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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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苦いの、いる?

Happy Valentine!
…はとっくに過ぎてしまいましたが、妄想させてくださいませ!

拍手[2回]


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

『それにしても、とんだ無駄足だったな、鋼牙』

「まあそう言うな。
 たまたま零がいてくれたお陰で被害も出なかったんだ。
 誰が仕留めようが、それでいいじゃないか」

その日、グレスからの指令が入った鋼牙が、ホラー討伐のために屋敷を出たのはほんの1時間前のことだった。
だが、ザルバの指示に従ってホラーの元にたどり着いたと思ったら、なんとそこには鈴邑零がいて、最後の一太刀をホラーにお見舞いするところだったのだ。

銀色に輝く鎧を解いた零に、どうしたんだと問うと、なんでも馴染みのバーのマスターに頼まれた野暮用とやらでこの近くに用事があったらしいのだが、シルヴァが邪悪な気配を感じ取ったため、ついでとばかりに相手をしてやったのだと言う。

そして、お互いの近況を確認しあっていると、零が、はっとした顔を見せた。

「あっ、俺、用事があるんだった!
 なあ、元老院への報告は任せていいか?」

零は左手の袖口をひょいっとめくって、あるはずのない腕時計を確かめる素振りをしながらそう言うと、

「じゃあ、任せた!」

と、鋼牙の返事など聞かずに風のように去って行ってしまったのだった。
そんなわけで、鋼牙はその足ですぐにグレスに報告を入れると、いつものホラー討伐よりもうんと早い時間に屋敷に戻ってこれたのだ。


鋼牙は、常夜灯の灯る屋敷の玄関の前にたどり着くと、ひやりと冷たいドアレバーをガチャリと押して温かい室内に入った。
だが、いつもならすぐに出迎えに来てくれるゴンザの姿がなかった。
けれどもそれも仕方がないことだろう。
こんなに早く帰ってこれるだなんて、当の鋼牙も思っていなかったのだから。

鋼牙はそのままリビングへと足を進め、コートを脱いでハンガーに掛けた。

『ゴンザのやつ、もう寝ちまったのかな?』

そう言うザルバに鋼牙は何も答えず、その足で書斎に向かおうとした。
廊下を進み、キッチンの近くに来たとき、ゴンザの

「カオル様ぁ」

と困ったような戸惑うような声が聞こえてきた。
そして、それに対して、

「えぇ~、隠し味にちょっと入れるだけだから、だ~いじょうぶだって!
 いろんな味を混ぜて複雑にしたほうがおいしいって、えっと~誰だっけ? ほら、料理研究家のぉ~
 …まあともかく、だまされたと思って任せてくれないかなぁ?」

というとてつもなく明るく自信たっぷりなカオルの声も聞こえてくる。

『…おい、なんか嫌な予感がするんだが?』

「…ああ」

鋼牙とザルバは目と目を合わせてそう言いあうと、キッチンへと急いだ。


ドアを開け、キッチンへと入ると、そこにはなんとも甘い匂いが充満していた。
そして鋼牙の目には、甘い匂いの元が入った銀のボールに、緑色のどろどろしたものを投入しようとしているカオルと、そのカオルを止めようと追いすがっているゴンザの姿が飛び込んできた。

