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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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呪縛を解き放て(7)

これまた、結構、回を重ねてきましたね。
「めでたし、めでたし」になるまで、あと何回かな?
う~ん、書いてみないと、なんとも言えませんねぇ~

毎度のことですが、出たとこ勝負です!




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

老婦人が別室で食事をするために、女中のターリアに連れられて、
書斎を出ていきました。
寄り添うようにして廊下をゆっくりと歩いていくふたりの姿を、
書斎のドアのところで見送っていたゴーザンは、やがてドアを閉めると、
カオルンとレイのいるほうに戻ってきました。

王子は、とみると、無表情のまま、黙々と食事を続けていました。
ゴーザンはふたりに視線を戻すと、話し出しました。

「キッチンで食事を作っているとき、ターリアが手伝ってくれながら、
 わたくしにいろいろ教えてくれたのです…

 2年前、ここの主人が亡くなってからというもの、夫人はひどく
 ふさぎ込む毎日だったそうです。
 それからしばらく経ったある日、森に散歩に行った夫人が、帰って
 きたときには、人が変わってしまったようになってしまった、と。

 いつも穏やかでにこにこしていた夫人が、その日を境に、ほんの
 些細なことで激しく怒りだしたり、年齢のこともあって小食だった
 はずなのに、血の滴るようなステーキを毎日のように食べたり…」

「散歩に行ったときに何かがあったのね?」

カオルンがゴーザンに尋ねます。
ゴーザンは、大きくうなずきます。

「はい。

 その日から、夫人の指には、あの紫水晶の指環がはめられていた
 そうです」

「なるほどね。
 怪しいのは、あの指輪…
 それで、俺にあの指輪を斬れ、って言ったのか」

レイの言葉に、ゴーザンはまたもやうなずきました。

「そうです。

 この館には、ターリアの他にも何人か使用人がいたようなのですが、
 夫人の変わりようを気味悪がって、みな、辞めてしまったのだと
 言ってました。

 ターリアは、夫人をひとりにするのは忍びなく、最後まで辞めずに
 いたそうです」

「優しい人なんだね、ターリアさんって…」

しみじみと言うカオルンの言葉に、

「えぇ、彼女は優しいだけじゃありません。
 仕事に手抜きなどをしない真面目な方だと思いますし、手際も実に
 鮮やかなものでした!
 それに、立ち居振る舞いなども、完璧でございますとも!」

と、ゴーザンは意気揚々と話しました。
そんなゴーザンを見て、レイとカオルンは顔を見合わせてニヤリと
笑います。

「それに、眼鏡を取ったら結構美人なんじゃないかなぁ~」

レイがそう言うと、

「そうそう、肌とかもすっごくキレイだったしね!」

とカオルンも言います。
そうして、反応を確かめるように、ゴーザンの顔をじっと見ました。

ふたりの意味ありげな視線に気づき、ゴーザンはコホンとひとつ空咳を
しました。

「わたくしは、ああいう素晴らしい人材を、こんな森の中に埋もれさせて
 おくのはもったいないと思っただけですよ」

と、言い訳めいたことをモゴモゴと言ってから、

「ま、そのことは、王子が元に戻ったときにご相談することとして…

 それにしても、あの指輪を斬っても、王子にかけられた魔法は解けません
 でしたな。
 あとは、 ’心’ を自由にすればいいだけですか」

ゴーザンがもっともらしい顔をしてそう言いました。
それを受けて、レイは、

「そうだね。
 それについては、多分、カオルンに任せるのがいいんじゃないかな?」

と言いました。そして、

「俺は、ちょっとゴーテのことが気になっていてね。
 探しに行こうと思うんだ。
 いいかな?」

と尋ねました。
そう言えば、ゴーテも王子と一緒に森に行ったきり帰っていないのです。
この館のどこかにいるのか、森にいるのか、そのことをレイは心配して
いました。

「そうですね。

 わたくしも、夫人やターリアと今後のことを話しておきたいと思います。
 彼女たちがどうしたいのか…
 ご婦人方のお力になれることがあるなら、お役に立ちたいですからね。

 …というわけで、王子のことは頼めますかな、カオルン」

ゴーザンはそう言って、カオルンの反応を見ました。

「えっ、ちょっと待ってよ。
 あたしにそんなことできっこないよぉ」

カオルンは慌ててふたりに訴えるのですが、

「大丈夫だろ?
 キスでもなんでもすれば、きっと王子様も元通りなんじゃないの?
 古今東西、魔法なんて、そんなもんでしょ?」

「そうですとも。
 愛があれば、なんでも解決できます!
 カオルン、それじゃあ頼みましたよ」

と、ふたりは口々に言って、書斎をさっさと出ていってしまいました。

「そんなぁ~~~」

カオルンは情けない声をあげましたが、それを聞いていたのは、心が
閉ざされた王子だけでした。

ひとり残されたカオルンは、チラッと王子のほうを見ました。
食事をすっかり終えた王子は、生気のない目で座ったままピクリとも
しませんでした。

「う~~~ん」

王子を見ながら考えていたカオルンですが、

(とにかく、出来ることをやってみよう!)

と思い、王子のそばに近寄りました。
王子は、近づいてきたカオルンのほうをゆっくりと見ましたが、表情は
変わりませんでした。
その瞳に、なんの感情も浮かんでいません。

「王子…」

(本当にあたしのことが判らないの?)

そう思うとカオルンは寂しくて悲しくて泣きそうな気持ちになりました。
それでも、気持ちを奮い立たせて、おずおずと王子の頬に手を伸ばし、
触れてみました。
触れた瞬間、王子の眼差しが少し揺れた気がしました。

(元の王子に戻って!)

カオルンは、王子の唇に自分の唇を恐る恐る近づけました。
自分からこんなふうにキスをするのは初めてでした。
いつだって、王子から求められてキスしていたのに…

そっと離れ、至近距離で見つめ合います。

王子の瞳にカオルンが映っているのは見えますが、王子にはカオルンの
ことがちゃんと見えているのかどうか、はっきりしません。


もう一度、キスをします。
今度は、少し、長く、深く…


でも、結果は同じでした。

(どうして?
 あたしのキスじゃ駄目なの?
 お願い! 魔法よ解けて!)

思わず、王子の頭を抱き寄せてしまいましたが、それでも、王子は
されるがまま、ぼんやりと前を見ているだけです。

カオルンの目から涙が溢れます。
カオルンの頬を伝って顎の先から、王子の額にポタポタこぼれましたが、
それでも何も起こりません。

カオルンはくじけそうになりましたが、それでも自分を奮い立たせて、
王子のそばでひざまずき、ふたりが合った頃の話をしてみたり、
愛の言葉を囁いたり、考えられることはいろいろやってみました。
でも、やっぱり、どれも効果はありませんでした。

このまま、王子を元に戻すことはできないのでしょうか?


to be continued(8へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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