きんのまなざし ぎんのささやき
牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです
最近の’妄想’
2025/12/31 ・・・
ようこそ
2024/01/22 ・・・
勝った! 帰ろう! いや、その前に…
2023/12/24 ・・・
金牙新年!
2023/12/03 ・・・
冬ごもり大作戦(2)
2023/11/19 ・・・
冬ごもり大作戦(1)
2023/10/15 ・・・
とある秋の日
2023/08/06 ・・・
いちばんの存在(6)
2023/07/30 ・・・
いちばんの存在(5)
2023/07/09 ・・・
いちばんの存在(4)
2023/07/02 ・・・
いちばんの存在(3)
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
彼女からのプロポーズ(4)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ヒヨリは俯くしかなかった。
そんなヒヨリを見る鋼牙の表情は穏やかだ。
よく考えてみろとばかりに見守る鋼牙には、どこか父性のようなものが窺(うかが)えるようにも見えた。
俯きながらヒヨリは考えた。
確かに、自分は子を育てるということ、子を産むということ、そして、その子を身に宿すための行為、それらすべてを軽く考えていたのかもしれない。
魔界騎士の父を亡くして苦労し通しの母のために、という想いが強過ぎて、強い魔界騎士と交われさえすれば、すべてのことはうまくいくと安易に考えていたのだということを突きつけられた気がした。
(恥ずかしい…)
ヒヨリは唇をきゅっと噛みしめ、手をぎゅっと握りしめた。
すると…
どこか張り詰めた状況には不釣り合いな
『ヒヨリぃ、まあ、そんなに落ち込むこたぁないぜ?』
という、どこか間の抜けた声が聞こえてきた。ザルバだ。
『こいつは確かに強い魔界騎士だ。
鋼牙に目をつけたところなんざぁ、おまえさんの目は決して間違っちゃいないが…
こいつの隣には、こいつの隣にふさわしいそりゃあもう肝の座った女がもういるんだ。
それになぁ…』
そう言ってザルバは意味ありげに鋼牙のことをちらっと見てから声を潜(ひそ)ませて、
『いくら強いからって、こんなおっさん魔界騎士じゃなくてもいいんじゃないか?』
と言ってニヤッと笑った。
それを聞いた鋼牙が少しむっとして、咎(とが)めようと口を開きかけたが、それよりも先に、
『ヒヨリ』
と少し改まった口調でザルバが言うので、鋼牙は何も言わずに口を閉じた。
『鋼牙には鋼牙にふさわしい相手がいるように、おまえにもおまえにふさわしい相手がいるはずだ。
おまえがその相手に望む条件が、強い魔界騎士であることだというのなら、その相手にふさわしい女になれよ?』
カチリとウインクしてみせる魔導輪に、そんなことを考えもしていなかったヒヨリは目をしばたかせていたが、すぐにザルバの言葉がヒヨリの心にすとんと落ちてきた。
(…そっか …そうよね。
都合のいい相手に頼るだけじゃダメなんだ。うん、ダメだよね、
よし、私、強くなろう!
そうだよ、うん、そう!)
魔界騎士ならだれでもいいわけじゃない。
ヒヨリが望むのは ’強い魔界騎士’ だ。
そんな魔界騎士の相手なら、ちゃんと自分も強くならなければいけない。
(うん、がんばる!
私、努力って嫌いじゃないもん!)
いつの間にかさっきまで落ち込んでいた気持ちが、グンと上に向いた。
それを反映するように、ヒヨリの視線も上を向き、両手を持ち上げぐいっと握りこぶしに力を込める。
そのわかりやすい反応に、ザルバは失笑する。
『くっくっく… おまえはほんとわかりやすいって言うか、素直って言うか…
ま、目標ができてすっきりしたろ?
おまえ、嫌いじゃなさそうだもんな、努力するの』
今まさに自分が考えていたことをザルバに言われて、ヒヨリはぎょっとする。
「えっ? えっ? なんでわかったの?」
『は?』
「いや、私が努力するの嫌いじゃないって、なんでわかったんだろうって?」
ヒヨリは真剣な面持ちでザルバに訊くのだった。
『はっ、そんなこと…』
ザルバは思わず鼻で笑う。
『おまえの表情から駄々洩れしてるぞ?
あー、おまえ、あれだな。強くなるのもいいが、ポーカーフェイスってもんも練習しとけよ?』
「うっ、それ、私の苦手なやつ…」
『まあ、そうだろうな。そういうところ、まだまだお子ちゃまってことだろ?』
「なっ! それ、失礼過ぎるぅぅぅ」
どこまでも素直に、唇を尖らせて見せるヒヨリに対して、グイドは慌てて間に入る。
「ヒヨリ!
