きんのまなざし ぎんのささやき
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言わず語らず(1)
まさかこのようなことが起こるとは少しも思っていませんでした。
どうしてそんなふうに逝ってしまったのでしょう。
悲しくて、悔しくて、やっぱり悲しくて…
じわじわと… ほんとにじわじわと泣けてきます。
追悼の意味で、月虹ノ旅人を見返しました。
ああ、バデル… 父よ…
どうしてそんなふうに逝ってしまったのでしょう。
悲しくて、悔しくて、やっぱり悲しくて…
じわじわと… ほんとにじわじわと泣けてきます。
追悼の意味で、月虹ノ旅人を見返しました。
ああ、バデル… 父よ…
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青い空に突如現れた時空の裂け目がカオルを飲み込んでから1週間余り。
鋼牙は考えうるすべての伝手を頼りにカオルの行方を追った。
元老院も情報収集に躍起になったが、今現在分かっていることといえば、同様な例があちこちで発生しているということと、その現象がほぼ同時刻に起こっていること、そして、いまだ誰も帰ってきたものはいないということだけだった。
鋼牙もただ待つだけではない。
冴島家の所有する膨大な書物を漁(あさ)り、類似の前例がないか、少しでも関連しそうなホラーがいないかを文字通り血眼になって探した。
もちろん魔界騎士としての務めを蔑(ないがし)ろにすることなどない。
昼は自分自身で課した鍛錬に励み、ゲートになりそうなオブジェの封印も怠らず、夜は指令を果たしながら、である。
それでなくともなかなかに過酷な魔界騎士の日常でカオルの捜索をも続けることは、鋼牙の休息の時間を削り、精神をすり減らしていくのは当然のことだった。
しんと静まる深夜の書斎。
書斎机に向かいながら古びた分厚い書物のページを、その視線で穴が開きそうなほどに読み進める鋼牙は、目の下に隈(くま)を作り、わずかにやつれたのかスタンドの明かりが作る以上の影が頬に黒く落ちていた。
やがて、必死に走らせていた視線が最後のページをたどり終えると、鋼牙は重い息を吐き、ぱたんと書物を閉じて書斎机の上にややぞんざいに投げ出した。
そして、脱力したように椅子の背中に身体を預けて、目をつむると指で眉間をつまむようにして揉んだ。
『これにも何も載ってなかったか…』
机の上に置かれた台座に据えられたザルバの沈んだ声に、ああ、と答える気力もないかのように鋼牙は黙ったままだった。
いや、口を開けば、カオル救出に何の糸口も見つけられない苛立ちを押さえつけなくなるのを感じてもいた。
わずかに頭痛も覚えながら、このまま椅子に沈み込んで眠ってしまいたいと思いつつ、鋼牙は意思の力で瞼を開き、椅子から背を起こしてまた別の書物に手を伸ばす。
『おいおい鋼牙。今夜はもう休んだらどうなんだ?
無茶をすると自分の首を絞めるぞ?』
ザルバは万全でない状態でホラーに対峙したときのことを心配してそう言って制するが、鋼牙は
「わかっている。
今夜はこれでやめにするから」
と手に取った書物をちょいと上げてみせてるのだった。
恐らく、それを読み終える頃には空が白み始めていることになるだろう。
ザルバは、はぁ、と大きくため息をつく。
(こいつぁ、何を言っても聞く耳持たんだろうなぁ)
そう思いながらもそれでも言ってやりたくなってしまう。
『自分を過信するなよ。
おまえは守らなきゃいけないんだ』
書物に目を落としていた鋼牙が、台座のザルバに目を合わす。
『カオルも…
…そして、雷牙も』
そう言われて鋼牙はかすかに目を見開いた。
そして、ふっと表情が柔らかくなった。
「ああ、わかっている…」
そう言うと、再び書物に目を落とした。
翌朝。
鋼牙がザルバを台座から取り上げて自分の指に嵌めたところでザルバの意識が魔界からこちらの世界に戻ってきた。
『なんだ、鋼牙。もう朝か?』
まだ意識が覚醒しきらないのか、ふにゃふにゃと張りのない声でそう呼びかけるザルバに、鋼牙ははっきりとした声で言った。
「ザルバ。
俺は英霊の塔に行こうと思う」
『英霊の塔? …そうか、その手があったか!
