きんのまなざし　ぎんのささやき

鋼牙の馬鹿ぁ～！
なんで何にも言わなかったんだよぉ～！
…でも、そこが鋼牙の鋼牙たるところなのですね…（泣）

最初に言ってしまうのもナンですが、居心地の悪い終わり方です。 
相（あい）済まぬ…

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自分がホラーを狩るためのエサだと知ったカオルが、鋼牙の前から
去っていった。

鋼牙は自分の周りの温度が急激に下がったように感じていた。

カオルがいなくなってしまった空間を、彼女を探すように見渡した。

カオルの落としていったスケッチブックを見つけ、拾い上げる。
愛おしむようにスケッチブックの表紙を撫でてみる。
カオルに対して、したくてもできなかった行為の代わりとして…

（カオル…）

鋼牙はスケッチブックを開いた。
そして、月明かりを頼りに、カオルのスケッチを1枚1枚眺めていく。
見覚えのある風景や静物などの他に、
ゴンザがいる…
ザルバがいる…
そして、鋼牙が…
カオルのまなざしが捉（とら）えた鋼牙がいた…

数々のスケッチから、カオルが鋼牙をまっすぐに見つめるまなざしを
感じ、鋼牙はまた、自己嫌悪の波に身を沈めていった。

（残酷な運命を知るよりは知らずにいたほうがいい…
　そう思ってカオルのために何も言わず、沈黙を守ったつもりだったが、
　それは単に、俺に向けるカオルの眼が変わってしまうのを恐れての
　ことだったかもしれない。

　恐れる…？
　俺が…　？

　これまでも、手ごわいホラーを相手に恐怖を覚えたことはある。
　だが、その恐怖を敵愾心（てきがいしん）に換え、一歩も引かずに
　戦ってきたつもりだ。

　だが…
　今の俺は…）

鋼牙は混乱を覚え、建物の表へと出た。
外気を吸うことで少しでも冷静さを取り戻そうとして。
まっすぐに歩くことだけに集中し、頭を空っぽにして歩いた。

だが、

（カオル…）

その名が頭をよぎった。
途端に歩みが止まってしまう。
手に持っていたスケッチブックに視線を落とす。

「…」

先程から沈黙を守っていたザルバが堪（たま）らず声をかける。

『あきらめろ、鋼牙。
　自分で蒔（ま）いた種だろ。』

（あぁ、そうさ。
　そんなことは百も承知だっ）

改めて真実を告げる　"友"　への恨めしさと、何より自分への怒りに
堪（こら）えきれず、スケッチブックを投げつけるように振り下ろし、
鋼牙は足早に歩き出した。

番犬所への報告もそこそこに、鋼牙は屋敷に戻った。

「あっ、鋼牙様、おかえりなさ…」

ゴンザの出迎えの言葉も聞かず、まっすぐに屋敷内にある修行の
間に向かう。
赤鞘から刀身を抜き放ち、闇雲に振り回す。

「うわぁぁぁ
　おおぉっ」

浅ましき過去の自分を切るがごとく、剣を振りまわし、
心のモヤモヤを吐き出すがごとく吠（ほ）えながら。

心の乱れそのままに、重心は定まらず、太刀筋は滅茶苦茶だった。
それでも構わず、剣を振り下ろし、横に撫で払い、切り上げ、また払う。
ひとしきり感情を爆発させた後、下ろした剣を引き寄せてじっと見る。

（許されようとは思わんっ
　だが…　俺は、おまえを救うと決めたのだ。
　何が何でも守ると…！
　それしか、俺にはできん。）

鋼牙は悲しい決意で、やりきれない想いに無理やり蓋（ふた）をした。



fin
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グズグズでございます～

TVシリーズ第1弾の17話「水槽」直後から、18話「界符」の冒頭までを
鋼牙視点で妄想しました。
妄想というより、映像をそのまま表現したところもあるのですが…

しかも、この後すぐ、ゴンザが阿門法師が殺されたことを告げるため、
鋼牙の思考はなし崩し的に別の方向に飛んじゃうんで、スッキリ
終わらせることは不可能で…

とにかく消化不良的に終わらせてしまい、すいませ～んっ！！

[13回]