失礼なのはおまえもおんなじだから!」
「んもう、グイドまで…
私、そんなに失礼なことしてないつもりだけど」
少し不服そうにさらっとそんなことを言うヒヨリに、グイドは
「おまえなぁ…」
と脱力しかけて、グッとなんとか堪(こら)える。
「この人が誰かわかって言ってんの?」
より一層声を潜めてヒヨリに問いかけると、
「誰って… えっと、この辺りでは見かけないから、どこかよその管轄の魔界騎士、でしょ?」
それを聞いてグイドは今度は本当に首をうなだれた。
半ば予期していたものの、こいつは彼の正体に気付いてないことがちょっと信じられなかった。
(鎧も召喚しないで、あのホラーを斬ってしまうほどの実力だぞ?
それに、白いコートに、赤鞘の剣。ザルバと言う名の魔導輪。
そして、名前は鋼牙…)
ここまで揃ったら、彼が誰なのかは自(おの)ずとわかってくる。
そんな彼の正体に気付きもしないで、結婚だの妊娠だの好き勝手に迫ってしまうヒヨリに、グイドは改めて頭痛を覚える。
「ヒヨリ… この人はなぁ、冴じ…」
グイドが鋼牙の正体を教えようとしたが、鋼牙は
「グイド」
と呼びかけて、首を小さく横に振って見せた。
グイドはそれを見て鋼牙に対して何かを言いたげに口を開きかけたが、黙って頷いて見せた。
そんな様子にヒヨリは訝(いぶか)し気に
「グイド?」
と呼んでみたが、
「…なんでもない。
とにかく俺たち助けてもらったんだから、ヒヨリは好き勝手なことを言って困らせちゃだめだよ」
とはぐらかされた。
いつもだったら、えらそうに言わないで、と反発するところだったが、さすがにヒヨリも自覚があるので、うん、と素直に聞き入れた。
その後、ヒヨリとグイドは鋼牙を見送るため、魔戒道の入り口近くまで足を運んだ。
もうすぐそこ、というところまで来ると、鋼牙は足を止めてふたりを振り返った。
「ここまででいい。
グイド、悪いが報告は任せた」
「はい、僕から番犬所のほうにしておきます」
そう応えると。グイドは居住まいを正した。
「鋼牙さん、今回は助けてくださり、ありがとうございました」
そう言って頭を下げるグイドに倣って、ヒヨリも彼の隣りで頭を下げる。
『じゃあな、ふたりとも…
またどこかで会えるかもしれんな。
そのときまでに強くなっとけよ?』
相変わらずの軽い口調でザルバが言うと、それまで少し難しい顔をしていたヒヨリがぱあっと表情を明るくした。
「また会える? そうよね! また会えるかもしれないよね!
鋼牙さん! 私、頑張ります。頑張って強くなりますから!」
希望に目を輝かせるヒヨリに鋼牙は少々たじろいだが、
「あ、ああ」
となんとか答え、
「では」
と白いコートの裾を翻して、魔戒道へと消えていった。
後に残されたグイドは頭を下げていたが、
「あ~あ、行っちゃった…」
というヒヨリの声に頭を上げて彼女を見た。
そんなグイドの視線に
「ちょっとぐらい名残惜しそうにしてくれてもいいのに、一回も振り返らずに行っちゃった」
と残念そうにヒヨリは言うのだった。
そして、
「また会えるかなぁ」
と、鋼牙の消えた場所を見ながら言うので、グイドは
「…会えるといいな」
とだけ言った。
きっと、グイドは驚くだろう。
このとき、ヒヨリが何を思っていたかを知ったら…
(次に会うときまでに、あなたの隣りにいても恥ずかしくないくらい強くなってみせますよ! 鋼牙さん!)
同じ頃…
魔戒道で帰りを急ぐ鋼牙は、不意に感じた寒気のためにブルッと身震いした。
『どうした、鋼牙?』
「…いや、なんでもない」
fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
た、楽しんでいただけたでしょうか?
ちょっと不思議ちゃんな魔戒法師の女の子。
最後の最後まで悩んだことを告白します。
鋼牙さんがヒヨリに対して「おまえ」と呼ぶのか「君」と呼ぶのか、ということ… デス。
なんとなく相手を「君」と呼ぶ鋼牙さんは想像つかないんですが、彼が「おまえ」と呼ぶのは本当に信頼している人なのではないかと思って、悩みつつも「君」で通してしまいました。
読んでいる方はどうなんでしょう?
その辺、違和感を持って読まれてましたか?
あまり引っ掛かりもなく読めたならいいんですけど、実はいまだに悩ましいなと思っているんですよねぇ…
(書き終えたというのに、ね)
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
ご覧になるにあたって
年代別もくじ
カテゴリー別
[12/31]
[01/22]
[12/24]
[12/03]
[11/19]
[10/15]
[08/06]
[07/30]
[07/09]
[07/02]
[12/31]
[01/22]
[12/24]
[12/03]
[11/19]
[10/15]
[08/06]
[07/30]
[07/09]
[07/02]
こちらから selfish 宛にメールが送れます。
(メールアドレス欄は入力しなくてもOK!)
(メールアドレス欄は入力しなくてもOK!)
PR