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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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この気持ち(2)

月虹で一番変わったなぁと思ったのは、selfish にとってはマユリでした。
魔界ノ花のときは、雷牙のことを何とも思ってなかった様子だったのに、あんな好き好きオーラ放っちゃってさぁ!
あのとき初めて、マユリがかわいいって思いましたよぉ~

…ってところで、今宵の妄想です。ど~ぞ!

拍手[2回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

マユリは、お茶の用意をしているゴンザの待つリビングへと向かう雷牙の後ろをついて歩いていた。
彼女の歩調に合わせてゆっくりと歩いている雷牙の背中から視線を落としたマユリは、

(失敗した…)

と雷牙にわからないように小さく溜息をついた。
少しでも自分がお茶の時間に加わるのを遅らせようとしてみたが、雷牙がそれをさせなかった。



今のマユリは雷牙にとってもゴンザにとっても何の役にも立たない存在なのはわかっていた。
でも、そんなことをおくびにも出さない彼らの前で、マユリはどういう態度を取ったらいいのかわからないのだ。

本来なら、どこにでも行けと屋敷から追い出されても文句は言えないのだ。
それなのに雷牙もゴンザも

「いつまでもここにいていいから…
 もちろん、マユリがここを出たいというなら、できるだけのことはするから安心して?
 これからは、マユリがしたいようにしていいんだから、ね?」

「マユリ様。
 雷牙様もゴンザもマユリ様が穏やかな気持ちで過ごしていくことが望みなのです。
 行きたいところに行き、やりたいことをやり… そうして笑っていてくれたら、それが一番嬉しいことなんです」

とそう言ってくれる。
それはとても嬉しいことではあったが、これまでは歩む道は決められていて、そのひとつだけだという生き方をしてきたマユリにとっては、「自由」ということがひどく不安にさせるのだ。
考えれば考えるほどわからなくなる。
ついには、「好きにしていい」という雷牙たちの言葉も額面通りに受け取っていいものか混乱してしまうのだ。

(ほんとうは、「やりたいこと」を早く見つけて、すぐにでもここから出て行ってほしいのだろうか?)

そんなふうにも思ってしまう。
だから、彼らの前で、マユリはどういう顔をしていればいいかわからないのだ。
笑いたくても笑えなくなり、情けなくて泣きたい気持ちでいっぱいなのに泣くことも憚(はばか)られるのだった。
自分がそんなでは、雷牙だってゴンザだって、一緒にいて楽しいわけがない。
だから、いつもなんとかして一緒にいる時間を少しでも少なくしようとあれこれ理由をつけてみるのだったが、最初のうちは「そうか」とすんなり受け入れてもらえていたことも、最近ではなんだかんだと押し切られてうまくいかないことが多くなってしまった。




マユリは、ゴンザの用意したサンドイッチやスコーン、クッキーやケーキなどにはほとんど手を付けず、お茶を一杯だけ飲むとそそくさと部屋に戻っていった。
もちろん雷牙は引き止めたかった。
だが、目に光はなく、口元だけ無理に引き上げて固い笑みを張り付けていたマユリの様子を見ていると、これ以上引き止めるのは可哀想に思えてしまったのだ。

「ごめんね、ゴンザ。
 マユリのためにいろいろ用意してくれたんだよね?」

そう言って眉尻を下げる雷牙に、ゴンザは弱々しく首を振りながら

「いえいえ… 少しでも召し上がっていただければと、わたくしが勝手にしたことですから」

と悲し気な顔を見せた。
雷牙はふうっとやるせなく溜息をつくと、少しぬるくなった紅茶を口に運んだ。

「マユリ様はここを出て行かれるのでしょうか…」

不安げなゴンザ。

「うーん、どうかな。それはマユリが決めることだから…」

本心とは別に、雷牙はそう言うしかない。

『力をなくしたマユリにとっては、俺たちのそばにいることはリスクでしかないな』

「ザルバ…」

突然ふたりの会話に割り込んできた魔界輪の声。

『自分を守る力のない人間には、俺たちの世界は厳しすぎる』

「…」

至極真っ当なことを言うザルバに、雷牙は返事ができない。

『だが、今のマユリは人界に放り込んだところで生きていく術(すべ)もない。
 それもまた事実だ。なあ、そうだろ? 雷牙?』

事実を認識させようとするザルバは、故意に呼びかけて雷牙に返事を迫る。
そんなことをされれば、渋々ながらも返事をしなければならない。

「…そう、だ、な…」

静かな部屋に、雷牙の低い声が小さく響いた。




お茶の時間に遅れていくことが叶わなかったマユリは、作戦を変更した。
出された紅茶をできるだけ速く飲み切って、この場を後にすればよいと考えたのだ。
温かい紅茶を飲むのはなかなか大変だったがなんとか飲み切り、作戦どおりリビングから脱出できたときは心底ほっとした。

だが、リビングから出て何歩も行かないうちに、マユリは、そうだ、とあることに思い至った。

(夕食はあまり食べられないから軽めにしてもらうよう言っておかないと…)

最近のマユリは以前にも増して食が細くなった。
喜怒哀楽を知らないばかりか、食事=栄養補給という意味合いしか知らなかったマユリは、食事を楽しむということも知らず必要最低限のものしか口にしなかったのだが、自分の身のありように思い悩む日々の中で、さらに食欲を減退させていた。
そんなマユリを心配して、ゴンザはあれやこれやといろいろ食事を用意してくれるようになっていた。
ただ、その気遣いも今のマユリにとっては申し訳なさを覚えるものでしかならない。
残してしまう心苦しさもある。

今だって、スコーンやサンドイッチなど無駄にしてしまったのだから、最初から「食べられない」と言っておいた方がお互いにとっていいに違いないとマユリは思った。
マユリは、すぐに回れ右をしてリビングに戻る。
リビングのドアを開けようとノブに手を掛けたところで、マユリの手は止まった。



「マユリ様はここを出て行かれるのでしょうか…」

「うーん、どうかな。それはマユリが決めることだから…」

『力をなくしたマユリにとっては、俺たちのそばにいることはリスクでしかないな』

「ザルバ…」

『自分を守る力のない人間には、俺たちの世界は厳しすぎる』

「…」

『だが、今のマユリは人界に放り込んだところで生きていく術(すべ)もない。
 それもまた事実だ。なあ、そうだろ? 雷牙?』

「…そう、だ、な…」



マユリはノブから手を離す。その手は震えていた。
血の気の引いた顔が悲痛に歪んでいる。

マユリはその場をなんとか離れた。
力のない足取りで階段まで来て、手すりを掴み最初の一段目に足を掛ける。
が、そのとき、何気なく玄関ドアに視線を向けた。
思案したのは数秒の間だった。
マユリは階段から離れると、玄関ドアをくぐり、屋敷から出た。




to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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