だが、無駄足になるかもしれないぜ?』
「ああ。それも覚悟の上だ」
きっぱりと言い切った鋼牙は、目の隈もひどいし、顔色も今一つだったが、それでもどこかすっきりとした顔をしていた。
『よし、そうと決まれば、塔へ向かう魔戒道を探すぜ』
「ああ、頼んだぞ」
新緑も眩しい森を抜けると、英霊の塔はすぐそこだ。
英霊の塔に入れるのは牙狼の鎧を継ぐ者のみ。
内部へと続く扉を抜けると、鋼牙は中心に立って周囲を仰ぎ見る。
ホラーを斬ることで自身の体内に溜まった邪気を払うときにはここに来る。
けれども、今、ここに立つ理由はまったく違うため、さすがの鋼牙も表情は固い。
『冴島鋼牙。牙狼の鎧を継承する者よ』
どこからともなく聞こえる声に身体がぴくりと反応する。
『おまえの身体に宿る邪気は、我らの力が必要なほどではないではないか。
冴島鋼牙よ。おまえは何しにここに来た』
感情の籠らない声は怒っているのか戸惑っているのかわからない。
ぐるりと彫像に取り囲まれた中、人ではないものの気配が自分一人に集中しているのを感じながら、鋼牙は声を張り上げる。
「英霊よ。どうか力を貸してほしい。
人界のあちこちで一斉に多くの人が異空間と思われるところに引き込まれた。
カオル… 俺の妻もその中の一人だ。
だから… 教えてくれ!
その者たちがどこに行ってしまったのか、どうすれば助けることができるのかを…」
本心では、一刻も早く教えてくれ、そう叫びたいのを押さえつけながら、鋼牙は英霊たちに呼びかける。
しばらくの沈黙の後、英霊の声が響いた。
『冴島鋼牙よ。我らはその者たちの行方は知らない』
「っ!」
鋼牙の眉間に深いしわが寄り、思わず身体が前のめりになる。
『だがひとつ。
我々に見えたものがある。
それが、おまえの知りたいことにとって何か助けとなるかもしれない…』
「それは! それはなんなんだ、英霊よ!」
『それは…』
to be continued(2へ)
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青い空に突如現れた時空の裂け目がカオルを飲み込んでから1週間余り。
鋼牙は考えうるすべての伝手を頼りにカオルの行方を追った。
元老院も情報収集に躍起になったが、今現在分かっていることといえば、同様な例があちこちで発生しているということと、その現象がほぼ同時刻に起こっていること、そして、いまだ誰も帰ってきたものはいないということだけだった。
鋼牙もただ待つだけではない。
冴島家の所有する膨大な書物を漁(あさ)り、類似の前例がないか、少しでも関連しそうなホラーがいないかを文字通り血眼になって探した。
もちろん魔界騎士としての務めを蔑(ないがし)ろにすることなどない。
昼は自分自身で課した鍛錬に励み、ゲートになりそうなオブジェの封印も怠らず、夜は指令を果たしながら、である。
それでなくともなかなかに過酷な魔界騎士の日常でカオルの捜索をも続けることは、鋼牙の休息の時間を削り、精神をすり減らしていくのは当然のことだった。
しんと静まる深夜の書斎。
書斎机に向かいながら古びた分厚い書物のページを、その視線で穴が開きそうなほどに読み進める鋼牙は、目の下に隈(くま)を作り、わずかにやつれたのかスタンドの明かりが作る以上の影が頬に黒く落ちていた。
やがて、必死に走らせていた視線が最後のページをたどり終えると、鋼牙は重い息を吐き、ぱたんと書物を閉じて書斎机の上にややぞんざいに投げ出した。
そして、脱力したように椅子の背中に身体を預けて、目をつむると指で眉間をつまむようにして揉んだ。
『これにも何も載ってなかったか…』
机の上に置かれた台座に据えられたザルバの沈んだ声に、ああ、と答える気力もないかのように鋼牙は黙ったままだった。
いや、口を開けば、カオル救出に何の糸口も見つけられない苛立ちを押さえつけなくなるのを感じてもいた。
わずかに頭痛も覚えながら、このまま椅子に沈み込んで眠ってしまいたいと思いつつ、鋼牙は意思の力で瞼を開き、椅子から背を起こしてまた別の書物に手を伸ばす。
『おいおい鋼牙。今夜はもう休んだらどうなんだ?
