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きんのまなざし ぎんのささやき

L'Oiseau bleu(3)

シャロンって誰? 誰?

気になって眠れない子はいるかしら?(ははは、いないか…)
もしも、そんな子がいたら、眠いおめめをこすりながら、もう少しだけ
起きていてね。

今夜のお話、そろそろ始めるよ~





::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

シャロン…

ゴーザンがその名を口にしたのがあまりに自然だったことに、レイは天地が
ひっくり返るくらい驚きました。

ここ何日もの間、朝から日暮れまで、足を棒のようにして、思いつく限りの
場所を尋ね、知り得る人すべてに会ったつもりでいたのです。
そんなにしても、シャロンのことを知る手掛かりひとつ見つからなかった
というのに、一番身近とも言える人物の口から、いとも簡単にポロリと
出てくるとは!


「な、なぜ知ってるかと言われても…

 この城に関係する者のことは、名前くらい知ってます…よ?」

レイの驚きぶりに、逆にゴーザンも驚きながら答えます。


「…ウソ」

レイは絶句しました。

(まさか、この城にいる娘(こ)だったわけ?)

レイはヨロヨロと後ずさりすると、背後の壁にドンっと当たり、ははは… と
乾いた笑いを浮かべました。


「だ、大丈夫ですか?」

心配そうにゴーザンがレイに歩み寄りました。

「ショックが大きくて、ちょっとね…

 … っと、そんなこと言ってる場合じゃなくて!

 ゴーザン、教えてくれ!
 シャロンにはどこに行けば会えるっ?」

ゴーザンの両肩に手を掛けて、必死に尋ねるレイに、ゴーザンがアワアワと
答えます。

「に、庭に行けば…
 今の時間なら、ひょっとしたらバラ園のほうにいるかもしれま…」

「バラ園だね? ありがとっ!」

ゴーザンの答えを最後まで聞かずに、レイは風のように駆け出しました。

後に残されたゴーザンは、ずり落ちた眼鏡を掛け直しながら、レイの
後ろ姿を見送りました。




夕食の時刻だというのにまだ明るさの残る庭を、レイはバラ園目指して
走っていきます。
昼間の眩しい日差しとは違い、少し翳りを見せる光によって、庭の木々は、
刻々と姿を変えていきます。
ところが、そんな庭の変化など、今のレイはチラとも目をくれません。

(会える! 会える! シャロンにやっと会えるんだ!)



バラ園に辿りつき、弾む息をハァハァと整えます。
苦しい息の中で、ここ何日も必死に追い求めていた姿を目で探します。

昼間の熱気をまだ含んでいる空気の中、濃厚なバラの香りがします。

誰もいないバラ園にひとりで佇んでいることが判ると、レイは天を仰いで

「くっそ~」

と、やりきれない想いを口にしました。

(今度こそ、会えると思ったのに…)

レイの目には一番星が映りました。
地上のことなど関係なく、星はチカチカと瞬いています。

「…」

レイは大きな溜め息をつくと、城に戻ろうと回れ右をしました。
でもすぐに、歩きかけたその足をピタリと止めます。

なぜって?

目の前のバラの茂みの向こうから、カゴを小脇に抱え、手にはハサミを
持ったシャロンが姿を見せたからです!

洗いざらしたブルーの綿のワンピースを身に着け、ゆるやかなウェーブの
美しい髪も無造作に後ろでくくられていました。
舞踏会のときのあでやかな姿とはまったく異なり、少しも飾らない、
ラフで自然な出で立ちに、レイは目が釘付けになりました。


シャロンのほうもすぐに人影に気付き、足を止めました。
シャロンの位置からは逆光になり、レイの表情がよく見えません。
怯えるようにあとずさるシャロン。



「あっ、待って!」

レイは慌てて引き止めます。
できるだけ驚かせないように、優しく優しく声をかけました。

「俺だ…  レイだ。
 舞踏会のときのこと覚えてないかな?
 最後の曲を踊っただろ?」

それを聞いてシャロンが動きを止めると、レイの顔を確かめようと目を
こらしました。

レイは声を掛けながら、ゆっくりとシャロンのほうに近づきます。

「俺、あのあとからずっと君を探していたんだ。
 もう一度会って、ちゃんと話がしたかった…

 だから、あのときみたいに逃げないでほしい」

シャロンは、レイのほうをじっと見つめています。
レイはゆっくりゆっくり慎重に歩を進めて、手を伸ばせばシャロンに届く
位置まで近づくと、緊張で強張っていた顔が少し緩みました。

「よかった… ようやく会えた…」

ほっとしたようにそう言うと、照れ臭そうな笑みを見せました。
そんなレイを見て、シャロンは首をかしげてみせます。

「どうしたの?」

まるでそう聞いているみたいでした。
会えたことで満足していたレイは、慌てて言葉を探します。

「えっと… 君はここに住んでるの?」

そう尋ねると、シャロンは後方を指さしました。
指さす先には、庭木の向こう側に明かりが見えます。

「えっ、あそこなの?」

レイは拍子抜けしてしまいました。
そこは、庭師のノーマンの家だったからです!

「君はノーマンの… お孫さんか何かなの?」

半信半疑ながらもそう尋ねてみると、シャロンはにっこり笑ってうなずきました。

(あっ、笑った!)

レイは瞬時にそう思いましたが、すぐに、

(いやいや、そうじゃなくって!)

と打ち消しました。

(城の外ばかり探していたから判らなかったんだ。
 もっと早くに城の中を探していれば…)

そんなふうに悔しさも感じながら、レイは改めて、シャロンに聞きました。

「なんだ、そうだったんだ…
 じゃあ、会いたいと思えばいつでも会えるんだね?

 …ねぇ?
 それじゃあ、明日、また改めて会ってくれないかな?」

恐る恐る聞いたレイの問いに、シャロンは少し考えている様子です。
レイは固唾を飲んで見守ります。

(ほんとに俺、どうしちゃったんだろう?
 なんで、こんなにドキドキするかなぁ、も~~~)

どんな人と話をするのでも、およそ緊張というものを感じないレイが、
今は、激しく鼓動する心臓に眩暈を覚えそうです。

考えていたシャロンがレイの目を見たと思った次の瞬間、恥ずかしそうに、
こくんと小さくうなずきました。

「ハァ~」

レイはカッコ悪いくらいに脱力した後、恥ずかしそうに笑いました。
シャロンも思わずニコニコと笑みを見せました。
それで、安心したのか、レイはようやくいつもの調子を少し取り戻しました。

「シャロン。
 話をするのは明日だ…

 もう遅いから、家まで送っていくよ」

シャロンも少し肩の力を抜いて、リラックスした表情を見せてうなずきます。


「それ、持つよ」

レイはそう言うと、シャロンの返事も聞かずに、シャロンの手からカゴを
取り上げました。


そ・し・て…

夕闇迫るバラ園を、ぼんやり温かく灯る明かりに向かって、ふたつの陰が
歩いていきます。
ふたりの間に言葉はありません。
ただ、目を見つめ、ふふふと笑い合っている… それだけで十分でした。

ふたりの頭上では、一番星が先程よりも輝きを増し、クスクス笑って
いるように瞬いていました。
その一番星をレイはふと見上げました。

(あぁ、明日が楽しみだ…)



to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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