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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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この気持ち(6)

毎日毎日「今日はあったかい」「今日は寒い」と気温に振り回されていますね。
体調管理を言い訳に、食っちゃ寝、食っちゃ寝の毎日ですわ!
また今年も健康診断にビクビクしそうです。

さて、妄想のほうはダラダラ続いていますが、一気にカタをつけたいような、つけたくないような…
お時間が許しましたら、今宵もダラダラにお付き合いくださいませ。

拍手[3回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

マユリの様子がおかしい。
雷牙が最初にそう気が付いたのは、あの喜びの朝からずいぶん経ったときだった。



エイリスを封じることができ、いつ終わるとも知れない眠りについた彼女が再び目を覚ました朝は、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
以前ほどではないにしろそれなりに長い間眠っていたために、マユリの体力や食欲は当初ずいぶんと落ちていたものだったが、それも徐々に回復していったので雷牙はとても安心していた。

ホラーを封印する力がすっかりなくなってしまったとわかったときも、雷牙はそれほど気にすることではないと思っていた。
そんな力がなくてもマユリはマユリであればいい。
ホラーと闘う必要がなくなり、普通の女の子と同じようにただ笑って毎日を過ごしていけばいいのだと、そんなふうに思った。
仮に、もしホラーと対峙するようなことがあっても、そのときは自分がマユリを守ってやればいいだけのこと。何も問題はない。
だから、雷牙はマユリによく言っていた。

「いつまでもここにいてくれていいんだよ」

と。
その度にマユリが複雑そうな笑みを浮かべることには気づいてはいたが、それも一時的なことだと思っていた。
自分の力がなくなったことにそれなりにショックを受けているだろうことは十分に理解できるし、これから自分はどうすればいいか不安になる気持ちもわかるつもりでいた。
だから、冷たく追い出すようなことはしないとわかってもらえるように、ここにいていいと何度も言ったのだ。

(今はいろいろ不安定で落ち着かない状態のマユリだけど、いつかきっと、そう先ではない近いうちに心が落ち着いてまた笑顔を見せてくれるはず)

と雷牙は思っていた。
だけど、マユリが心からの笑顔を見せなくなった。そして、食事の時以外は部屋からも出なくなってしまった。
ここにきてようやく雷牙は

(マユリの様子がおかしい)

と心配になってきた。



だが、それも、少しだけ解消された。
ここ最近は、どこに行くのかわからないが、どこかに出掛けていき、すっきりとした顔で帰ってくる日が続いている。
そのことを雷牙もゴンザも喜んでいた。

とは言え、毎日どこに行っているのかは気になった。
だから、こっそりと後をつけようかとも思ったが、

「それはわたくしめにお任せください。
 雷牙様はいつものようにお仕事に精をお出しくださいませ」

とゴンザが言うものだから、すごく気になりつつも雷牙は彼に任せることにした。



…けれども、やっぱり気になる。

一度、朝食の席で、

「今日もマユリは出掛けるの?」

と何食わぬ顔で聞いてみたりした。
雷牙の問いに、マユリは一瞬動揺したが、わりとすぐに

「どこってこともない。ただ… その日の気分であちこち歩き回っているだけだよ」

と薄く笑いを浮かべつつ答えた。

「へえ…
 それじゃあ、昨日はどこに」

と雷牙がなおも追求しようとしたところで、

 ゴホン

とわざとらしいゴンザの咳払いが聞こえた。
そして、雷牙の言葉を遮るようにして

「雷牙様、コーヒーのおかわりなどいかがでしょうか?」

と素知らぬ顔で聞いてきた。

「えっ、あ、ああ… いや、いいよ、大丈夫」

雷牙は戸惑いつつも笑顔で返事すると

「さようでございますか。
 では、本日の昼食なのですが、お天気もよいようですのでテラスのほうでお召し上がられてはいかがでしょう?」

とさらに別の話題を振った。

「昼食?
 …うん、そうだね。それはゴンザに任せるよ」

雷牙はそう応じつつ、ゴンザの腹の内を探ろうとした。
けれどもゴンザは表情を崩さず、今度はマユリに顔を向けた。

「マユリ様。後で構わないのですが、少しお手伝いをいただけませんか?」

「手伝い? なんだ?
 食事は終わっているから、今からでもいいけれど… 後の方がいいのか?」

「ああ、いつでも構いません。
 ちょっと針に糸を通していただきたくて…
 糸通しがあったはずなのですが見当たらなくて困っているんです」

「なんだ、そんなことか。
 そんなことくらいいつでもするぞ」

「ありがとうございます。
 裁縫箱の中の針に、黒い糸を通していただけますか?
 できれば、2~3本、通しておいていただけると助かるのですが…」

「黒い糸だな。わかった」

そう言うと、マユリは席を立ちドアから出て行った。

「…」
「…」

マユリを見送ったゴンザと雷牙は、彼女の足音が十分遠ざかったのを聞いてから顔を見合わす。
雷牙が口を開けて言葉を発しようとしたが、ゴンザのほうが先に口を開いた。

「雷牙様、大丈夫ですよ。
 マユリ様の行先は掴んでおります」

「本当か?
 ならなぜ…」

この場で話さなかった理由が気になる雷牙に、ゴンザは黙って首を横に振る。

「マユリ様はご自分から話そうとはなさらない気がいたします。
 今、この話を出してしまうと、マユリ様は困ってしまわれるかと…
 マユリ様はまだ悩んでいる最中のようですし…」

「なら、なおさらだ。
 マユリの悩みを聞いてあげた方がいいんじゃないか?」

少し不満そうな雷牙に、ゴンザは言う。

「雷牙様…
 それをマユリ様が望むのであれば、お聞きするのがいいと思います。
 ですが、マユリ様から何もお話しされない今、それを聞くのは、わたくしたちの知りたいという欲求を満たすためになってしまいませんか?」

雷牙はぐっと眉をしかめた。

(確かに… そうなのかもしれない…)

雷牙は、マユリの消えたドアを見た。
そして、

「…わかったよ、ゴンザ」

と小さな声でそう言うと、ガタンと席を立った。

「出掛けてくる。昼までには戻る」

そう言った雷牙は、すでに魔界騎士の顔になっていた。
白いコートにさっと腕を通した雷牙は、ゴンザの見送りを受けながら、颯爽と屋敷を後にするのだった。



to be continued(7へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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