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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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おにいちゃんってさぁ(2)

気づいた方、います?
ゆうすけくん、しょういちくん、まなちゃんというお名前に…
ああ、あの! と思われた方、スゴイです。

あっ、わからなくても全然大丈夫です!
気楽ぅぅぅ~に今宵の妄想もお楽しみくださいませ…

拍手[4回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

走りだしたはいいものの、ゆうすけは自分がどこをどう通って駐車場まで来たのかはわからないと言う。
仕方がないので、零は、キャーキャーと子どもたちの声がする方向を頼りにゆっくりと足を進めることにした。

(とりあえず、ゆうすけの言うところの「池みたいなとこ」に行ってみて、それで手がかりがなさそうなら公園の管理事務所にでも行けばいい…)

零はそんなことをぼんやりと考えながらゆうすけの歩くスピードに合わせて歩いていたのだが、その間もゆうすけは9月から始まった新たに始まったという覆面ライダーのことを夢中で話している。

「’えーす’ ってのが覆面ライダーギ○ツなんだよ」

とか

「いろんな覆面ライダーがいて、敵をやっつけてデザイアグランプリで優勝すると、なんでも願いがかなうんだ」

とか

「女のライダーもいるんだよ」

とかそれはもう目をキラキラさせて前のめりで話してくる様を見ていると、零は微笑(ほほえ)ましいなと思いつつ、

「えーすってカッコイイ名前だな」

とか

「すごいな、なんでも願いがかなうのかぁ」

などと、ゆうすけに合わせて相槌を打っていた。
そして、

「へえ、女の子とのライダーねぇ。その子ってかわいいの?」

なんて冗談半分に言ってみたところで、ゆうすけはピタリと足を止めた。
そして、零の手をサッと振り払ってから背中のリュックを肩から降ろして中を探り始めた。

(おいおい、ここでまた店開きするのか!?)

零は焦って

「なあ、ゆうすけ、ちょっと待て」

と声を掛けるが、その時にはもう、ゆうすけの手には1冊の本が握られていた。
そして、手慣れた風にページをめくり、とあるところまでくると二カッと笑ってから、

「ほら、これだよ!
 これがナ○ゴ! で、こっちが変身する前の人間の姿ね!」

と零に向かって差し出してきた。
零は本を押し返そうとしながら、

「あ、いや、これは後で見るから、とりあえず今はお母さんたちの、とこ…ろ…に…」

と言ったところで息を飲んだ。
ゆうすけに先を急ぐよう説得しようと思いながら見るともなしにチラ見したその本の隅に見知った顔を見かけたからだ。
その本は子供向けのテレビ番組などを紹介するような月刊誌で、新たに始まる覆面ライダーを紹介する特集記事が載ったものだった。
零は、ゆうすけから本を受け取ると食い入るようにその顔を見つめた。
そのページには、何人かのライダーの男女のほかに、デザイアグランプリだとかいうゲームのナビゲーターだという女性が載っていた。

(アリスっ! いや、違うのかっ?)

顔立ちは確かに零の知る尋海アリスとそっくりだった。
だが、その服装は、普段街中で見かけるような女性たちの装いとは一線を画す白と黒のはっきりとした配色で、どこかSFテイストなものだった。
何度見返してみてもアリスに間違いないと思いつつ、零はその人物の説明書きに素早く目を通す。

(ツム○… やっぱりアリスではないんだな…)

アリスによく似た顔の少女の名はツム○と言うらしい。
そして、もちろん女優が演じていることもわかっている零は、その名前も確認した。
青○心… その名前には、当然だが、心当たりはない。

アリスは死んだはずだった。いや、確かに零の腕の中で息を引き取り、この世から姿を消した。
けれども、ツム○の写真を見た瞬間に、まさか彼女が生き返った、いや、生き残っていたのかもしれないなどと思ってしまった。
そんなことはありえないはずなのに、そう心に思い浮かべてしまい、戸惑いつつも嬉しさをほんの少し覚えたのは否定できなかった。
けれども、あらゆる事実が彼女はアリスとは別人だと示していて、すぐさま失望と喪失感が零を襲った。

