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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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あの日の誓い(2)

レオくんのどきどきカミングアウト!?
どうなるやら? どうなるやら?


拍手[4回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「あなたに会いたくて…」

そう言ったレオは熱を帯びたまなざしで見つめるから、烈花は息を飲んだまま瞬時に反応することができくなった。
だが、すぐにレオはすっと視線をそらして、ははっと乾いた笑いをこぼした。

「すいません、冗談です。
 ただ、せっかく近くにいるのなら、挨拶のひとつもできたらいいなと思ってきてみただけなんです」

そう言って再び烈花に視線を戻したときには、レオはいつもの調子に戻っていた。
にこやかなレオを見ながら、つい、烈花は眉をひそめた。
そうやって難しい顔をつくることで、内心の動揺を気(け)取られないようにしようとする意識が動いたのだった。

「…俺は。…冗談は好きじゃない」

ぼそりと吐き出すように言うのがやっとだった。

「すいません、気分を悪くされたのなら謝ります」

そうやって軽く頭を下げるレオ。
だが、その詫びる姿も凛々しいのだ。
相手は自分よりもうんと小さくて、女性で、魔戒法師だというのに、その潔さは気持ちがいいくらいだ。





最近のレオは苦手だ。

あいつに初めて会ったのはいつだったろうか…
確か、会った当初は特にこれといった印象はなかった。

いや、思い出した!
あいつの兄、シグマに鋼牙がつかまったときのことだ。

ああ、だんだん思い出してきた。
身長だけはひょろひょろと高くて、でも敵にいいようにやられてかなりボロボロだったな。
あいつが、’阿門法師の再来’ と言われていることはもちろん知っていたからどんな奴かと思えば、実戦には向かない頼りない男だなと思った覚えがある。

けれど、ここ最近のレオは魔界騎士としての成長が著しいと零が言っていた。
確かに目の前のこいつを見ていると、以前よりかなり体つきががっしりとしていて、身にまとう雰囲気もどことなく自信に満ち溢れているのが分かる。
以前のような自信なさげな感じは見られず、ほら、今だってしっかりと俺のことを真っすぐに見ている。

こいつの変化は、間違いなく兄シグマの起こした騒動が関係しているだろう。
あの事件の後、周りがあいつを見る目が変わったことだろう。疑心、蔑み、哀れみ、拒絶…
その頃のあいつに直接会っていないが、噂に疎(うと)い俺の耳にもいろいろ入ってきた。
一時期ぱったりとあいつが姿を見せなくなり、元老院から号竜の完成を急がされているため、だとか、保安部隊に拘束されて厳しい尋問を受けているためじゃないか、とか、レオのせいで魔界騎士たちと魔戒法師たちの間に下手な波風が立つのを嫌ったからだ、とか。
実際のところ、あいつがその間(かん)どうしていたのかを知る者はいなかったが、再び、人々の前に姿を見せたときには、レオの雰囲気はがらりと変わってしまった。

鍛錬を重ねて強くなったことで生まれた自信や余裕なのか?
いや、それだけじゃない気がする。
それだけなら、こんな落ち着かない気分にさせられることはないんじゃないか?

時折、今みたいに謝られて下手(したて)に出ているような顔をして、いいように振り回されているように感じる気がすることがある。
高青年を装いつつ、意地悪な目をするときがあったり、逆に傷ついたような目をしたり…

ああっ! もう!
こうやって落ち着かない気分にさせるレオが苦手だ!
前は完全にこっちがイニシアチブを取っていたのに、どう考えても今はあいつが握っている気がするこの不安!
ううう、落ち着かん…





「ばかな…
 男が簡単に謝ってどうする」

烈花は憮然としたままそう言う。

「でも…」

「ああ、うるさい! この話はもう終わりだ。

 さあ、挨拶はもう済んだだろう?
 おまえも帰ってさっさと仕事をしろ!」

そう言って烈花はレオに背を向けて歩き出そうとする烈花。
だが、その背に慌ててレオが声を掛ける。

「ああ! 烈花さん!」

「ん? なんだ?」

烈花は足を止め、振り返った。

「あの、これ…
 持っていてもらえませんか?」

そう言ってレオは懐から小さな匂い袋のようなものを取り出して、烈花に差しだした。
受け取りながら手に落としていた視線を上げて

「これは?」

とレオに問う。

「中に結玉(ゆいだま)が入っています」

「結玉?」

「ええ、それを持つ人に結界を張る玉です。
 結界の力はごくごく弱いのですが、強い攻撃を受けたり、玉を持つ人が強いダメージを受けたりすると僕のほうでそれを感知できるんです」

