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人生初めての夜の話

めっきり朝晩涼しくなり、日が暮れるも明けるのも遅くなりました。
秋の夜長に、こんな「夜」のお話なんていかがでしょうか?

拍手[5回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「うーん、眠れない…」

ベッドの中で少年はモソモソと身体を動かして向きを変えてみた。
シーツは清潔でふんわりといい匂いがするし、毛布もとってもいい肌触りであったかい。
けれども、いつもならとっくの昔に夢の中にいる時間なのに、少年には眠気が一向に訪れなかった。

少年はつい先週5歳になったところだが、生まれて初めて「眠れない」という体験をした。

部屋の中は照明が落とされていて、ベッドサイドに置いてあるスタンドの小さな豆球がぼんやりと点いているだけ。
けれども、少年はちっとも怖くなかった。
なぜなら、少年の住む屋敷は強固な結界によって守られていて、少年を怯えさせるような怪しげな者が入り込む心配はひとつもなかったからだ。
だから、少年にもし心配なことがあるとすれば、明日の朝、寝坊してしまって大好きな執事が作ってくれるおいしい朝食を食べそびれてしまうことくらいだった。

「…そうなったら、やだなぁ」

つい、口からそんなことばが漏れ、小さな声だったにも関わらず静寂の中にあっては想像以上に大きく聞こえて、思わず肩をすくめて布団をぐいぐいと引っ張り上げて口元を隠してしまった。
だが、この部屋には自分以外に誰もいないから、少年の呟きに応えてくれるようなこともなかった。
いや、ないはずだった。

それなのに、その声は突然、聞こえてきた。

「眠れないの?」

少年は驚いた。
自分しかいないはずなのに、どうして声がするんだ?
けれども、やっぱり少年は怖いとは思わなかった。
その声が、とても優しそうな女性の声だったからだ。

少年はそっと顔を動かして、声のしたほうを見てみた。
すると、そこにはお母さんよりも年が上に見える女の人が見えた。
不思議なことに、その女の人は柔らかない光に包まれていて少しゆらゆらと光が揺れているからかはっきりとは姿が見えない。
でも、その人が包まれている光はとてもきれいで、どこか心を落ち着かせるような感じがして、女の人も優しそうに笑っていたから、やっぱり恐怖心は湧いてこなかった。

それでも、少年は少し警戒をしつつ

「…あなたはだぁれ?」

と光り輝く女性に声を掛けてみた。
すると、それには答えず、女性はにこにこと笑っているだけ。
だから、少年はもう少し大きい声で聞いてみた。

「ねえ、誰なの? どこから来たの?」

女性は、軽く握った手を顎に添えて、どうしようと少し悩む素振りを見せたが

「自分がどこにいるのか、実はよくわからないのよ」

と困ったような顔でそう言った。

「ふうん」

「ねえ? 眠れないなら何かお話しましょうか?」

「でも…」

「えっとねぇ、魔界騎士のお話とかどうかな?」

「えっ! 魔界騎士のこと知ってるの!?」

「知ってるよぉ。君のお父さんも魔界騎士でしょ?」

「うん、そうだよ!」

「強くて優しい」魔界騎士だよねぇ」

「お父さんのこと知ってるの?」

「うふふ、知ってるよ。君のお父さんのことは、お父さんが小さかった頃から知ってるの」

初めは警戒していた少年も、じきに警戒心を解いていき、その光輝く女性を相手にあれやこれやとおしゃべりが弾んだ。





翌朝。

「…が…○牙。朝だよ。起きて」

身体を優しく揺さぶられながら、少年は母の声に目覚めた。
目を開けようと思うがなかなか目が開かない。
両手で目をごしごしと擦っていると、その手を掴んで母親がゆっくりと引っ張り起こした。

「おはよう。どう? 目が覚めた?」

母親が少年の顔を覗き込むようにして尋ねる。

「…うん。でも、眠い… 昨日はずっと起きてたの。ふあぁぁ」

まだ眠そうな少年はあくびをしながら、またくっつきそうになる瞼にささやかな抵抗をしていた。
でも、それを聞いた母親は首をかしげる。

「ええっ、寝られなかったの?
 でも、お母さんが夜中に見たときは寝ていたよ」

そう言ったもののすぐに

「あっ、でも寝言を言ってたなぁ」

と母親はニマニマと意味深に笑いながら、少年のぷっくりとしたほっぺをツンツンとつついた。

「寝言? 寝言ってなあに?」

「ん? 寝言ってのはね。寝ているのにおしゃべりすることだよ。
 ○牙ったら、お目めはつむってるのに、むにゃむにゃと何か一生懸命お話していたよ?」

「うそだー! ぼく、寝ながらおしゃべりなんかしないよぉ!
 ぼくは昨日ずっとおばあちゃんとお話してたんだよ!」

「えっ? おばあちゃんと?」

「そうだよ!
 おばあちゃん、いろんなお話してくれたよ!」

「いろんなお話って…」

戸惑う母親にはお構いなしに、少年は

「えっとねぇ。
 牙狼はいっぱいホラーをやっつけたら金色のお馬さんに乗れるようになるんだって!
 あとねぇ、ザルバは1回消えてなくなったことがあるんだって!
 でも、直してもらって、またザルバになったんだよ。お母さん、知ってたぁ?」

とさっきまで眠そうだったのが嘘のように生き生きとおしゃべりをする。

「○牙、それって…」

母親の方は息子のテンションに気圧(けお)されてしまい、うまく言葉を挟めない。
そんな母親にはお構いなしに少年のおしゃべりは続く。

「あとねぇ、あとねぇ。
 画家になりたい女の子がねぇ、ホラーの血がかかってねぇ、死にそうになったお話とかしてくれたよ」

「っ!」

母親は息を飲んだ。
その話は、いや、その話だけではない。
ザルバが一度消滅してしまった話も含め、少年が話したというその人はいろいろと知り過ぎている。

母親は少年の両肩を掴んで、真剣な顔をして尋ねた。

「○牙! その人、自分で自分のこと、おばあちゃんって言ったの?」

少年は母親の剣幕に一瞬きょとんとしたが、

「うん、最初は『誰?』って聞いても言ってくれなかったけど、最後のほうで言ったんだ。
 『おばあちゃんだよ』って…」

と答えた。
母親は大きく目を見開き、手で口を押えた。

「でも、変なんだ。
 おばあちゃんって、もっとシワシワで年とった人だよね?
 自分のことをおばあちゃんだって言った人は、そんなにシワシワじゃなかったよ?」

少年が首をかしげてどうしてだろうと考えていると、母親は急に立ち上がり、部屋を出て行った。




その後。
父親や執事まで呼んできた母親に、少年は再び、人生で初めて眠れなかった夜の ’おばあちゃん’ とおしゃべりした話をするように言われるのだった。
それを聞いた大人たちが、なんだか泣きそうになっていて、それでいて嬉しそうでもあって、少年にとっての謎は深まるばかりだった。


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ちょっと不思議な一晩を過ごした少年。
おばあちゃんに会えた奇跡のすごさに気付くのはいつになるのでしょうか、ねぇ?

そしてそして、すみません!
少年の名前をずっと「○牙」と表記しています。
素敵な名前を考えたかったんですが、考えているうちに時間がなくなりそうだったので、ひとまず、「○牙」で書ききってしまいました。

大河 → 鋼牙 → 雷牙 と来たら… なんでしょう?

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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