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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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この気持ち(5)

妄想の更新が足踏み状態でジリジリさせてしまっています。すいません。
マユリの心もジリジリとしていてリンクしちゃっていますね。
今宵はマユリの心の動きにも変化が出てくるのか!?
出てくるといいな、と思いながら綴っていきます。
何卒、気長にお付き合いくださいませ…

拍手[1回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

その日を境に、マユリは毎日出かけるようになった。
ずっと部屋に引きこもっていたマユリが急にそんな行動を取るようになったものだから、ゴンザはものすごく心配そうな顔で

「どちらへ?」

と尋ねるのだが、マユリは困ったような顔をして

「その辺、をぶらぶらと…」

と歯切れ悪く答えるだけで、より一層ゴンザは心配そうに眉を下げる。
なおも問いただしたいゴンザだったが、それを遮るように

「暗くなるまでには帰ってくるんだよね?」

と雷牙は努めて明るい調子で声をかけた。
マユリは、

「もちろん!」

とやや慌てて答えて、ゴンザのほうを見て

「危ないところには行ってないし、行くつもりもないから、安心してほしい」

と訴えた。
信じてほしいと目で訴えられれば、さすがにゴンザも何も言えず引き下がるしかなかった。



マユリは、毎日、あちこちを歩いた。
人が多くて賑わっている商業地区や、オフィスの多いエリア。
小さな子どもが遊んでいる公園や、中高年の女性が井戸端会議をしているような下町などをぶらぶらと当てもなく。
仕事で歩いた場所も、時間帯が違えば見える景色が違った。
目的地へ向かうまでの経路としてしか見ずに注意深く見てみると、いろいろなことが珍しく、面白く思えた。

そうして、マユリは毎日必ず、あのレストランも訪れるのだった。
店の内外の掃除やゴミ出ししたり洗い物をしたり、調理そのものに直接関係のないようなことを手伝いながら、今日はこんなところを歩いた、こんな人を見かけた、と女店主に報告していた。
それを、にこやかに聞いてくれる女性に対して、マユリの話もどんどん熱を帯びていく。

「それで、わたしは…」

と話していたのだが、急にはっとして不安になった。

「こんなふうに毎日来るのは迷惑だろうか?
 もしそうなら、ちゃんと言ってほしい。
 わたしはそういうことはよくわからないから…」

これまでマユリの周りには魔界に関係する男性くらいしかいなかったし、自分の中に沸き起こる喜怒哀楽といった感情も最近になって知ったばかりだった。
だから、多分、普通の人間から見れば自分はだいぶん感覚のズレた存在であるだろうことは想像できた。
そんな自分が、ちょっとした親切心から話しかけただけなのに、こんなふうに毎日押しかけてしまっては厚かましかったかもしれない。

けれども、女性はカラカラと笑った。

「あははは、わかっちゃいるだろうが、あたしだっておとなしい女じゃないんでね。
 迷惑だったら迷惑だともっと早くに言っているさ。
 何も気にすることないさ」

「だったら、いいが…」

「それよりも」

と女性はぐっと顔を近づけてマユリの顔を覗き込む。

「初めてあったときに死にそうなくらい絶望的な顔していたあんたが、こんな明るい顔していることが嬉しいよ」

そう言って、にやっと楽しそうに笑うのだった。
覗き込まれたマユリはドキドキしつつもも

「あ… おかげさまで?」

「おかげさまで? って、なんでそこで疑問形なのさ、あははは」

底抜けに明るい彼女の雰囲気が、マユリの心を軽くする。

「それで?
 何か興味が引かれたことは見つかったかい?」

そう言って、一転して慈愛に満ちたまなざしで問われたマユリは口を引き結ぶ。

「正直言って、まだ…」

「…そうかい。
 だが、まあ、そう焦ることはないよ。
 あたしでも見つかったんだ。
 あんたにだって、いつかきっと見つかるさ」

そう言って、女性はマユリの肩をぽんぽんと元気づけるように叩いた。



帰り道。
茜色に染まる空も日没の時間を迎えて、じきに夜を連れてきそうなとき。
暗くなるまでに帰るという約束を守るために、マユリは足を急がせていた。
が、そんなマユリの視界の一端に見慣れた白いコートが映った。

「あれは…」

雷牙、と思ったときに、マユリの足は無意識に彼の後を追った。
こんなところで会えるなんて思わなかったが、これから仕事に向かうのか? あるいは帰るところなのか?

雷牙の背中が消えた曲がり角を曲がった途端、マユリははっとして足が止まった。
人気のない路地に白いコートと並んで黒い影のような人物。
そのいでたちから魔戒法師だと思われた。
黒くつややかな真っすぐな髪に、黒い衣装に大胆に入ったスリットから垣間見える白い足。
横顔しか見えないが、長いまつげで縁取られた大きな目はとても印象的で美しい。

しばらく声を潜めて会話していたようだが、仕事の話が終わったのかふたりの表情が柔らかくゆるんだ。
少し距離があるものの笑っている声が聞こえてきそうだ。いや、聞こえた気がした。
それは、雷牙のそばにいてマユリが何度も見ていた笑顔だったから、彼の笑い声が容易に想像できたからだった。

一緒に闘っていた頃は雷牙の隣りにいるのは自分であったことが普通であった。

(だが、あの場所には… 雷牙の隣りにはもう…)

マユリの目が暗く陰(かげ)った。
視線が足元へと落ちて、すぐに踵(きびす)を返してその場を去るマユリ。

人通りのあるところに出て、詰めていた息を吐きだすと自然と足が止まった。
落ち込む必要なんてない。自分がもう闘いの場に戻れないのは事実なのだ。変えようがないのだ。

目をぎゅっと閉じ、息を吸うと大きく息を吐いた。

「はぁぁぁ」

心のもやもやが晴れたわけではないが、慣れていくしかしょうがないのだろう。


to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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