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林檎騒動(1)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
カオルは自分の手元に最大限の集中力を注いでいた。彼女の表情は真剣そのものだ。
「…」
眉と眉との間には深いしわが刻まれ、額にはうっすらと汗までかいている。
息を詰まるような緊張の時間が過ぎていく。
「出来た~」
そう言ってふうっと大きく息を吐いたカオルは、ニッコリ笑った。
そして、手の中にある作品をそっと置いて、出来上がった作品をまじまじと眺める。
「うん! これなら、あいつもちょっとはあたしのこと見直すはず!」
満足そうなカオルは、ソレを仰々しく押し頂くようにしてリビングへと向かう…
「はーい、お待たせしましたぁー」
リビングに入ると同時に、上機嫌なカオルは鋼牙の元に一直線に向かった。
ひとり掛けのソファにゆったりと座る鋼牙は、とてもリラックスしていたように見えたが、カオルの登場で一瞬にして顔を曇らせた。
なんだ、と言わんばかりの不機嫌そうな目がこちらに向けられたが、すぐに、何事もなかったかのように目をそらされた。
鋼牙のその態度に、一瞬カチンときたが、カオルは
(我慢、我慢…)
と自分に言い聞かせて、笑顔を崩さずに鋼牙の前に立った。
「ねえ、これも食べてみて?」
カオルは、目の前のテーブルの上に、持ってきた皿をコトリと置いた。
皿の上には、定番のウサギの形に切った林檎のほかに、市松模様や縞模様に赤い皮を残してカットされた林檎が綺麗に並べられて乗っていた。
「…」
無言のままそれらを眺めていた鋼牙だったが、手を伸ばして先が二つに割れた小さな金のフォークをつかむと、林檎に突き刺して口へと運んだ。
その鋼牙の一連の動作を見守っていたカオルは、目に見えて落胆の色を浮かべる。
鋼牙が食べたのは、カオルの持ってきた皿のものではなく、その隣に置かれた、皿のものだったのだ。
それは、カオルのよりも少し先に運ばれていたもので、ゴンザがカットしたものだった。
シャリ… シャリ…
と涼やかな音をたてて食べ進む彼に、カオルは不満そうに唇を尖らす。
こんなことをするのは子どもじみているとは思ったが、ゴンザのほうの皿を脇に押しやった。
そして、自分の皿をズイッと鋼牙の前に出す。
最後の一口を食べ終わると、チリリンという軽やかな音が響いて、鋼牙はフォールを皿に戻した。
そして、瞑想でもするかのように静かに目を閉じた。
「…」
それは、なんとなく気まずい時間だったが、それも長くは続かない。カオルがすぐに口を開いたからだ。
「ちょっとぉ!」
なじるような強い口調。
「林檎、食べなさいよぉ!」
腕を組んで鋼牙を見下ろしながら、カオルが言った。
「なぜ、おまえにそんなことを言われねばならんのだ」
目も開けずに平然と答える鋼牙。
「なぜって…
あんたのためにせっかく切ってきたんだから、あたしのも食べるのが礼儀ってもんでしょうがっ!」
鼻息も荒く、そう言うカオル。
すると、鋼牙は、ぱちりと目を開けると言った。
「別に剥いてくれと俺が頼んだわけではない。俺にはゴンザのがある。これで十分だ!」
カオルほどではないが、こちらもかなりイライラしているようだ。
「なによ、人が親切にしてあげようっていうのに!
そんなんじゃ、今に誰もあんたに優しくしてくれる人なんていなくなるんだからっ!」
「ああ、構わないね!
親切にしてもらう必要なんて、俺にはないからな!」
座っている鋼牙の頭の上からカオルの尖った声が降り注ぐことに嫌気が差して、鋼牙はすっくと立ち上がっていた。
カオルより20cm以上背の高い鋼牙がギロリと睨むが、カオルはそんなことでは怯(ひる)まない。
「いいじゃない、林檎のひとつやふたつ!」
「だ・か・ら! なぜ俺が食わねばならんのだ!」
ふたりの大声に驚いたゴンザがリビングへとやってきていたが、迂闊に声をかけることもできずにオロオロするばかりだった。
そんなゴンザなど全く視界に入らないまま睨み続けているふたりだったが、やがて痺れを切らした鋼牙が、ぷいっと部屋を出ていこうとした。
「ちょっと!
待ちなさいよぉ、逃げる気ぃっ?」
小走りに後を追いかけるカオルに、
「俺は忙しいんだ!
