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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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過去を連れてくる男(1)

先週は何も言わずにお休みしてしまってすいません!
年末調整の書類を書いていて時間が過ぎていきました。
もうこんな時期になったんですねぇ…
…と、感慨深く思いながらも、年末調整とか、年末とか、冬とか全く関係のない妄想に浸(ひた)っております。
よろしければお付き合いを!

拍手[4回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

その日の朝、出掛けて行った鋼牙が屋敷に戻ったのは、日付が変わる少し前だった。
元老院へと赴いた鋼牙は、ザルバ曰く ’頭がソウルメタル並みに固い’ 神官や魔戒法師たちの相手を立て続けにしなければならなかったので、ひどく疲れていた。

「おかえりなさいませ」

と出迎えてくれるゴンザにいつも以上にほっとしながら、

「カオルは?」

とお決まりのセリフを投げかけた。

そう聞きながらも鋼牙は思っていた。
それには、てっきりいつものように

「まだ起きてらっしゃいます」

とか

「お休みになられています」

とかいった返事が返ってくるのを。
だが、今夜はゴンザの歯切れが悪い。

「カオル様は…」

そう言って躊躇(ためら)うような素振りを見せつつ、

「…お部屋にいらっしゃいます」

と伏し目がちに答えたのだった。
そんなゴンザの様子を見とがめたザルバが、

『ん? カオルがどうかしたのか?』

カチカチと硬い音を立てながら瞬きをしつつ尋ねる。
ゴンザはチラリと視線をあげて鋼牙を見ると、鋼牙も違和感があったのだろう。
何があった? とばかりに、ゴンザをじっと見下ろしていた。

ゴンザは鋼牙がとても疲れていることがわかっていたので、カオルのことで心配をかけてしまうことに躊躇していたのだが、やはり伝えるべきだという考えを強くして顔を上げた。

「鋼牙様。カオル様なんですが…」




ゴンザの話によると、その日は地元在住の芸術家たちの作品を展示する催しに、カオルは顔を出していたのだという言う。
ゴンザもカオルを迎えに行く約束をしていたのだが、せっかくの機会だから作品を見てみたいと思い、少し早めに会場に到着した。
会場ではすぐにカオルと合流することができ、作品を見たいのだと言うとカオルはすごく喜んで、

「素敵な作品がいっぱいあるよ。ぜひぜひ見てみて!」

と笑顔を弾けさせた。




「絵画だけでなく、彫刻や、陶芸、ガラス工芸などもあって、なかなか面白かったですよ?
 もちろん、カオル様の作品も見つけました。
 カオル様の絵の前でお客さんが足を止めて眺めているのを見ると、どうです? 素敵でしょう? と言いたくて言いたくて…」

ゴンザは、そのときのことを思い出してなのか、ニコニコ笑っていたが、すぐにその表情が暗く陰った。

「わたくしが作品鑑賞を終えてカオル様の元に戻ろうと思いましたら、カオル様はとある男性に声を掛けられたところでした。
 年の頃はそう… カオル様より少し上かな、といった感じでした」

男と聞いたからなのか、鋼牙の表情は少し厳しさを増すが、ゴンザは話を続けた。

「最初、カオル様はとても驚いた表情でした。
 が、すぐに笑顔を見せて一言二言と言葉を交わしておられました。
 けれど、その方が杖を、あっ、お若いのに杖をついてらしたんですよ、その男性。
 足が不自由みたいで引きずっておいででした。

 …で、どこまで言いましたっけ? ああ、そうそう。その男性が杖を見せながら何かを言ったんです。
 そうしたら、カオル様のお顔が曇って…

 何か不快なことでも言われたのかと慌てて駆け付けようと思ったのですが、カオル様もお相手の男性もどちらもとても落ち着いた様子でしたので、しばらく様子を見ておりました。
 その後も少しだけお話してから、男性の連れの方がいらして帰って行かれたのですが、カオル様はずっとその方の後ろ姿を見送っていらっしゃいました。
 その…」

と、ここまでスラスラと説明していたのに、ゴンザの口調が急におずおずとしたものに変わった。

「なんだ?」

鋼牙は眉をひそめて、ゴンザに先を促す。

「いえ、あの… 見送るカオル様がなんだかとても切なそうな顔をしていたものですから、それが少々気になりまして」

『切ない、ねぇ?』

ザルバが意味深にそう繰り返すのに、鋼牙は表情を少し険しくさせた。

「はい。
 その後、カオル様にお声をかけて、どうかしましたかと訊いてみたのですが、なんでもないと言うばかりで…
 あまり触れてほしくなさそうな感じに思えました」

「…」

黙り込んで考え事にふける鋼牙に、ゴンザは慌てて言葉をつけ足した。

「あの、鋼牙様。
 男性の連れの方は女性の方でした。恐らく奥様かそれに近しい人のようで…
 男性を支えるようにしていましたし、男性もその方をとても信頼しているような雰囲気に見えました。
 ですので、その男性とカオル様が…」

「ゴンザ」

鋼牙はゴンザの言葉を遮るようにして口を開いた。

「今夜はもういい。早く休め」

そう言った鋼牙は白いコートを脱いでゴンザに渡すと、階段を上って行った。
後に残されたゴンザは手元に残ったコートをちらっと見て、再び階段の上のほうを見た。
そこにはもう鋼牙の姿はない。

「はぁ、大丈夫でしょうか…」

ため息交じりの言葉がポロリとこぼれ、ゴンザはコートを手にその場を後にした。


to be continued
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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