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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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最近の’お礼’

L'Oiseau bleu(4)

七夕の妄想を挟みまして…
はい、再開です!


っていうかぁ、前回で「おしまい」でも、よかったんですよねぇ~
実は、一度は「fin」と書いたのですが、公開する前に、

「あ~っ、書きたかったシーンを書いてないっ!」

と思い出しまして…
そういうわけで、「to be continued」に書き直しました。


ところが…
実際、続きを書いてみたら、そのシーンは1行で終わったという… (苦笑)


そして、思いもしないような展開に!
あ~、どこに向かっていくのだろう?
今、新たな迷走が始まる! (かも…)





::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

舞踏会が終わってからずっと、どこか切羽詰まった感じで、ピリピリしていた
レイは、シャロンと再会した翌日には、元のレイに戻っていました。
城のみんなが、レイのことを心配していましたが、笑顔の戻ったレイに、
みな、一様に安心しました。


ですが、若い女性たちだけは別でした。

なぜなら、その日を境に、レイがいそいそと庭へ向かう姿が見られるように
なったからです。
レイのお目当てげシャロンだということは、誰の目から見ても明らかでした。
レイに気のある少女たちは、みな、やきもきしました。

シャロンは口こそきけませんが、レイの隣にいても見劣りしないほど、
美しい娘だったのです。
手入れの行き届いた初夏の美しい庭をバックにしたふたりは、さながら
絵のような美しさでした。


「最近、レイはシャロンと仲がいいのね」
「そう言えば、舞踏会でも最後の曲をシャロンと踊ってたんじゃない?」
「なんだか妬けちゃうな」
「あ~あ、シャロンが羨ましい!」


ふたりが楽しそうに会話しているのを遠くから眺めながら、少女たちは
口々にそう言い、美しいカップルに溜め息をつきました。


一方のシャロンは、というと…

最初のうちは、シャロンもレイが毎日訪ねてきて、いろいろ話しかけて
くれるのを喜んでいました。
ところが、レイはあまりに人気があり過ぎて、段々戸惑いを感じるように
なりました。

シャロンは話ができないために、なんとなく同年代の女の子たちの輪からは
外れて、ひとりでいることが多い少女でした。
庭師である、祖父ノーマンの手伝いをして、一日中、花や木の世話をしている、
目立たない少女でした。
それが、今や、若い女性に絶大な人気を持つレイの意中の相手ということで、
一躍注目を浴びるようになったのです。

普段からおとなしく庭の隅にひっそりと暮らしているシャロンに対して、
あからさまな攻撃がされることはありませんでしたが、普段から人の目を
気にしているようなシャロンのような者にとっては、言葉にならないような
感情も敏感に感じ取れてしまいます。

毎日、輝くような笑顔を見せるレイに反比例するように、シャロンのほうは
段々と元気がなくなってきました。

「どうしたの、シャロン?
 なんだかこの頃元気がないようだけど…」

心配そうに尋ねるレイに、シャロンは弱々しい笑みを浮かべて首を横に
振るだけです。

シャロンは話すことはできませんが、聞くことはできたので、レイから
伝えたいことを伝えるのはたやすかったのです。
でも、シャロンからレイに伝えるのはそう簡単ではありませんでした。

レイはゴーザンから手話を習ってはシャロンに見せたり、シャロンからも
教わったりして、一生懸命勉強しました。

「えっと…
 ’笑う’ は、こうで…
 ’怒る’ は、こうでしょ? いや、こうだったか?」


また、最近笑顔が少なくなったシャロンに、なんとか笑ってもらいたいと思い、
シャロンのために、市場でおいしそうなフルーツやお菓子を買い求めたり
しました。

自分のためにレイがいろいろ尽くしてくれるのを、シャロンは嬉しく思う
反面、ひどく申し訳なくも感じてしまいました。




ある日、シャロンはレイに小さな紙切れを渡しました。

「これ、何?
 中、見てもいいの?」

わくわくした調子でレイはシャロンに尋ねました。
シャロンは真面目な顔でうなずきました。

カサカサ…

きれいに折りたたまれた紙を丁寧に広げていき、レイは、中の文字を
声を出して読み出しました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
レイへ

 いつも、わたしに優しくしてくれてありがとう。
 一生懸命、手話を覚えようとしてくれたり、おいしいお菓子を買ってきて
 くれたり、いろいろなお話を話してくれたり…
 わたしは、とっても楽しかったし、嬉しかったし、感謝しています。

 でも、わたしはレイに何もしてあげられません。
 それに、わたしといるよりも、もっと楽しいことや ’ため’ になることが
 レイにはあると思います。
 だから、レイにとって大事なことをしてください。

 わたしなら大丈夫です。
 レイが心配することは何もないです。
 どうか、レイのやりたいことをしてください。

                          シャロンより
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最初のうちは笑顔で読んでいたレイも、最後のほうは、ひどく険しい顔に
なりました。
声を出して読み終えた後、もう一度、最初から黙読しました。
そして、最後まで読み終えると、丁寧に元のようにきれいに折りたたみ
ました。

レイの怖い顔を見て、シャロンは首をすくめます。
レイがシャロンを見たとき、シャロンの手が動きました。

(ごめんなさい…)

それを見て、レイは少し怒ったような調子で、

「なんで、謝るんだよ」

と言いました。
シャロンは俯いたまま、レイのほうを見ることができませんでした。

「シャロン…」

レイの声が少し柔らかくなりました。
でも、シャロンは俯いたままです。

「あのね、シャロン。
 俺は、ちゃんとやりたいことも、やらなきゃいけないこともやってるよ。

 なんか無理をして、君のそばにいるように思ってるかもしれないけど、
 それは違うからね」

レイの言葉を聞いて、シャロンはおずおずと顔をあげました。
シャロンの瞳は潤んでいました。
その瞳を見たとき、レイの胸にきゅっと痛みが走ります。

レイは、シャロンの両肩に手を置いて、ゆっくりと言葉を続けます。

「俺は、シャロンと一緒にいたいからいるんだよ。
 シャロンのことをもっと知りたいし、シャロンに俺のことも知ってほしい。
 だから…」

そう言うと、レイはシャロンから渡された小さな紙切れを見て言いました。

「俺のことを気遣ってくれたんだろうけど、こんな哀しい気遣いはいらないよ。

 もし…
 もしも、こうして訪ねてくることが、君にとって苦痛なら…
 はっきりそう言ってくれて構わない。

 そのときは…」

レイは、切なそうに眉をひそめただけで、後の言葉を言いませんでした。
沈黙の時間がふたりの間を流れます。

やがて、レイはいつもどおりの笑顔を見せて言いました。

「今日は、もう帰るよ。
 じゃあね、シャロン」

そう言うと、レイはシャロンの前から立ち去ろうと、身体の向きを変えました。
が、すぐに振り返ると、シャロンに言いました。

「俺、君のこと、好きだよ」

まるで、挨拶でもするようにさらっと言うと、レイはその場をあとにしました。

その後ろ姿を、シャロンは哀しそうに見送りました。


ふたりから離れたところに立ち、ノーマンが心配そうに見守っています。
レイが去っていき、ひとり残されたシャロンに、ノーマンはそっと声を
かけました。

「シャロン、レイをあのまま帰してよかったのかい?」

シャロンはノーマンを振り返り、泣きだしそうな表情で、手で何かを
形作ると、自宅に向かって駆け出して行きました。

「わからない… か」

ノーマンは、シャロンの手話の内容を呟くと、沈痛な面持ちで大きな溜息を
つき、首を横に振りました。



to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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