「感知? どうやって?」

「結玉2つで1つなんです。つまり、烈花さんのその結玉の対になる玉を僕が持っているので、烈花さんに何かあれば僕の結玉が反応するんです」

「反応?」

「ええ、熱くなったり、震えたりといった反応ですね。
 それに、結玉同士は互いに引き寄せあうので、相手の居場所を探索することも可能です」

そこまで聞いて烈花の顔は訝し気に眉をひそめる。

「結玉のことはわかった。
 …だが、どうしてこれを俺に?」

そう問い返されて、それまで余裕たっぷりに落ち着いていたレオが視線を揺らして黙り込む。

「レオ?」

レオの顔を覗き込むように斜めに見上げる烈花に、レオは口元を手で覆いつつ答える。

「あ…なたを守りたくて…」

口ごもるように言った言葉に、烈花は、どういうことだ? と言いたげな顔をした。
レオは、ちょっと目を閉じて軽く息を整えた後、烈花を真っすぐに見た。

「あなたがピンチの時に、誰よりも速く駆け付けたいんです。
 あなたのことを、僕は守りたい」

「えっ?」

「これは僕の勝手な願望です。
 烈花さんは拒否する権利があります。

 でも、それでも…
 僕の気持ちは受け入れられなくても、せめてこれは受け取ってほしい」

そう言ってレオは切なげに烈花を見やった。

「…」

烈花は言葉も出ずに瞳を揺らす。
それに、レオはさらに言葉を重ねる。

「僕の気持ちはあなたにとっては負担かもしれない。
「でも、僕はあなたのことを守りたい…」

しばしの間見つめあうふたり。
やがて、はぁぁぁ、という烈花の大きなため息で沈黙は終了を告げた。

「俺はおまえに守ってもらいたいなんて思っちゃいない」

「っ…」

苦悶に顔を歪めるレオ。

「ひとつ聞くが、おまえの身が危ないときは、こっちの結玉が反応するんだろ?」

烈花はレオからもらったものをかざして見せた。

「…ええ」

それを聞いて、烈花は表情を緩める。

「ならば、この結玉を持っていてもいいぞ。
 おまえがピンチのときには俺が駆け付けてやるよ」

一瞬、反応が遅れたレオだったが、じわじわとその顔に喜びが浮かぶ。

「じゃあ!」

「勘違いするな」

嬉しそうなレオを、鋭い声が遮る。

「魔界に関わる者同士助け合おう、というだけだ」

「えええっ」

きっぱりと言い切られて、レオは残念そうに声を上げ、面白いほどにしょげていった。
けれども、思い直して姿勢を正す。

「わかりました。
 烈花さんのピンチに一番に駆け付ける権利をもらっただけでよしとします。
 ですが、烈花さん、十分気をつけてくださいね」

「それはおまえもだ。
 俺が駆け付けることなどないように、な」

そう言ってふたりは笑いあった。



このふたりの関係性が変わる日が来るのかはわからない。
けれども、確実に昨日と違う今日を生きていることは確かだ。
この先のふたりの未来に、あの日、あなたを守りたいと誓った思いを懐かしく振り返る日が来ることを信じたい。


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


公式様は、零×烈花推しなんでしょうか…
個人的には、烈花にはレオくんを推したいんですよね。
だって、魔戒烈伝のレオくん、かっこよかったもん!

当初は眼中にもなかったレオくんに強気で迫られる烈花がドギマギしてるとこ見てみたいなぁぁぁ、って思うんですよね。
そんな気持ちから出てきた妄想でした!
(あ、今回、あまり強気でもないし、ドギマギでもなかったですが、ね)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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