おまえなんかの相手をしてる時間などない!」
と言い残すと、鋼牙はバタンと盛大にドアを閉めてリビングを出ていった。
目の前でドアを閉められたカオルは、腰に手を当てると、鼻をフンと鳴らした。
そして、ドアの向こうに消えていった鋼牙に対して、憎々し気に、イーッと歯を剥いてみせた。
to be continued(2へ)
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カオルは自分の手元に最大限の集中力を注いでいた。彼女の表情は真剣そのものだ。
「…」
眉と眉との間には深いしわが刻まれ、額にはうっすらと汗までかいている。
息を詰まるような緊張の時間が過ぎていく。
「出来た~」
そう言ってふうっと大きく息を吐いたカオルは、ニッコリ笑った。
そして、手の中にある作品をそっと置いて、出来上がった作品をまじまじと眺める。
「うん! これなら、あいつもちょっとはあたしのこと見直すはず!」
満足そうなカオルは、ソレを仰々しく押し頂くようにしてリビングへと向かう…
「はーい、お待たせしましたぁー」
リビングに入ると同時に、上機嫌なカオルは鋼牙の元に一直線に向かった。
ひとり掛けのソファにゆったりと座る鋼牙は、とてもリラックスしていたように見えたが、カオルの登場で一瞬にして顔を曇らせた。
なんだ、と言わんばかりの不機嫌そうな目がこちらに向けられたが、すぐに、何事もなかったかのように目をそらされた。
鋼牙のその態度に、一瞬カチンときたが、カオルは
(我慢、我慢…)
と自分に言い聞かせて、笑顔を崩さずに鋼牙の前に立った。
「ねえ、これも食べてみて?」
カオルは、目の前のテーブルの上に、持ってきた皿をコトリと置いた。
皿の上には、定番のウサギの形に切った林檎のほかに、市松模様や縞模様に赤い皮を残してカットされた林檎が綺麗に並べられて乗っていた。
「…」
無言のままそれらを眺めていた鋼牙だったが、手を伸ばして先が二つに割れた小さな金のフォークをつかむと、林檎に突き刺して口へと運んだ。
その鋼牙の一連の動作を見守っていたカオルは、目に見えて落胆の色を浮かべる。
鋼牙が食べたのは、カオルの持ってきた皿のものではなく、その隣に置かれた、皿のものだったのだ。
それは、カオルのよりも少し先に運ばれていたもので、ゴンザがカットしたものだった。
シャリ… シャリ…
と涼やかな音をたてて食べ進む彼に、カオルは不満そうに唇を尖らす。
こんなことをするのは子どもじみているとは思ったが、ゴンザのほうの皿を脇に押しやった。
そして、自分の皿をズイッと鋼牙の前に出す。
最後の一口を食べ終わると、チリリンという軽やかな音が響いて、鋼牙はフォールを皿に戻した。
そして、瞑想でもするかのように静かに目を閉じた。
「…」
それは、なんとなく気まずい時間だったが、それも長くは続かない。カオルがすぐに口を開いたからだ。
「ちょっとぉ!」
なじるような強い口調。
「林檎、食べなさいよぉ!」
腕を組んで鋼牙を見下ろしながら、カオルが言った。
「なぜ、おまえにそんなことを言われねばならんのだ」
目も開けずに平然と答える鋼牙。
「なぜって…
あんたのためにせっかく切ってきたんだから、あたしのも食べるのが礼儀ってもんでしょうがっ!」
鼻息も荒く、そう言うカオル。
すると、鋼牙は、ぱちりと目を開けると言った。
「別に剥いてくれと俺が頼んだわけではない。俺にはゴンザのがある。これで十分だ!」
カオルほどではないが、こちらもかなりイライラしているようだ。
「なによ、人が親切にしてあげようっていうのに!
そんなんじゃ、今に誰もあんたに優しくしてくれる人なんていなくなるんだからっ!」
「ああ、構わないね!
親切にしてもらう必要なんて、俺にはないからな!」
座っている鋼牙の頭の上からカオルの尖った声が降り注ぐことに嫌気が差して、鋼牙はすっくと立ち上がっていた。
カオルより20cm以上背の高い鋼牙がギロリと睨むが、カオルはそんなことでは怯(ひる)まない。
「いいじゃない、林檎のひとつやふたつ!」
「だ・か・ら! なぜ俺が食わねばならんのだ!」
ふたりの大声に驚いたゴンザがリビングへとやってきていたが、迂闊に声をかけることもできずにオロオロするばかりだった。
そんなゴンザなど全く視界に入らないまま睨み続けているふたりだったが、やがて痺れを切らした鋼牙が、ぷいっと部屋を出ていこうとした。
「ちょっと!
待ちなさいよぉ、逃げる気ぃっ?」
小走りに後を追いかけるカオルに、
「俺は忙しいんだ!
おまえなんかの相手をしてる時間などない!」
と言い残すと、鋼牙はバタンと盛大にドアを閉めてリビングを出ていった。
目の前でドアを閉められたカオルは、腰に手を当てると、鼻をフンと鳴らした。
そして、ドアの向こうに消えていった鋼牙に対して、憎々し気に、イーッと歯を剥いてみせた。
to be continued(2へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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