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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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この気持ち(3)

すっかり春めいてますね!
花粉もすっごい飛んでいるんですけど… 大丈夫、わたしは花粉症ではないのでっ!
(たまに、涙が出てくるのと鼻水止まらなくなるのは、きっと別の原因なんです!
 うん、ほんと。たま~になんですもん!)

目をしょぼしょぼさせながら書いた妄想を、楽しんでいただければ嬉しいですぅ~♪

拍手[2回]



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(ここにいつまでも居ていいわけではないんだ…)

そう思ったマユリは気づけば外へと飛び出していた。
とはいえ、目的地があるわけではない。
足の向くままにただただ歩き続けてはみたものの、雑踏の中、行き過ぎる人たちはたくさんいるのに、マユリはまるで砂漠でも歩いているような気分だった。
誰もが他人には目を向けず、無表情で前だけを見て歩いている中、周囲の足並みに合わせて歩くことにも疲れたマユリは、ぽつんとそこだけ取り残されたように無人の小さな公園へと足を向けた。

そこは子どもが遊ぶような遊具があるわけではなく、ほんの少し緑があってベンチが2か所あるだけの空間。
数メートル先の道路を歩く人たちの足音や車の音が気にならないわけではないが、恐らくこちらが思うほど向こうは自分の存在に意識など持っちゃいないだろう。
そのくらい、あちらとこちらではなんというか空気感が全然違っていた。

マユリは2つあるうちの遠い方のベンチに腰を下ろした。
座ってみて初めて、じんわりと足の疲労を感じたので、はぁっと大きく息をつき、身体から力を抜いた。
必然的に視界が少し上を向いて、ビルの向こうに空が見えた。
夕方に近づき、空の色にも光にも弱々しさが感じられる。
そのことが今のマユリの心情とあいまって、余計に気分は落ち込んだ。

それからどのくらい経っただろう。
10分」だったかもしれないし、1時間だったかもしれないが、そんなことももうどうでもよかった。
これからどうするのか考えなくてはならないのに、何一つ考えはまとまらず、頭に浮かぶのは、ザルバの言葉ばかり。

『力をなくしたマユリにとっては、俺たちのそばにいることはリスクでしかないな』

『自分を守る力のない人間には、俺たちの世界は厳しすぎる』

『だが、今のマユリは人界に放り込んだところで生きていく術(すべ)もない。それもまた事実だ』

(いったいどうしたらいいんだろう…)

そうして何回目かもわからなくなった溜息をついた。
そのとき、

「どうしたの? 大丈夫?」

そっと気遣うような声が聞こえて、マユリははっとして顔をあげた。
すると、少し距離を取ってこちらを覗き込むように、ひとりの女性が立っていた。
手には買い物でもしてきたのだろう、セロリの葉っぱが飛び出している丈夫そうな帆布製のマイバッグを持ち、大きな目が印象的な中年の女性だ。

「あっ…」

マユリは咄嗟のことに反応ができない。
それを見て、女性は気を利かせて答えやすいように質問してきた。

「お友達と待ち合わせでもしているの?」

「い、いえ。そういうわけでは…」

「あら、そうなの?」

「はい…」

そう答えたことで、それじゃあね、と女性は通り過ぎると思っていたが、マユリの思惑とは違い女性はう~んと何かを思案している。
そして、うんとひとつうなずいてから、ぱっと明るい表情でマユリに笑いかけて言った。

「あなた、少し時間ある?」

「時間、ですか?」

「うん」

「はあ…」


戸惑いを隠せないマユリに、女性は

「それじゃあ、少し私に付き合ってくれないかな?」

というなり歩き出した。
女性からのいきなりの誘いに茫然としていると、数歩歩いたところで女性がくるりと振り返り

「ほら、悪いようにはしないからさ。
 おいで、おいで?」

と手招きをする。
マユリは女性のことを不審には思ったものの、なんだかキュートでかわいらしくほんわかとした女性の雰囲気から危険な感じとか恐怖は感じなかったので、戸惑いつつも立ち上がり、女性についていくことにした。



女性から少し距離を取りながら歩くこと5分ほどで

「ここよ」

と女性が言ったのは、小さなお店だった。
店の入り口に目立たないように掛かっている看板を見ると、どうやらレストランのようだった。
表の鍵を開け、

「入って、入って」

と声を掛けてから女性は中に消えていったので、マユリもそっとドアから覗き込んでみる。
4人掛けのテーブルが2つにカウンター席がある。
そして、カウンターの向こうには女性の姿があり、マイバッグの中から買ってきたものを次々と出していた。
女性はマユリの視線に気づいたのか、顔をあげると、ちょいちょいと手で呼び、

「ねえ、ちょっとだけ手伝ってくれないかな?」

と人懐っこい笑顔を見せた。
マユリはちょっとだけ迷ったが、わりとすぐに気持ちを決めてそっと中へと足を踏み入れた。
それを見て女性は再び視線を手元に向け、食材を取り出す手を動かしだした。
その表情は少し嬉し気だ。

カウンターの前まで来たマユリは

「あの… 何をすればいいですか?」

と聞いたので、女性は、

「まずは、そうねぇ…」

と最初の作業を指示するのだった。



その後、女性はこれもお願い、あれもお願い、といろいろマユリに作業を振ってきた。
だが、食材の準備は、運ぶとか洗う以外には触らせてもらえなかった。
それでもマユリは彼女に言われるままあれやこれやで忙しく働いた。

「あの、表の掃除、終わりました。次は何をすれば?」

掃除用具を手に店に入ってきたマユリに女性はにっこりと微笑みかけ

「ありがとう。
 じゃあ、少し休んでちょうだい」

と言って、コーヒーを出してくれた。
それだけじゃなく、

「これ、端っこばっかりで悪いけど、味は保証するわ」

とコース用のデザートとしては出せないケーキの端きれを添えてくれた。

「いいんですか?
 …ありがとうございます」

マユリはきれいに手を洗ってからカウンター席に腰を下ろした。
さっそく、コーヒーで喉を潤し、ケーキを口に運んだ。

「おいしい… これ、すごくおいしいですね!」

目を輝かすマユリに、女性は

「そう? ありがとう」

と嬉しそうに笑った。
しばらくの間、ケーキに夢中になっていたマユリだったが、ふとフォークを止めてお皿の隅に置いた。
そして、膝の上できゅっと手を握りしめてぱっと顔をあげて言った。

「あの、ここで働かせていただくわけにはいきませんか?」


to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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