無茶をすると自分の首を絞めるぞ?』
ザルバは万全でない状態でホラーに対峙したときのことを心配してそう言って制するが、鋼牙は
「わかっている。
今夜はこれでやめにするから」
と手に取った書物をちょいと上げてみせてるのだった。
恐らく、それを読み終える頃には空が白み始めていることになるだろう。
ザルバは、はぁ、と大きくため息をつく。
(こいつぁ、何を言っても聞く耳持たんだろうなぁ)
そう思いながらもそれでも言ってやりたくなってしまう。
『自分を過信するなよ。
おまえは守らなきゃいけないんだ』
書物に目を落としていた鋼牙が、台座のザルバに目を合わす。
『カオルも…
…そして、雷牙も』
そう言われて鋼牙はかすかに目を見開いた。
そして、ふっと表情が柔らかくなった。
「ああ、わかっている…」
そう言うと、再び書物に目を落とした。
翌朝。
鋼牙がザルバを台座から取り上げて自分の指に嵌めたところでザルバの意識が魔界からこちらの世界に戻ってきた。
『なんだ、鋼牙。もう朝か?』
まだ意識が覚醒しきらないのか、ふにゃふにゃと張りのない声でそう呼びかけるザルバに、鋼牙ははっきりとした声で言った。
「ザルバ。
俺は英霊の塔に行こうと思う」
『英霊の塔? …そうか、その手があったか!
だが、無駄足になるかもしれないぜ?』
「ああ。それも覚悟の上だ」
きっぱりと言い切った鋼牙は、目の隈もひどいし、顔色も今一つだったが、それでもどこかすっきりとした顔をしていた。
『よし、そうと決まれば、塔へ向かう魔戒道を探すぜ』
「ああ、頼んだぞ」
新緑も眩しい森を抜けると、英霊の塔はすぐそこだ。
英霊の塔に入れるのは牙狼の鎧を継ぐ者のみ。
内部へと続く扉を抜けると、鋼牙は中心に立って周囲を仰ぎ見る。
ホラーを斬ることで自身の体内に溜まった邪気を払うときにはここに来る。
けれども、今、ここに立つ理由はまったく違うため、さすがの鋼牙も表情は固い。
『冴島鋼牙。牙狼の鎧を継承する者よ』
どこからともなく聞こえる声に身体がぴくりと反応する。
『おまえの身体に宿る邪気は、我らの力が必要なほどではないではないか。
冴島鋼牙よ。おまえは何しにここに来た』
感情の籠らない声は怒っているのか戸惑っているのかわからない。
ぐるりと彫像に取り囲まれた中、人ではないものの気配が自分一人に集中しているのを感じながら、鋼牙は声を張り上げる。
「英霊よ。どうか力を貸してほしい。
人界のあちこちで一斉に多くの人が異空間と思われるところに引き込まれた。
カオル… 俺の妻もその中の一人だ。
だから… 教えてくれ!
その者たちがどこに行ってしまったのか、どうすれば助けることができるのかを…」
本心では、一刻も早く教えてくれ、そう叫びたいのを押さえつけながら、鋼牙は英霊たちに呼びかける。
しばらくの沈黙の後、英霊の声が響いた。
『冴島鋼牙よ。我らはその者たちの行方は知らない』
「っ!」
鋼牙の眉間に深いしわが寄り、思わず身体が前のめりになる。
『だがひとつ。
我々に見えたものがある。
それが、おまえの知りたいことにとって何か助けとなるかもしれない…』
「それは! それはなんなんだ、英霊よ!」
『それは…』
to be continued(2へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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