「これは…」

『何をしているんだ?』

思わずそうつぶやく鋼牙たちに、小競り合いをしていたカオルとゴンザが、あっと驚き、すぐに

「おかえりなさい」

「これは、鋼牙様!
 お早いお戻りで…」

と口々に言った。

「ああ、今日の指令は早く片付いたんだ」

「そうでございましたか」

『それはそうと、おまえたちはこんな夜遅くに何をしているんだ?』

「えへへ… 見つかっちゃったかぁ。内緒にしようと思ったのに…
 あのね、鋼牙たちがいない間にチョコレートをね、ちょっと…」

『ああ。明日は2月14日か。
 で、おまえさんのその手にしているものはなんだ?』

ザルバは訝し気にカオルの持っている緑色のものを見やった。
どうも何かをすりおろしたもののようだ。

『俺様の知っているチョコレートには、そんなものを入れるようなことはないと思うんだが?』

「あっ、これ?
 鋼牙ってさ、あんまり甘いのは嫌かなと思ってさ… だから、ちょっと… ね…」

なんとか話をかわそうとするカオルにザルバは容赦なく言う。

『カオル、それはなんだ、と訊いているんだが?』

「…んもう、せっかく内緒にしようと思ってたのに…」

唇を尖らせながらそう言うカオルに、

『だ~か~ら~、それはな~ん~だ~?』

とザルバは食い下がる。
大事な鋼牙の身に何かあってもいけない。
前科があるだけに、ザルバも追及の手を緩めることはしない。

「…ーヤ」

『はぁっ?』

「だから、ゴーヤ!
 ビターチョコは売り切れてて、ミルクチョコしかなかったの!
 だから、苦味を加えたらいいんじゃないかと思ったのよ!」

「ゴーヤって… あのゴーヤか?」

鋼牙が眉をひそめて言う。

「はい。最初、カオル様は刻んだものを入れようとしたのです。
 その… ピスタチオみたいでしょ、と言われまして…」

ゴンザが遠慮がちに言った。

『ピスタチオっ!?』

「でも、それはちょっと違うんじゃないかな、ってゴンザさんが言うから、じゃあ、すりおろして入れてみようと思ったの!」

悪びれもせず、カオルはそう言ってにっこり笑う。

「…」

鋼牙とザルバとゴンザは、口を半開きにして言葉を失った。

「あっ、でもピーマンのほうがいいかしら?
 それにほら、赤や黄色のパプリカも買ってきたの。
 でも、こっちは入れるんだったら刻んでいれたほうがかわいいと思うのよね」

カオルはピーマンとパプリカと見比べるようにして、どうしよう、と迷っている。
それを見て、鋼牙とザルバとゴンザは、う~んと顔をしかめる。

(…どうしてくれよう?)

そんな中、すっと鋼牙がカオルに近づいた。
そして彼女の腕をつかむと、有無を言わせず引っ張った。

「なに? ちょっと? 鋼牙?」

戸惑うカオルをスルーして、鋼牙はゴンザに言った。

「あとは適当に頼む」

それを聞いてゴンザはハッとしてから頭を下げる。

「お任せください」

「ええ~っ! ゴンザさ~ん、それ(バタンッ)」

カオルの「そのまま取っておいてよぉ~」という叫びは最後まで聞けることはなく、途中で無情にもドアが閉まった。


その後、自室に無理やり連れ込んだ鋼牙は、再度テーブルの時計をちらっと見て、

「日付が変わった…」

と言うと、カオルをベッドに組み敷いて彼女の唇を啄(ついば)んだ。

「ちょっと鋼牙。あたし、チョコ作るの途中なんだけど!」

鋼牙の唇が離れた瞬間、カオルは不満そうに抗議した。
だが、鋼牙は少しも構わずしれっとこう言った。

「…チョコよりこっちがいい」

そして、ねっとりと甘くて濃厚な極上のキスを味わった。
わざとリップ音をさせて唇が離れたときには、カオルの表情はとろけていてチョコのことなんかどこかに吹き飛んでいた。

「カオル…」

少し掠れた低音の声が、カオルの身体の奥をきゅんと震わせたとき、

『Happy Valentine!』

というザルバの声が聞こえて、カオルはビクッと肩を跳ね上げた。

「ザ、ザルバ。いたの?」

『ああ、いるよ。
 だが、ここから先は、ふたりで勝手にやってくれないか?』

やれやれと少し迷惑そうな声音に、鋼牙は眉をしかめて中指から一気に魔導輪を引き抜いた。
そして、サイドボードの上に置いてあった台座にやや乱暴にザルバをカチャリと置くと、

「ああ、そうさせてもらう」

と不機嫌を隠そうともせずに言った。
その後は…


甘くて、甘くて、とにかく滅茶苦茶あっま~いふたりの時間を過ごしたのは言うまでもない。


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


カオルちゃんと鋼牙さんの甘い夜!
はぁ~ん♡
しっぽりと、ねっとりと、どうかご存分にみなさまの妄想でお楽しみください!
(お~い、丸投げか~いっ!)


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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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