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言わず語らず(4)
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「大河… 鋼牙… 雷牙… 俺たちは勝ったんだ」
バラゴの野望を打ち砕いた3人の魔界騎士にザルバがそう声を掛ける。
その勝利の余韻に浸ったのも束の間。大河は金色の光に包まれて、鋼牙と雷牙の前から去っていった。
壮絶な戦いの後、大河は元いた場所に戻ってきた。
金色の光がほどけて、この地にしっかりと足がついた大河は、一瞬ぐらっとふらついた。
英霊の状態から、雷牙たちの前で実体を伴いながらバラゴと闘ったことは、さすがの大河でもかなりのダメージをくらっていたようだ。
とはいえ、ぐっと歯を食いしばり、両足に力を込めて踏みとどまると、深くはぁっと息をついて両肩から力を抜く。
そんな大河は、ふいに何かの気配を感じた。
くっと鋭い視線を気配を感じたほうに向け、剣の柄(つか)に手を掛ける。
程なくして、視線の先の茂みの中の小径から強面の老人が姿を現したのを見て、大河は緊張を緩めた。
「阿門法師…」
「大河。無事に帰ってこれたようじゃな。
こうして、おまえさんが帰ってこれたということは…」
「はい。奴の企みを阻止することができました」
「そうか、それはなにより。
それにしても…」
阿門は大河の言葉に満足気にうんうんとうなずいたが、すぐに眉をひそめて言った。
「バラゴの復活の兆しを覚(さと)ったおまえさんが雷牙たちの力になりたいと言い出したときは、そりゃあ驚いたもんじゃが…
わしゃ、正直、おまえさんがこうして無事に帰ってくることができることは半分諦めておった」
そう言うと阿門法師は大河から目をそらして、遠くを見るようにして目を細めた。
その様子をしばらく黙って見ていた大河だったが、くっと喉の奥で笑い目を伏せたので、阿門は訝し気に振り替える。
「確かに、なんとかこうして帰ってはこれましたが身体のあちこちがボロボロです。
孫や子の前で張り切っては見たものの、もうジジイの身ですからね。かなり堪(こた)えました」
自虐的に笑いながら、大河は両手を広げて見せた。
「あっはっは、わしの前で ’ジジイの身’ と来たもんか。まあ、よい。ジジイのつらさはわしも覚えがあるからな。
とにかく、闘いは終わったんじゃ。
これからゆっくりと身体を休めればよいじゃろう?」
阿門法師は大河の肩をポンポンと叩き、労をねぎらった。
だが、大河はゆっくりと首を横に振る。
「いえ、まだです。
俺にはやらなければいけないことがある」
阿門が、それはなんだ、と目で問うのに応えて、大河はある1点を見つめて声を低くする。
「これを閉じなければならない」
大河の視線の先を、阿門も目で追った。
そこには、向こう側の景色が陽炎のように揺らめくような空間があった。
雷牙たちの元に大河を運び、また再びこの場所に大河を戻れたのはこれがあったればこそだったが、その存在は間違いなくあってはならないものであった。
そして、恐らく、これはエイリスが作った時空の割れ目なのだろうと大河は考えていた。
「なるほどな、確かにこれは封じるべきものじゃろう。
だが、これを閉ざしてしまえば二度と雷牙たちの元には行けなくなるのではないか?」
阿門は論外に、このまま残しておいてもいいのではないか、と言いたいのだろう。
けれども、大河には迷いがない。
「いえ、これは封じます。
これがあれば、きっとあの子たちにも害を生(な)すはず…」
大河は知らなかった。
時空を彷徨い、すべての時空の割れ目を塞ぐ試練がガジャリによって雷牙(鋼牙)に課されることを。
けれども、この時空の割れ目から感じるわずかなホラーの気配から、この後始末を命じられるならそれは雷牙になるのではないかということは容易に想像できた。
「それに…」
と大河は阿門法師を振り返った。
「今回のことでよくわかったのです。
あの子たちは強い。ほんとうに強い…
この先、俺の力が彼らにとって必要になるようなことは、恐らくないでしょう」
大河の表情は明るかった。
先ほどまで見せていた自虐めいたものなどは少しもなく、どこまでも清々しく、そして嬉しそうでもあった。
そんな曇りのない大河の態度に、阿門は
「そうか…」
と言ったきり、それ以上言うことなどなかった。
大河は時空の割れ目に対峙し、大きくひとつ呼吸を整えた。
ぴんと空気が張り詰める中、阿門は何一つ見逃さないようにじっと見つめていた。
大河が剣をゆっくりと抜き放った。
そして、右手を真っすぐ前に突き出し、剣を垂直に立てた。
ぶるんぶるんと左右に大きく8の字を描くように振るい、再び剣を垂直にぴたりと止めた。
すると、ジリジリ歪んでいた景色が固まっていき、揺らめきを止めていく。
やがて、上からと下からと金糸のような筋が見えたかと思うと、それが徐々に真ん中に向かって引き寄せあうように集まっていく。
とうとう中央の1点金の光が集まって、最後のあがきとばかりに眩しい光を放っていたが、唐突にその光もプツリと消えた。
大河は剣を鞘に戻すと、時空の割れ目のあった場所に手を伸ばした。
もちろんそこには何もなく、大河の身体が消えることもなかった。
(これで終わった…)
ふうっと大河は短く息を吐いた。
そんな大河の背に、阿門は余計なことかと思いつつ声をかけた。
「鋼牙たちにはこのことは言ったのか?」
すると、大河は首だけ半分、阿門のほうに向けて、
「いえ…」
と言い、
「では…」
とだけ伝えて歩きだした。
阿門はその後姿を、見えなくなるまで黙って見送った。
疲労で重たい身体で歩きながら、大河は、鋼牙たちに言った最後の言葉を思い返していた。
「鋼牙、雷牙…
おまえたちは強い。
しかし、なぜ強くなれたのか、それを忘れるのな。
わたしはいつもお前たちを見守っている…」
恐らく、自分が雷牙たちに姿を見せることはもうないだろう。
だが、そんな感慨に浸って多くを語るのことは、自分にはできそうもない。
(まあ、あれでで十分だろう…)
大河はわずかに表情を緩めつつ、雷牙と鋼牙の姿を思い返すのだった。
fin
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はい!
大河さんがどうやってこっちの世界に来れたのかを、勝手に ’時空の割れ目’ のせいにしてみました、
映画では、キラキラの光に包まれているので、ぜ~ったいそんなことはないはずなんですけど、ね!
(だって、カオルちゃんの場合は、暗雲立ち込め、それはもうオドロオドロシイ感じでしたもんねぇ)
で、その割れ目を、大河さんは子供たちには黙って最後に塞いじゃう、っていうオチです。
映画(DVD)を見たときには、「大河さん死んじゃってるのに、こうやってほいほい復活しちゃえるんだな」と思ってたんですが、「大河さんにはもう会えないのね」となった今となっては、彼の一番最後のセリフ
「わたしはいつもお前たちを見守っている」
が重たくて重たくて…
雷牙よ鋼牙、ふたりの強さを認めたうえでのこのセリフっていうのも、いろいろ胸に来るものがありますね。
ああ、大河さん。ずっとずっと見守っていてください…
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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