急に笑顔が消えて本を凝視したまま固まった零に、ゆうすけは不安そうな声で小さく

「ねぇ、どうしたの?」

と問いかけた。
その声にはっと我に返った零は、すぐに笑顔を作り、ゆうすけと目線を合わせるようにその場にしゃがむと

「ごめんごめん。
 ちょっと知っている人によく似た人が載っていてびっくりしたんだ」

と言って、はい、と本を返した。
それを聞いてゆうすけは

「ふうん」

と言うが、そのことにはすぐに興味を失ったのだろう。零に見せてあげた本を大事そうにリュックにしまい込んだ。

ところが、すぐにゆうすけはハッとして零の顔を見てから、リュックの中の別の本を取り出してページをめくりだした。
そして、とあるページで指を止めるとみるみる顔を青ざめさせてじりじりと後ずさりしだした。
その様子を見て、零は、ん? と首をかしげて

「どうした?」

と尋ねる。
ゆうすけはそれには答えることができず、首を横に振るばかりだ。
心配になった零は、

「どこか痛い? それとも何かなくなっちゃった?」

と尋ねつつ、さっきの場所に置き忘れたものはなかったよなと思い返しながら、周囲に目を配った。
すると、そこに

「ゆうすけ!」

と遠くから男性の声が聞こえてバタバタと走り寄ってくる音が聞こえたので、零はゆっくりと立ち上がってそちらを見た。
Tシャツにネイビーのパンツを履いた30代と思われる男性がこちらに向かって走ってきていた。
足元はサンダルを履き、パンツの裾をロールアップしていて見えている足首はわずかに濡れているようだ。
多分、子どもと水遊びをしていただろうことは容易に想像できたし、彼がこのゆうすけの父親なんだろう。
そう思った零は、ゆうすけと父親らしき男性を結ぶ視界にかぶらないように身体の位置を少しずらした。

「パパ!」

ゆうすけからも父親の姿が見えたのだろう。小走りに駆け寄り、父親の足に抱き着いた。

「ゆうすけ、よかったぁ。どこに行ったのかと探し回ったぞ」

「…ごめんなさい。
 パパのとこに行こうと思ったらわかんなくなったの…」

ゆうすけは泣きそうになりながら父親を見上げた。
そこに、零は、置きっぱなしのゆうすけのリュックを拾い上げて近づいた。
その気配に父親は顔をあげ、息子が見つかった安心感で緩んだ表情を引き締めた。
相手が警戒していることもあって、零は逆にできるだけリラックスした雰囲気で手に持っていたリュックを差し出しながら声をかけた。

「ゆうすけくんのお父さんですね。
 よかった、見つかって…」

父親は差し出されたリュックを受け取りながら、すいません、と言いつつも、まったく警戒を解いたわけではない。

「あの…」

どう尋ねればいいのか逡巡しながら口を開いた父親に、零は先手を打って説明する。

「あっちの駐車場でゆうすけくんがひとりでいたので、迷子かなと思い、送り届けようとしていました。
 えっと、しょういちくん? とまなちゃんだっけ? がお母さんと一緒に池みたいなところで遊んでいると言っていたので、それでひとまずそこに向かおうとしていて…」

それを聞いて、父親は警戒を少し緩めた。

「ああ! ありがとうございます!
 ちょっとジュースを買ってこようと思って僕が離れてしまったので、それを追っかけてきたみたいで…
 戻ってみたら嫁さんが青ざめて、ゆうすけがいないっていうもんですから、慌てて探していたところなんです!」

「そうか、それで、なのかな?
 ゆうすけくんと会ったのは、駐車場の自動販売機の近くだったんです。

 とにかくよかった、お父さんに会えて…」

そう言うと、零は視線を下げ、ゆうすけに顔を近づけて

「よかったな?」

と言った。
だが、ゆうすけは近づいた零にビクッとして、慌てて父親の陰に隠れるのだった。
その様子を見ながら父親は言う。

「ゆうすけ。お兄さんに送ってもらったんだろう? 『ありがとう』は?」

ところが、ゆうすけは父親にしがみつきつつ、いやいやと首を振る。
さすがに父親はそれを訝(いぶか)しく思い、再び零に対して警戒心がもたげだした。

「ついさっきまで覆面ライダーの話を一生懸命してくれてたんですけどね…
 なんか急に様子がおかしくなって、どこか痛いのかもしれないと、ちょうどいま聞いていたところだったんです。
 だから、おうちの方でも、ちょっと気をつけてみてあげてくれますか?」

零がそう言うと、父親はすぐにゆうすけに尋ねた。

「ゆうすけ? どこか痛いの?」

すると、ゆうすけはううんと首を振る。

「じゃあ、どうした?」

すると、ゆうすけはチラっと零を見てから、小さな声でこう言った。

「だって… この人、『北崎』じゃないの?」



to be continued
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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