小声で呟いて、レイは足を止めました。

そんなレイに、ゴーザンは声をかけます。

「わたしは先に戻りますぞ」

そして、ひとりで大広間のほうへ向かって歩き出しました。

「あぁ」

ゴーザンの言葉に生返事をして、レイはなおも考え続けました。



レイはできるだけ記憶を遡ってみましたが、少女が誰なのか、どこで
会ったのか、少しも思い出せませんでした。
そうこうするうちに、あの少女が戻ってきました。

少女はレイの姿に気が付くと、少し微笑んで会釈しました。
レイは、

「やぁ… えっと… こんばんは」

と、少し間の抜けた挨拶をしました。

「君と少し話がしたいんだけど… その… いいかなぁ?」

少女は戸惑いながらも足を止め、小さくうなずきました。
すると、レイはあからさまにほっとした表情を見せました。
彼女はどうやら耳は聞こえるようでした。

「そう、ありがとう」

礼を言いながら、

(俺、なんでこんなに緊張してんだろう?)

と、自分の変化にどぎまぎしました。
老若男女、どんな人でも抵抗なく話ができるレイでしたが、この少女は、
何か勝手が違いました。

レイを見つめる彼女の瞳は、どこまでも澄んでいて、口先だけの言葉など
すべて見透かされてしまうような気がしました。

「俺は、レイ。
 君の名前は?」

何気なくそう聞いてから、レイは

(しまった!)

と思いました。
なぜって?
彼女は話ができません。
そして、レイは手話ができません。

「あ、いや、その…」

慌てるレイを見て、少女はほほ笑むと、おもむろにレイの手を取りました。
そして、レイの手のひらに、白くて細い指で文字を書いていきました。

「S… h… a… r… o… n… Sharon!
 君の名前はシャロンっていうんだね?」

嬉しそうにそう言う零に、少女… シャロンは、にっこり笑ってうなずき
ました。

レイはなんだか恥ずかしくなりました。
名前がわかっただけでこんなに喜んでいる自分のことが。
なんだか自分ひとりが浮かれている気がしてしまい、慌てて取り繕うように
シャロンに尋ねました。

「ねぇ、シャロン?
 俺、君とはどこかで会った気がするんだけど…」


to be continued(2へ)
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常々
思ってたんですよ。
零くん(レイ)が、あえて一人になろうとするのが見ていて寂しいなぁ~…と。
零くんだって幸せになったって、良いじゃないッ!(鋼牙ばっかりじゃなくて…ね)
公式には常に一人でしたが、selfish様の小説の中で、零くんをハッピーにしてあげて欲しいなぁと思います!
URL 2013/07/05(Fri)11:20:42 編集
Re:常々
零くんはしあわせになっちゃダメなキャラなのかもしれません。
いや、多分、そうなんでしょう。
でも、それは公式でのお話…

というわけで、二次で、しかもメルヘンなら、しあわせなレイも「あり」じゃ?
そんなわたくしどもの今回のご提案にご賛同いただきまして、誠に喜ばしい限りです! (笑)

selfish の妄想の中で、レイくんが、すんなりしあわせになるかどうかはわかりませんが(いつものごとく、設定がほぼない状態です…  えへへ)、どこかに辿りつければいいなと思いながら、楽しく書きたいと思ってま~す!

コメントありがとうございました!
【2013/07/05 22:51】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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