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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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memories not to forget(2)

梅雨はいやですね。
ジメジメですね。
selfishの書く鋼牙もどんよりです。
それもこれも梅雨が悪いんだ!
梅雨が悪いんだったら~

暗い鋼牙もいいかもね、という方は続きをどうぞ…




:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

今夜の鋼牙はいつもにも増して、ホラーを情け容赦なく叩き伏せた。
約束通り、ザルバは何も言わず、

『今日のお前にかなうホラーはいないな。』

と一言つぶやいただけだった。

屋敷に戻ると、いつものようにゴンザが出迎えたが、その顔つきは
いつもと違い、やや険しいものだった。

「おかえりなさいませ、鋼牙様。」
「ゴンザ、今戻った。
 今日はもう休んでい…」

鋼牙の言葉を遮(さえぎ)り、ゴンザが念を押した。

「鋼牙様。
 先ほどのお話、もう決められたことなのですね?」

鋼牙は、一呼吸おいてから、ゴンザから眼をそらさず短く答えた。

「あぁ。」

『ゴンザ、俺も鋼牙に確かめてみたが、コイツの決心は変わらないゼ。
 おっと、俺はこの件には口出ししないことになってたな。』

ザルバが口を挟んだが、それきり黙ってしまった。
ゴンザは小さく息を吐き、軽く頭を左右に振ってから、言葉を継いだ。

「それでは、ひとつだけお願いがございます。」
「なんだ?」
「カオル様が記憶を封じられれば、この屋敷にいらっしゃった頃の…
 つまり、お友達のアパートから出てきた後の記憶が曖昧になろうかと
 思います。
 家財道具はこの屋敷にあるのですから、カオル様はどこに帰れば
 いいのか、それすらも覚束(おぼつか)なくなります。

 そのような状態のままカオル様を放置することは、ゴンザにはとても
 できません…

 どうか、お願いです。
 鋼牙様がカオル様の記憶を封じられた後、偶然通りかかったふりを
 装いますので、このゴンザがカオル様に手を貸すことをお許し
 いただけないでしょうか?
 どうかこれだけは、ゴンザの我儘(わがまま)を聞いていただけない
 でしょうか?」

鋼牙に許しを請(こ)う内容であるが、これだけは譲れない、という
ゴンザの気迫が顔に出ていた。
鋼牙はしばらく考えた後、口を開いた。

「ゴンザ、すまない。
 記憶を封じた後のことまで俺は考えが回らなかった。

 カオルが魔戒騎士とは関係のない、ごく普通の生活に戻れるように
 アイツを助けてやってくれないか?
 改めて頼む。」

鋼牙の言葉を聞き、ゴンザはようやくほっとしたように肩の力を抜いた。
そして、いつもと変わらぬ、穏やかで丁寧な物腰で鋼牙に答えた。

「かしこまりました、鋼牙様。」

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

鋼牙はザルバを外して台座に据えると、パタンと蓋をしめた。
これでザルバも新魔戒へと戻り、束の間の休息をとることになる。

鋼牙は湯に入り、今日一日酷使した身体をゆっくりと解きほぐした。
湯から上がり、、二階の自室に戻ろうとドアノブに手をかけたが、一瞬
迷った後、カオルの部屋へと向かった。

コンコン

「入るぞ」

「…」

返事はなかった。

(もう寝たか…)

ドアがから離れかけたが、次の瞬間、もう一度ドアに向き直った。

「カオル、入るぞ」

もう一度声を掛けてからドアを開け、室内に入った。
ぷ~んと油や絵の具などの入り混じったにおいがする。
”カオルの部屋の匂い” だ。
カーテンを閉め忘れたらしく、むき出しの窓から、かすかな月明かりが
差し込んでいる。
夜目の利く鋼牙は、スケッチブックやキャンバスを避(よ)け、カオルの
ベッドにたどり着いた。
規則正しい寝息をたてて眠っているカオルは、まだ少しやつれていた。
だが、顔色はずいぶんよくなっていた。
鋼牙はベッドの傍(かたわ)らに跪(ひざまず)き、その安らかな寝顔を
間近に見つめた。

(お前を浄化できてよかった。

 だが、これでお別れだ。

 お前は普通の人間として、画家を目指す一人の人間として、ホラーとも
 魔戒騎士とも関係のない生活を送ってくれ。

 俺は、お前のお陰で強くなれた気がする。
 お前には本当に感謝する。)

鋼牙は "別れ" をもう決めたことだ、と思った。
それがカオルにとって最善のことだ、と信じて疑いはしなかった。
だが…
だけど…

(これが最後…)

その瞬間、鋼牙とカオルのシルエットはひとつになった。
触れるだけのそっと甘く、そして悲しく苦いキス…

(おやすみ、カオル…)

カオルを見つめる鋼牙の眼は、どこまでも優しく、どこまでも穏やかで、
そして、どこまでも悲しげだった。



to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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