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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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この気持ち(1)

なんだか一昨年くらいからこの時期に目がかゆい気がするのです。
鼻水もまあ少し出ます。

でも、花粉症ではないと自分に言い聞かせています。
だって、家はぐるりと杉の山に囲まれているんですよ?
花粉症だったらもっとかゆくてかゆくてたまらなくなったり、ティッシュを手放せなくなるくらい鼻水止まらなかったりするんじゃないでしょうか?

ええ、ええ、だから、わたしは花粉症ではありません!
…と目をしょぼしょぼさせながら今宵も妄想に耽(ふけ)るのです。

よろしくお付き合いのほどを…

拍手[3回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

冴島邸のキッチン。
お鍋の中で黄金色に輝くようなスープをゆっくりとかき回した後、ゴンザは小皿にひとすくいして味を確かめた。

「うん、おいしい」

思わず心の声がこぼれて口をつき、満足げに微笑んだ。
そんなところに背後から声がかかった。

「ゴンザ、ただいま」

思いもしなかったことでゴンザはびくりと肩を跳ね上げて、慌てて振り返る。

「雷牙様!」

おかえりなさいませ、と言いながら、持っていた小皿とレードルを調理台に置いていると、雷牙は鼻をすんすんと鳴らしながらつかつかと近づく。

「いい匂い。なんだかお腹がすいちゃうね」

ゴンザの肩越しにスープ鍋を覗き込み、子どものような笑顔を見せる雷牙。

「ふふふ。とってもおいしくできましたよ。
 でも、これはお夕飯までのお楽しみですよ?」

「なあんだ、残念。味見させてもらおうと思ったのに…」

眉尻を下げてわかりやすく残念そうな顔をしてみせた雷牙に、

「その代わり、スコーンとサンドイッチがございます。
 すぐにお茶のご用意をいたしますからそれで我慢してくださいませ」

とゴンザは応えた。
それを聞いて嬉しそうに笑った雷牙だったが、はっという顔をして言った。

「ところで、マユリは?」

そう尋ねる雷牙の顔にはもはや笑顔はない。
それを受けてゴンザもやや表情を曇らせる。

「マユリ様は… ご昼食の後はずっとお部屋にいらっしゃいます」

「…そっか」

雷牙はそっと首だけを巡らせて、この場所からは見えるはずもないマユリの部屋の様子を気にするような素振りを見せた。
が、すぐに、

「じゃあ、呼んでくるよ」

と小さく笑顔を作ってゴンザに言って、キッチンを後にした。
その雷牙の背に

「はい、お願いします」

というゴンザの声が届いた頃には雷牙の姿がキッチンの戸口から消えていた。





マユリは、エイリスを封印した後に深い眠りについていたが、ある日再び目を覚ます奇跡が起こったのだった。
だが、目を覚ました後、マユリが持っていたホラーを封印する能力や術などの力はほぼ失われていることがわかるのに、そう大して時間はかからなかった。

そのことを知ったとき…
雷牙やゴンザは正直なところ少しほっとしていた。
人間ではなく魔道具としてずっと扱われていたマユリが物騒な力をなくすことで、その辺のどこにでもいる少女たちと変わらない幸せをこの先、享受できるのだろうと思ったからだった。
だが、当のマユリはそのことで深く落ち込んでしまった。
ホラーを封印する力を持っていることこそが自分の存在意義なのだと身に沁みついていたのに、いきなりそれがゼロになってしまえば不安になるのも当然だ。

自分の価値がまったく見いだせない。

「力がなくなっても、マユリはマユリだよ」

雷牙もゴンザもそのままの自分でいればいいと言ってくれていた。
けれども、ホラーを受け入れる器であったときのほうがよほど自分には ’何か’ があった気がする。
今の自分こそが ’空っぽ’ な気がして声をあげて泣きたくなるのだ。
ただ、その嘆きを雷牙たちに知られたくはない。
力がなくなってしまった自分が、雷牙のそばにいる意味合いがまったくなくなってしまった自分が、苦しんだり嘆いたりする姿を見せることで彼らを悲しませたくはなかった。

そうして、マユリは食事のときを除いては、雷牙たちの前になかなか姿を見せなくなってしまっていた。





マユリの部屋の前にやってきた雷牙は、小さく息を吸ってからドアを叩いた。

「マユリ、ただいま」

それだけを言って雷牙は待った。
しばらく無音であったが、やがてドアのそばまでやってきたマユリの足音が聞こえてきて、カチャとドアが20cmほど開いた。
そこに顔をのぞかせたマユリはちらっと雷牙の顔を見ただけでわずかに視線を落とし

「おかえり、雷牙」

と言った。
その姿を少し寂しく思いながらも雷牙は何食わぬ顔で彼女を誘う。

「ゴンザがお茶にしようって」

「…そうか、わかった。 あっ、部屋を少し片づけてから行くよ。だから、雷牙は先に…」

「じゃあ、待ってる」

「えっ?」

「片づけるっていってもすぐだろ?
 だったら待ってるよ」

「いや、でも…」

少し落ち着かない様子のマユリに、雷牙は急(せ)かすような素振りは見せずに、むしろゆっくりと落ち着いた声で話しかける。

「慌てなくてもいいよ。俺が待っていたいだけだから」

そう言ってにっこりと笑えば、マユリは逡巡しながらも一度奥に引っ込んだ。
ドアの隙間からそれとなく様子を伺っている雷牙の目には、なんとなくうろうろとそこらを歩き回っているだけのマユリが見えた。
やがて、マユリがこちらに向かって歩いてきそうになると、すっと目をそらせて何気ないふうを装った。
マユリが部屋から出てくると、ようやく気づいたかのように

「あ、終わった? じゃあ、行こうか」

と促して、ふたりして階下に降りて行った。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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