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きんのまなざし ぎんのささやき

呪縛を解き放て(4)

よいこのみんなにお話をする約束なのに、眠気に勝てず、うとうと…

はっ! いけないっ!
また寝てしまうところだった…
今夜はちゃんとお話の続きをしないとね!

えっと、どこまでお話しましたかねぇ?




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外観の印象とは打って変わって、館の中はとても明るく、清潔な感じが
しました。
そう大きな屋敷ではないものの、

(さすがに使用人1人ではなかなか掃除も行き届かないだろう…)

と思っていたゴーザンは、少なからず驚きました。
この人は
とても勤勉でよくできた人だ… と、奥へといざなう女中の
小柄な背中を見ながら感嘆しました。

やがて、立派なドアの前で女中は立ち止まりました。

「こちらです」

3人のほうを振り返ってそう言うと、女中はドアを開けました。

「奥様、お連れいたしました」

中にいるであろう主人に声を掛けると、ドアの前からさがって
ゴーザンたちに道を開けます。

「失礼いたします」

そう言ってゴーザンが先に入り、次いでカオルン、最後にレイが部屋に
入りました。
部屋はこじんまりとした感じで、とても居心地のいい雰囲気を覚えます。

「まぁ、よくいらっしゃいました。
 さあ、どうぞ、こちらへ…」

そう言ってソファーから立ち上がり、両手を広げて笑顔で迎えてくれたのは、
頭髪こそ真っ白でひどく痩せていましたが、血色も肌艶もよい老婦人でした。
だいぶん年を取っているようですが、彼女からは、実際の年齢よりずっと
若々しい印象を受けます。

一同を代表して、ゴーザンがその夫人に挨拶をします。

「突然の来訪をお許しください」

夫人は、どうぞ掛けて、というふうに、手でゴーザンたちをソファーに
招きました。
ゴーザンとカオルンは、招きに応じて座りましたが、レイは、

「僕はいいです。
 どうぞ、気になさらないで」

と軽い調子で断り、ゴーザンたちの座っているソファーのそばに立って
いました。
この部屋には、痩せっぽちの老婦人と小柄な中年女中しかおらず、
なんの危険も感じませんが、それでも、レイはそれとなく部屋の様子を
注意深く観察し、いつでも剣が抜けるように神経を研ぎ澄ましていました。

老婦人は、そんなレイに気を留めず、目の前のゴーザンに尋ねます。

「それで…
 誰か人を探している、ということでしたわね?」

「はい。
 昨日、この森に出掛けた青年が、夜になっても帰らなかったのです。
 そこで、こうして探しに来たわけなんですが…」

ゴーザンは用心をして、その青年が王子であることは伏せておき、話を
続けました。

「ひょっとしたら、こちらのお屋敷にご厄介になっているか、あるいは、
 どなたかがその青年を森の中で見たりしてはいないかと思いまして。

 こちらの方は…」

と、案内してくれた女中を見て、

「…知らないとのことでしたが、奥様のほうで何かご存じのことがあれば、
 教えていただけませんか?
 どんな小さなことでも構わないのですが…」

と尋ねました。
老婦人は、途中何度もうなずきながらゴーザンの話を聞いていました。

「そうですわねぇ…
 昨日とは言わず、ここ何年も、この家を訪ねる者はおりませんのよ。
 そうよね、ターリア?」

老婦人が女中に念を押します。

「はい、奥様。
 誰もお見えになっておりません」

女中の答えに、老婦人はうなずき、ゴーザンたちに視線を戻しました。

「ターリアが知らないようでしたら、私は何もわかりませんわ。
 ご覧のようにこの家にはわたくしとこの子のふたりしかおりません。
 主人を2年前に亡くしてからというもの、出歩くこともなくなり、今では
 散歩すらいたしませんの。
 日がな一日こうしてこの部屋にいるだけ…

 あなたたちのようなお客様は、ほんとに何年振りでしょう!」

そう言って顔を輝かせた老婦人でしたが、すぐに顔を曇らせました。

「あら、やだ。 わたくしったら…
 あなた方の探している人について、何もわからないと言うのに。
 ごめんなさいね、不謹慎でしたわ」

「いえ…

 そうですか、何もご覧になっていないのですね。
 それでは、我々は別のところを探します。
 お寛ぎのところ、お邪魔して申し訳ありませんでした」

そう言って、ゴーザンは腰を上げ、それに合わせてカオルンも慌てて
立ち上がります。

「お役に立てずごめんなさいね。
 その方が早く見つかることをお祈りしますわ」

老婦人はそう言って見送りました。

老婦人に辞去の挨拶をして部屋を出た3人は、行方不明の王子の手掛かりが
なくなってしまったとガッカリした様子で、玄関へと向かいました。
来たときと同様、女中を先頭に廊下を歩き、ある部屋の前を通り過ぎようと
したときです。
その部屋の中から、聞き覚えのある声が聞こえてきました。

『おーい! 誰か!
 助けてくれー!』

3人は立ち止まり、互いに顔を見合わせました。

「「バルザだ!」」

そうです。
王子の左手にいつも嵌められている髑髏の形をした指環、バルザ!
サエジーマ国の王家に代々受け継がれている指輪で、それを持つ者を助け、
導く不思議な魔法の指環です。
そのバルザの声が、はっきりと聞こえたのでした。

王子がこの中にいる!
誰もがそう思い、レイはその部屋を開けようとドアノブに手を掛けました。

すると、女中がそれを塞ぐように前に立ちはだかります。

「何をするんですか!
 勝手に開けないでくださいませ!」

それを見たレイは、

「この中に王子がいるかもしれないんだ。
 頼むよ、大人しく、どいてくれないかなぁ?
 女性に手荒なことはしたくないんでね…」

と頼みます。
それでも、頑としてその部屋の前から退こうとしない女中に、レイが
困った顔をし、ゴーザンがドアを開けてくれるよう説得していると、

「何事です?」

と後ろから声がかかりました。
あの老婦人でした。

「奥様。
 この方たちが勝手にこの部屋に入ろうとされたのです」

女中がそう説明をしたので、ゴーザンも慌てて、

「こちらの部屋から、助けを呼ぶ声が聞こえてきたのです。
 奥様、ここを開けていただくことはできませんか?」

と説明し、頼みました。
老婦人は少しも慌てず、少し考えてから言いました。

「いいでしょう。
 ターリア、開けて差し上げなさい」

「奥様!」

色めき立つ女中に対して、

「いいから。
 早く開けなさい」

と、対照的なくらい冷ややかに、
老婦人は言いました。

「…はい、奥様」

渋々返事をすると、女中はドアノブを回し、ゆっくりと押し開きました。
中からは少し湿っぽく、埃っぽい空気が流れてきます。
その部屋に、レイを先頭にして、3人が入りました。

そこは書斎のようでした。
壁一面に作りつけられた本棚には、たくさんの書籍が並んでいます。
本棚に収まり切れない書籍は床にも積まれ、山を作っています。

ですが、そんなことよりも何よりも3人を驚かせたのは、部屋の中央に
ドンと置かれたモノでした。



to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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